英検3級から翻訳校閲者になるまで #5

昨日 https://note.com/merlin_witch/n/n49c285779ec7 の続き

最大の課題「TOEIC910点でも英語が話せない」壁

 大学で言語学、意味論、英語史などを学問として学び、運用面では翻訳とライティング(+英文法)にがっつり取り組んだ。午前中は大学に行くか自宅学習、午後からはオンサイト勤務の出版社で夜10時まで仕事という毎日だったが、気分が高揚しているのであまりつらさは感じなかった。
 だが、自分が「前に進んだ」と感じるためにはもうひとつ壁が控えていた。スピーキングである。翻訳(校閲)だけならば英語のスピーキングスキルは必須ではないが、教材屋としてはそうもいかないのである。もう英会話学校に行くしかないと思っていたが、このソリューションもなんと大学に存在していた。
 「毎日レッスン! 実践英会話」という講座がそれである。「毎日」の謳い文句は嘘ではない。年間100日以上、英会話を実践するという授業であった。
 少人数制(最大12人)で、1日40分が1コマ。テキストに沿って進められる実践講座だが、このほかネイティブ講師が毎回来るフリートークのレッスンを1日2コマ受けられる。つまり、うまくスケジュールを組めば、1日に40分✕3回の英会話授業+フリートークができることになる。
 このコースは、大学が外部企業に委託して学内で開講しているものだ。「聴講生」では取れない授業だが、オープンカレッジ生になれば取れる。
 対して学部生は自由に取れる講座ではあるが、「単位が取得できるわけではなく、授業料も大学の授業とは別に必要となる」、完全に自由選択という授業なのだ。したがって、学部生については、とりわけ熱心な学生だけがこのコースを選んできているということになる。

プレースメントテストで最上位クラスへ

 この講座はレベル別にクラスが分かれている。授業が始まる1か月ほど前にプレースメントテストがあったが、文法問題のテストだった。当然、ほぼ満点だったと思う。だがその結果、一番上の「Eクラス」に入れられてしまった。
 不安の中で迎えた初日。講師は全員ネイティブスピーカー、そして周りは、社会人組も学部生も、fluentに英語をどんどん話していける「ぺらぺら」組なのである。「TOEIC900点超えでも英語が全然話せない」典型例の自分に比べて、ほかの人たちは、とにかく前に出ていってなんでも話そうという意欲にあふれている。
 しかし仕方がない。フリートークのレッスンでは、(自分のクラスより下のレベルならば自由参加と聞いたので)入門レベルのAクラスと、初級レベルのBクラスのフリートークに頻繁に顔を出した。
 I live in this neighborhood、 I was born and raised in this city.などといった「中1レベル」の日常会話から話していくよりほかに近道はないことはわかっていた。

入門・初級のフリートークで「口を開く」練習

 上級クラスのトピックは大学入試レベルのアカデミックなものが多かったが、講師や周りの学生が何を言っているかは聞き取れた。リスニングはここまで何年も勉強してきたのだから自信をもってよいと思えた。あとは、自分が話せるようにさえなれば。
 まず、その週のトピックを予習し、自分の意見を日本語でまとめて書いてみる。そこから英語にしていって、メモを見ながら話す方法をとることにした。最初から英語でがんがん話すなど、できるわけはないのだ。なお、日本語のメモは禁止だったが、英語でのメモを持っていても何も言われなかった。
 そうした上で、初級クラスのフリートークで「自分が口を開くタイミング」を会得し、それを自分のEクラスで応用していく。
 簡単にできるものではないが、黙っていると講師が促してくれるので、それをきっかけに何とか話していくということを繰り返していた。

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