フリクションを使うようになった話

 もう10年以上、「消えない」ゲルボールペンを愛用していた。しかし出版社にオンサイト勤務していた数年前の夏、狭い行間に引き出し線を引いたり、小さいスペースに細かく赤字を書きこまなければならない日々が続いた。担当編集者に「消えるペンにしたほうがいいんじゃないの?」とぼそっと言われて愕然とした。「たしかに……」。
 摩擦熱でインキが消えるペンは、書き味がどうにも好きではなく、編集プロダクション時代は使っていなかった。
 さらに、取引先によっては「消えるペンは使用不可」と言われることもある。だから買ったこともなかったのに、このときなぜか手元にフリクションボールがあった。
 この一週間ほど前、前述の担当者とは別の社員の方が「フリクション要らない?」と声をかけてくれた。使う日はあるかなぁと思いながらも、文房具フリークとしてありがたくいただいた。それをペンケースに入れっぱなしにしていたのだ。
 というわけですぐさま使ってみたが、とくに0.38mmには感動があった。こんなに小さい文字をこんなにきちんと書けて、きちんと消える。何よりも「線」がちゃんと引ける。
 「をー」と言いながら朱字集約作業をしていた数時間後、担当編集者が「フリクション買ってきます」と外出した。そういえばおそろしく倹約家の彼は、会社支給の消えないペンか2色(赤/青)鉛筆しか使ってなかったはず。この人がフリクションを買うなんて、とびっくりした。とにかく修正の多すぎる本だったのだ。
 ともかく、こうしてフリクションの軍門にくだったわたし。いったん使いだすと、もう「消えないペン」には戻れない。フリクションは3種類の太さがあるので使い分けられるし、赤・青・緑の3つで色分けすると見やすい(当社比)。マーカーもあってこれまた便利。
 そして、素晴らしいのがフリクションイレーザー。もちろん、ペンのノック部分についているラバーでこすればインクは消える。わざわざ専用のイレーザーを買わずとも用は足りる。そのせいか、自分以外に使っている人を見たことがないのが残念だが、これは絶対のお勧め。消す時のスピードも段違いに速いし、消す時も軽い力で消せる。
 最後に書いておくと、フリクションOKと了解のとれた案件以外では、もちろん使っていない、念のため。そのときはハイテックCコレトですね、わたしは。

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