脳の排水

 ジュリア・キャメロン著、菅靖彦訳『ずっとやりたかったことを、やりなさい』に載っているワーク、モーニング・ページを1月8日から始めた。本書には「アーティストになるため」に、3か月間12週間のプログラムが載っているが、そのベースとなるのがモーニング・ページだ。
 毎朝起きてすぐ、A4ノートに3ページ書き続ける。内容は何でもよいという。とにかく毎日毎日続くワークで、かなりきつい感じを受ける。それをなぜやろうと思ったか。
 本書に、モーニング・ページは「脳の排水」とあったから。いまわたしが一番望んでいるのは、自分の脳をクリアにしてこれからを考えること。モーニング・ページが「排水」ならば、きっと脳がクリアになるはず。まずは1週間やってみよう。効果があるなら、脳内の濁りが少し取れて何かを思いついたりするはず。
 そして、いま4週間続けてきた。つまり、毎日やってみて効果があったのだ。モーニング・ページを書いて数日間で、夜に見る夢が変わった。本書に書いてあるとおり、今までにないタイプの夢を見るようになった。色も内容も鮮明で、起きた後もしばらく覚えている。まったく本書のとおりである。この夢をモーニングページに書く。
 この「夢の変化」は本書に記してある通りだが、「だからどうなんだ」と言われるかもしれない。自分の脳にこれまでと違うことが起きているのは確かかもしれないが、それがどのように生活と結びついているのか。

具体的な感情の変化

 夢以外の変化を感じたのは2週間ほど経ったある日。わたしの悪い癖のひとつに、ネガティブな気持ちになりそうな仕事メールを読まずに数時間(長いときは数日間)放置してしまうというのがある。
 メールが届いた瞬間、タイトルと発信者が見える。本文を開けば自分にとって嫌なこと、面倒なこと、苦痛なことが書いてあると予想される場合、次の行動を決めなければならない。オファーを断ったり反対意見を書いたり「それは最初の話と違う」と返すのならば、ビジネスの礼儀として、理由や事情を先方に伝える必要がある。それが嫌なので、「嫌なことがスタートしてしまいそうな」メールを読むことを自身で拒否してしまうのである。
 実際にはネガティブなメールではなく、単なる連絡だったり、自分にとって嫌な気持ちを呼び起こすものではなかったとしても、タイトルと発信者だけで、無意識に「このメールを開けたくない(開けてしまえば嫌なことがスタートする)」と思い込んでしまうのである。元々ネガティブ思考なので、勝手に悪い方へと想像してしまうことが多々あるのだ。わかっているがどうしようもなく、直せない癖であった。
 このところ、ファイルが重くて扱いも面倒、従って細かいミスを見落としがちなプロジェクトに入っている。関係者からメールが届くと、これまでなら反射的に、「あとで開ければいいから」とクサいものにフタをする行動をとっていただろう。しかし今は、気づくと淡々とメールを読んで対応できている。
 「あれ? この頃、どんなメールであっても、タイトルを見た瞬間に本文読むことができるなぁ」と気づいたのが先週のこと。自分でも知らないうちに進行していた変化である。これはモーニング・ページ効果としか考えられない。心の中で「勝手に増やしてしまう大きなグレーのもやもや」が少なくなったと解釈すれば、外から何か(ネガティブかもしれない)刺激がやってきても、自身の精神が安定しているということが納得できる。

モーニング・ページに書く内容

 そんなわけで、もうしばらくは続けてみるつもり。内容はというと、著者によると「なんでもよい」ので、前日の日記のような内容が多い。わたしはモーニング・ページとは別に「4行日記」をつけている。10年日記帳を使っていて、1日の記入分は4行だけ。箇条書きでぱっぱっと書きつけるだけで、長く書くスペースはない。延々と思いを書き綴りたい日もあるが、最近では「あ、明日のモーニング・ページに書こう」と思って眠ってしまう。そして実際に、翌日モーニング・ページに延々と書いているのである。
 そのほか、当日の仕事予定を書くことも多い。手帳には予定を箇条書きで入れてあるのだが、その日の朝に再度「あれを、ああやってこうやって」などとプロセスを考えながら手順を書く。こうすると仕事がはかどる……かどうかはわからない。
 そこまでシステマティックではなくとも、日々のルーティーンの中で「昨日はあれとこれをやった。あれはよかったが、これは別にそんなに思い詰めることでもよかったな」「今日の仕事はあれとこれとそれがある。終わるだろうか」とか、浮かんでくることをただ書きつけるだけの日もある。

ヘドロを流す

 数十年ぶりに思い出した子ども時代のことや、家族の悪口を書く日も無論ある。だが、思ったほど毎日そういう「心(脳?)の奥底のヘドロ」が浮かび上がってくるわけではない。たぶん、まだ脳の表面の排水を流すだけで精一杯で、底のほうにあるどろどろを流すにまで至っていないのだろう。そう思うので、当面は書き続けるだけなのである。

所要時間と持続期間

 モーニング・ページを書くのにどのくらいかかるかというと、著者は「30分早起きして」と言うが、30分では終わらない日の方が多い。ちょっと考え込んでしまうと50分ほどかかる。すると、当日のその後の予定に直接差し障る。仕事が詰まっている日は、「早く仕事を始めないと終わらない」と、モーニング・ページを途中で止めようと思ったときもある。それでも「これが自分にとって一番大事なもの」だと決めたので、毎日毎日とにかく書き続けている。朝起きたらすぐ、布団の中で座椅子に座ってノートを開いて書き出す。布団のそばにA4のノートを置いておけばよいだけだ。
 やってみようかな、という向きには本書を読むことを勧めるが、A4ノートというのは結構大きいサイズである(わたしはミドリのMDノートという方眼罫のものを購入して使っている)。それに3ページはそこそこ分量がある。時間も分量も少なくして続けている人もいるようなので、人によってはそれでもよいのかもしれない。
 ともかく、自分自身で効果を実感した以上、1年間は続けようと思っている。脳の奥底に溜まっているヘドロを流すには、わたしの場合おそらく1年はかかる。というわけで、当面は毎日ひたすら書き続けていくだけだ。

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