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もう逃げられない


そんな人だと思わなかった、さようなら。

…って、出来る人間だったら私の人生は180度変わっていただろう。

人と深く関わると多かれ少なかれこの様に思う事はあるだろう、ましてや男女の関係だと更に。

一度好きになってしまうと思ってたのと違った、がっかり、とは私は思えないのだ。例え相手が犯罪者だろうと。

もしも性犯罪や子供を虐待している様な人間だったら、一瞬で切り捨てられるのかもしれない。

ただまだ幸いにもその手の鬼畜には出会った事はない。

鬼畜とまでは言わないまでも、可能性として人間は鬼畜の所業が出来る人間と出来ない人間に別れると思っている。

その扉が開くかどうか、そもそも扉がない人もいるだろう。

私はいつか人を殺すんじゃないかって感覚に怯えている。

扉がある側の人間だ、と6年前に自覚してしまったのだ。

あの日の事は一生忘れられない。

刃物を握りしめた手がありえないほどぶるぶると震えた事。

湧き上がる様な憎悪。

正気に戻った瞬間の恐怖。

ダメだ、ここから逃げなければ、今すぐに。
でないと本当に殺してしまう。
姉を。

私は逃げた。

行く所などないのに、逃げ続けた。

そのうちお金も尽きて、そのタイミングで風俗で働きだした。
収入源が出来ると明るく生き返った様な気持ちになった。
私は風俗に救われた人間だ。

風俗で働く事によって、メンタルも生活も立て直して元の生活に戻った。

私の大事な居場所だった。

逃げる事はそんなに悪い事なんだろうか?

私は逃げなければいけないタイミングも人間にはあると思っている。

あの時逃げていなければ、人を殺していた。

これから先もそういうタイミングは来るかもしれないし、来ないかもしれないけど、もしもまたあの時の様な精神状態になったならば私は逃げる、迷いなく。

それなのに、好きな男からは逃げられないのは女という生き物としてのバグだよなぁ……あっさり逃げられる女性は有能です、間違いなく。

男女として向き合う事も大事だけど、それ以上にこの人おかしいな、と思ったら早々に逃げる事も大事だと今までの人生経験で強く思うのに、惚れてしまってたらもう逃げられないし、向き合うのも怖い。

10代の頃からやってる事全く変わってない事に絶望。

でもこんな自分の愚かさをぶん殴りたいと思うんじゃなくて、抱きしめたいと思っている。ふかふかの毛布に包んで。

私はもう逃げない。どこにも。


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