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『曲がれ!スプーン』と、探しあてたい安全圏

 超能力にも、全盛期みたいなのあるんかね。20代のときはビンビンでしたわ!という感じなのか、若いときは不安定で、40代くらいがのほうが調子よかったですわ!みたいな人もいるのか。
 20代後半になって、体調の変化に少しずつ恐れを感じるようになった。「え、なんかこれ病気じゃない?」と、症状を検索して、こわくなってブラウザを閉じ、寝る前に思い出してちょっと泣く。特に最近悩んでいるのは、突発的に起こるひどい頭痛だ。

 ここ3,4年ほど拍動性のある痛み(病院の先生に教えてもらった言葉)が頻繁に起こる。歩くと痛みが増すため、なにもできない。頭痛外来なるものがあることを知り、予約を取って行ってきた。
 はじめてMRIを体験した。NCT DREAMの「ISTJ」という曲のイントロに似ている、でっかい音が鳴っていた。こわかった。

 結局、脳に異常はなく、偏頭痛と診断された。20代~50代の女性に多く、もうずっと付き合っていく覚悟を決めろと言われてしまった。そりゃないよ。
 でも、こんなに頭が痛い理由がわかってとりあえず安心した。頭痛って信じてもらえないんじゃないかって、いつも言うのを我慢していた。まあ、仮病を使ったことが何回もあるので…。 

 『曲がれ!スプーン』に出てくる、超能力者たちが集う「カフェde念力」って、わたしにとっての頭痛外来だったんだな。「ここにいれば、ひとまずは安全!」と思える場所だった。
 ふつうに暮らすために必要な安心を求めて、働いて、試行錯誤している。これがリアルな人の姿だと思った。わたしも、7000円くらいかけて健康であることを証明した。働いて得たお金で、一つの安心を手に入れたよ。これからは、薬の力を借りて症状を緩和させていく予定。

 この映画の主題歌は、YUKIの「COSMIC BOX」。わたしを安全圏に連れて行ってくれる、大切な歌。

 あなたがどこでどう暮らしていたって、別に変じゃないよ、そう言ってくれているような気がする。
 映画のために書き下ろされた歌なのかが気になり、調べているうちに見つけたインタビューがある。

――歌詞では“誰かが残したシャベルを コックピットにして還ろう”という部分の“還ろう”を最後に繰り返し歌っているところが印象的です。

 「“還ろう”という言葉が好きですね(笑)。やっぱり自分が一番居たいところにいるべきなんです。それはやっぱり場所ではなくて、どの人と居るかだなと思います。だから家族のことも歌っているのかな。きっと……何も不思議なことはないんだなと思うんです。それは自分の体の変化とか、子供を授かるということも神秘でもなんでもなくて。本当に昔から繰り返されていることで、繋がっていっている、いろいろな人たちが紡いでいっているもので。そこにはもちろん喜びはあるんですけど恐れのようなものはなくて、それを……受け入れているんだと思います。人はこうやって生まれて、ずっとずっと続いていくんだなって。続いてほしいという気持ちもありますけど」

インタビュー:“YUKIの頭の中にある世界”が描かれた ニュー・シングル「COSMIC BOX」 - CDJournal CDJ PUSH

 どんな人間であれ、循環の中の存在に過ぎないって思うことができたら、世界はひとつになるのかも。

 わたしは今、スタバ飲まない。マック食べない。これも特別なことじゃなくて、自分で選んだ生活パターン。世界がひとつになれるまで、祈りもやめない。

『曲がれ!スプーン』は、U-NEXTで見られるよ♡

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