子どものときからアトピー、鼻炎、喘息とアレルギーマーチを何周も行進してきたわたしだが、いまでもそこそこ症状がきついのはアトピーのみ。
 ふだんは、鼻炎と喘息のことは忘れて過ごしている。しかし子ども時代いちばんひどかったのは鼻炎だ。そこからくる悪い習慣が今でも残っている。それが口呼吸だ。
 口呼吸をしているとウィルスが侵入しやすくなるし、それ以前に喉が乾燥する。それがわかってからは、鼻呼吸に切り替えようと努力してきた。多少なりとも成果は上がっており、10年前に比べたらだいぶ喉の乾燥もよくなったし、風邪も引かなくなった。
 それでもやはり、朝起きるとのどが痛い(睡眠中が口呼吸である証拠)、歯の治療では、患部が痛い以前に呼吸ができずにつらい(口を開けた状態では呼吸ができない、すなわち鼻呼吸になっていない証拠)。
 昨年のことだ。歯医者で口を開けていられなくなり、「歯そのもの(をいじられること)が痛いのではなくて、実はその……」とおずおずと「こういうわけで無意識に口呼吸になりがち」と話した。
 すると、「ちょうどよかった!」とドクターがおっしゃる。「鼻呼吸にする口の体操があるんですよ! ちょうど、うち(歯科医院)のみんなで始めたところなんです! どうですかこれ?」とタブレットを持ち出して「あいうべ体操」なるページを開く。
 文字通り、口を「あ」「い」「う」の形に大きく開き、舌を出して「べー」で一セットとなる体操。これで口腔内の環境が改善するのだという。なるほど、初めて聞いた。
 さらに歯科技工士さんがプリントを持ってきてくれる。「あいうべ体操」の効能などが載っている。なになに……「アレルギー疾患の改善」? 鼻呼吸でアトピーが多少なりとも、ましになったなんて聞いたことない。
 しかしお金もかからないし、数十秒ならば、ほんとの隙間時間にできそう。試してみて損はないかもと思えた。
 さらにもうひとつ。これは仕事上のトレーニングだが、毎日、英語の教材を使って、シャドウイングとオーバーラッピングをしている。教材作成者、翻訳校閲者として英語は読めることが最上命題。あとはライティングがある程度できれば音声はまぁいいや、と思ってきたが、教材の仕事をしていると、やはりリスニングやスピーキングも必要である。音声校正が回ってくることもあるので当然だ。
 というわけで、数年前から毎日トレーニングを始めたのであった。
 だがシャドウィングしていると、なかなか口がついてこない。英語と日本語とでは、話すときに使う口の筋肉が違うとは聞いていた。加えて、これまでリスニングやスピーキングの訓練をしてこなかったわけではないけれど、それにしてもこれほどとは思わなかった。
 ということがやっとわかり、このところ、シャドウィングの前に口を大きく開ける体操をしている。
 さて、ここで「あいうべ体操」の話が再登場する。口呼吸をするための「あいうべ体操」も、口の筋肉を使う。ならば、英語を話すにも役立つのではないかとピン!ときた。
 じつは、歯科医院の担当医とは仕事の話をすることが多くて、わたしが英語教材の執筆や校正をしていることも知っている。というわけで「これ! きっと英語話すときの口の筋肉も鍛えてくれるはず! 仕事直結となったらやらないわけにいかないので、もう今日からやります!」と宣言したのが1年前だった。
 担当医は「ええええー! そうなんですか。英語って口の筋肉使うんですか! ぜひやってみてください! 効果があるとわかったら、もうスタッフにも患者さんにも全員に勧められます!」と大喜び。
 というわけで毎日の隙間時間日課が増えた。最初は、ちょっとやってみたが、舌を「ベー」と出すだけで息が苦しかった。
 だいぶ口腔筋肉が衰えていた(というか、そもそも弱かったのかも)のだろう。けれども1年続けてみた結果、だいぶできるようになった。「べー」と舌を長く出すこともできるようになってきた。気のせいか、英語を話すにも楽になってきた感がある。
 最後にもうひとつ。この体操は誤嚥を防ぐ効果もあるのだそう。たしかに、以前は食べ物が喉につかえてむせることがたまにあったが、最近はそんなこともない。
 というわけで、口呼吸の方、英語を話す方、食べ物が喉につかえ始めた年代の方、みなさまに「あいうべ体操」をおすすめします。
 口を開いて「あ」「い」「う」と言い(言えない環境のときは口の形だけつくる)、「ベー」と舌を出す。これだけ。無料で隙間時間数秒でできるので、ぜひトライしてください。歯科医のお墨付き。もちろん、日本語の滑舌もよくなります!

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