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原由子「ヤバいね愛てえ奴は」歌詞を読む

サザンオールスターズの原由子さんのアルバム『婦人の肖像 (Portrait of a Lady)』が10月に発売されるのに先立って
新曲「ヤバいね愛てえ奴は」が先行配信リリース、MVも公開中だ。

この曲はNHKドラマ「プリズム」の主題歌。
杉咲花さん主演、いろんな形の愛が複雑に絡み合いプリズムのように輝く様を見せてくれるドラマだ。
終盤、原さんが歌うこの曲が物語に寄り添うように流れる。

作詞作曲は桑田佳祐さん。
桑田さんが原さんのために作る曲には隠れた名曲が多い。

アルバム名「婦人の肖像」の通り、
今の原さんそのままの姿で愛について歌っている。
話しかけるような歌詞には、
「マルっと」とか「サクッと」と砕けた言葉も出てくる。
とても穏やかに自然体で、優しい。
まさに、原さんが歌う為に書かれた曲。

※全歌詞はサザン公式サイトにて公開されています。

♪誰もいない部屋
…空っぽ、心の中の空洞。
孤独感、寂しさをイメージさせる一節で曲が始まる。

♪僕だけが棲む世界

そんなことないはずなんだけどねぇ…。
でも、そんなふうに世界にたった一人取り残されたような孤独感に泣いた夜が…私にもあったなぁ。

この歌で歌われる主人公“僕”も、
ドラマ「プリズム」の登場人物たちも、
そして今の世を生きる人々の多くも、
一人でいることの心地よさと不安、さびしさを併せ持ち、
愛を求めては傷つき、うっすらと曇る世界を見て人生に迷っている。

♪もっと素直に
♪ココロとカラダ重ね合わせ
♪ただ赤子のように

頭で考え過ぎず、自分の感情を大切に。
笑いたい時は大声で、
泣きたい時は悲しいと、言葉を飲み込まず素直に言えばいい。

♪分かってないよね?

…こう聞かれたら、返ってくる答えは大抵「分かってる!!」だ。

♪分かってるんなら
♪マルっと愛受け止めて

ここの部分は、
自分の愛を相手に丸ごと受け止めて欲しい、という意味にも聞こえて魅力的だ。

愛し愛されることに後ずさりせず、
自分を取繕わず、素顔のままで愛を受け止めれば良い。
…実際、アレコレ考えていたら恋愛なんてできない。
恋に落ちる時は理屈なんてないのだ。

蜘蛛の巣の件は
一人の部屋にいる“僕”と対になっている。

“僕”も日々、プライドをもって仕事に取り組み頑張っているのだ。

蜘蛛は繊細で美しい巣を張る。
一番の「部屋に花を飾る」という一節から、“僕”の部屋も片付けられている風景が見え、きちんとした生活を送っている様子も感じられる。
さりげない最少の文字数でここまでの背景を作る。
物語の膨らませ方の極意…!

♪君と寄り添い
♪街中をクロールしたいと思った

これはなかなか面白い表現で、
二人が自由に心地良く身をくねらせながら楽しげにスイスイ進んで行くイメージが膨らむ。

♪それぞれの季節に

ずっとあなたといたい、生きていきたい。
その表現として、この歌詞…!
さすが…桑田さん…!!

とにかく重くないの、言葉が。
羽のように軽やかで、柔らかい。
それが原さんの歌声ととても合う。

♪やるっきゃないよね?
♪したってイイよね
♪サクッと恋に落ちて

言葉選びがとても今っぽい。
勢いの波に乗ったほうが恋は進む。
そんな推進力を感じる。

♪もっと素直に
♪ココロとカラダ慈しみながら
♪君へのこの想い

お互いを大切にする、という意味を「慈しみ」という言葉を使って表現し、さらに深みを与えている。

そして、自分のこの溢れる愛情を相手にも受け入れて欲しい、と訴える。

♪痛いよ何だか
♪熱いよとっても
♪ヤバいね愛てえ奴は

痛くて熱い胸の高鳴り。
めくるめく世界に目の前の景色が変わる。
こんな強い刺激、他で得られるか?

愛により新しい自分を知ったり、
今まで考えなかったことを真剣に思い悩んだり。
楽しいことばかりでなく、つらいことも多いのが愛だけど、
全部ひっくるめて、“ヤバい”で通じる。

そして愛の甘さ、苦味を味わい愉しみながら、ニンマリ笑うような「愛てえ奴は」。
楽しいもんだよ?と微笑みかけられているようだ。

以上が歌詞全体を通した意味の捉え方だが、
聴き手のその時の気分や心理状態で、様々な意味に聴こえる曲だろうと思う。

とても大人っぽく、だけど今っぽい。
深煎り珈琲のような甘みと苦味の味わい。

桑田さんの言葉選びのセンスがキレキレ!
そして原さんの魅力を最大限に活かす素敵な曲。

最後まで読んでくださってありがとうございます…!
サザンの曲を中心に歌詞の読み解きをしています。
良かったら読んでいってくださいね〜!


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