校正者にとって一番の勉強
先日、他の校正者が校正したゲラを見る機会があった。ちなみに一切の守秘義務違反はなく、当該組織のルールに則った上で見せてもらったのである。
これが「すごい」ゲラであった。
まず、文字が「整然そのもの」である。字の大きさが揃っていて、きっちりまっすぐ、定規で測ったように縦書きの行もう横書きの行も揃っている。小さくて細かい文字なのに見やすい。
図表の書体やポイント数の混在を簡潔にわかりやすく、そして他ページの参照も入れて読みやすく指摘している。
ルビの指定もとてもわかりやすい。
「提案」として入れているテキストの付加や変更も「なぜそれを入れたほうがよいのか」という理由がわかりやすくシンプルに述べられている。
ファクトの確認も「ここまで」というほど細かくなされており、家系図が書き加えられて「こういうファミリーだからここの人の名前はこうなるはず」など、『校閲ガール』の世界そのままである。
巻末に原注や索引もあり、全体で500ページ以上と、かなり負荷の高いゲラだったのは間違いない。原注と本文との整合性も、もちろんきっちり確認してある。また、赤やエンピツだけではなく、青や蛍光ペン(マーカー)の使い方が絶妙で、まさに「そのページを見ただけで簡単にわかる」ゲラとなっている。
校正者にとって一番の勉強は、他の校正者が作業をしたゲラを見ることだとよく言われるが、まさにそのとおりだ。
まずは文字を小さくても同サイズにきっちり書き、ゲラのわかりやすい場所に配置することからはじめよう。よく、「単にコメントを書けばよいものではない」と言われるが、まさにそのとおり。文字の書き方ひとに校正者の技量が現れるのである。心しよう。