放送大学「より良い思考の技法――クリティカル・シンキングへの招待』」受講ノート~第1回

 放送大学で今年から始まった科目である。自分が密かに「シニカルな哲学者」と呼んでいる友人に教えてもらい、講座名を見た瞬間に受講を決めた。「クリティカル・シンキング」こそ、自分がいま必要としている思考に違いないからである。
 さっそく第1回を視聴した。自分なりのまとめを書いてみる。

「錯覚の科学」と同じテーマ曲、同じ先生

「インターネット視聴」を選んで科目名を検索し、「第1回」をクリックするとタイトル名とテーマ音楽が流れ出す。あっ、2年前履修した「錯覚の科学」と同じ曲だ!ってことは「騙されないように学ぶ」という要素が入っているのね。
 講師も「錯覚の科学」と同じ菊池先生。語り口はもうわかっているので「講師の話し方がいまいち……」で科目を勉強したくない、ということはないだろう。

クリティカル・シンキングの定義

  教科書によれば、「クリティカル・シンキングとは、さまざまな情報をその前提を含めて明確に適切に読み取り、またさらなる探索を行い、それらの土台をもとに合理的な推論を行って結論を導出し、そして、そこから具体的な問題解決につなげていく訓練された思考」とある。
 なかなか難しい定義だが、criticalの訳のほうならわかりやすい。「偏見を持たずに吟味・評価していく思考」だという。 

クリティカル・シンキングのキーワード

 この講義のゲスト講師である琉球大学の道田泰司教授によると、現在のクリティカル・シンキングの概念は、合理性(論理性)、反省性(省察性)、批判性(懐疑性)の3つのキーワードで特徴づけられるという。この先何度も出てくることになるので、きちんと押さえておかなければ。

なぜクリティカル・シンキングが必要か

 これも教科書に述べられている。わたしたちを取り巻く環境は、AIをはじめとして気候変動や自然災害、感染症とさまざまなものに関するリスク情報があり、それに翻弄される毎日である。
 だからこそ、「私たちにとって最大のリスクは『変化に対応できないこと』であり、変化に対応できる意思決定方法の習得こそ、最大のリスクヘッジになる」のが大切と説かれているが、まさにそう。
 とくにわたしは変化に弱い性格だ。社会の変化に対応できなかった結果、職を失ったりもした。そこから、毎日仕事がある状態にまで這い上がるのはほんとうにきつかった。クリティカル・シンキングの考え方を持っていれば、さほど苦痛を伴わずにいまの状態になれたかもしれない。「変化に対応する」は、ほんとうに大切だ。

覚えておきたいキーワードその他

 クリティカル・シンキングには「領域普遍性」と「領域固有性」がある。また、「認知的側面」と「情意的側面」がある。それに基づいて決められた三要素「態度」「知識」「技術」が、これから本講座を受講するにあたり、覚えておきたいキーワードになるようだ。
 この辺は教科書に述べられているが、当該ページ「優れた思考力を持つクリティカル・シンカーの10の特性」という表がある。
 「知的好奇心」「知的誠実さ」などは自分に備わっていると思うが、「開かれた心」「知的懐疑心」「追求心」「決断力」の4つは劣っている点だと自覚している。
 まずは「開かれた心:いろいろな立場や考え方を考慮しようとする」から、毎日自分で「ちゃんと考えているかな?」と省察したい。

3つの視点 

 本講義では、クリティカル・シンキングを整理して考えるにあたり、次の3つの視点を使うという。その第一が「合理的・論理的な思考」。規準になるのは合理的な判断のための評価軸である。
 実践面で言えば、統計データをクリティカルに読むスキル(統計リテラシー)は、情報化社会を生きる私たちにとって必須のものだという。統計はかなり苦手なのだが、まずは「数字が超苦手」から「数字がちょっと苦手」くらいになれるようにするつもり。
 第二の視点は「実践的な思考」であり、具体的には、「何を信じるか、もしくは何をすべきかについて決定を下すことに焦点をあわせた」エニスの定義に対応したもの。
 ビジネスの場では「ロジカル・シンキング」という語をよく聞くけれど、ロジカル・シンキングはクリティカル・シンキングの一部に含まれる考え方ということがようやくわかった。
 そして第三、最後の視点が「内省的・メタ認知」である。「メタ認知」という語は、前述の「シニカルな哲学者」の友人がしょっちゅう挙げるキーワードである。自分のことを客観的に捉えること?というくらいがわたしの認識であったが、メタ認知の定義も教科書に載っている。「自分の認知活動をより高次の眼で客観的に認知する働きを指す」という。

知識ではなく、思考の方法を身につける

 本講座の特徴は、単にキーワードやその定義を覚えるということではない。自分にクリティカルなものの考え方が身につけばそれが受講した成果ということになるのだ。
 うーん、わたしにできるだろうか。クリティカルなものの考え方というのは一番苦手ではないか。
 しかし、それをやろうと思って受講を決めたのだ。もっとメタ認知ができるようになりたいし、そうなればこれからの人生も迷いが減ると思ったのだ。
 授業を視聴し教科書を読むたびに、「いまの自分に当てはめて」考えていくこと。それが何よりも大事なであるのはわかっている。毎日自分の思考を振り返り「この考え方でいいのか」とクリティカルに考える。なかなか難しそうだが、そればできれば、いまよりも幸せに生きていける気がする。

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