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Vendanges 2020 コンドリユーにて   その2:収穫の雰囲気

「ワイン用のブドウの収穫」と聞いて、どんなイメージを持つだろう。

やる気に満ちたワイン好きな人達によって丁寧に摘み取られる…
ブドウ畑という自然の中で清々しく息をしながら楽しく…

というようなイメージが真っ先に浮かぶかもしれない。
私も以前はそうだった。
実際は、これらは合っている部分もあるが、そうではない部分ももちろんある。
ドメーヌによって違うので、これはあくまで私の主観。

というのも、ブドウの収穫は、1年間の畑仕事の集大成であり、且つ、ワインの仕込みを開始する節目の大事な仕事であり「祭り」であるのは確かなのだが、「収穫作業」自体は誰にでもできる単純作業だし単なる肉体労働だから、「情熱を傾ける仕事」にはなりえないのである。
よってワイン好きが趣味・楽しみで参加したりすることももちろんあるが、「短期集中バイト」感覚で参加する人も多い。
「アルバイト」という労働形態のないフランスでは、ちょっと稼ぎたい時にちょうどいい仕事なのである。

私が行ったドメーヌも、ドメーヌの従業員・研修生以外の季節労働者約13名の内訳はこうだった。
・ポーランド人の出稼ぎ労働者4名。(なんと4名ともワインは飲まなかった…!)
・年金生活者3名。(年金収入の足しにする。) 
・学生・職探し中の人、4名。
・趣味で参加2-3名。(自分を一応ここに分類する。)

短期集中バイトとは言っても、はっきり言って「割りの良いバイト」というには程遠い仕事内容だから、お金だけが目的で季節労働者も来ているわけではない。
そこには、収入以外に、ある程度の「社会的な生活」や「やりがい」も含まれているのは確かだと思う。
ただその「やりがい」には「ワイン造りに対する情熱」が含まれているとは必ずしも限らない、ということである。

チームの雰囲気は、最初の人見知り感から徐々に打ち解けていき、冗談を言い合いながら和気あいあいとしていった。
収穫作業も丁寧さを厳しく求められることも無く、「摘み取り忘れ」さえ無ければ良いという感覚。白ブドウは特に、葉っぱの色とブドウの色が同じなので忘れやすい…。
加えて、食事は無料提供され(給与天引きのドメーヌももちろんある)、しかもそのほぼすべてが手作りなので何から何までおいしい…。
美味しいごはんを食べ、笑いあえるチームメンバーとブドウを摘み取っていくのは、ちょっと楽しい
体力的なしんどさも、この雰囲気の良さに救われた点が多いと思う。

こういう「古き良き・尊ぶべき・愛すべきフランス」は、正直言ってだんだん失われつつある。
他のドメーヌでは、自分たちで収穫人を雇わず、それ専門の派遣会社に依頼するところもある。
(こういうところはだいたいEU圏内の低賃金諸国からの出稼ぎ労働者しかいない。)
Vendanges(ブドウの収穫)は「収穫祭」から「できるだけ安い労働力にアウトソーシングする仕事」に移行しつつあるのもまた、紛れもない事実なのだ。

これを「効率化」や「コスパ」という超現代的な価値観で正当化することもできるだろうが、味気無さは残るような気がする。
まぁそれも、ボトル詰めされたものを飲むだけならば関係ないのだが。

これを踏まえて、私は「どんなワイン」を選ぼうか。
買い物はやはり「投票」だ。


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ブドウの収穫の豆情報

ブドウの収穫の仕事のみは、副業が許されていない公務員でも休暇や週休を利用して参加可能。
他の人ももちろんだが、年金積立、健康保険、有給休暇(収穫期間中に取得する人はほぼいないので給料として還元される)もある。
フランスはそこはしっかりとできている。

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