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かぐや様は告らせたい223話感想 私は伊井野ミコを弁護したい

賛否両論、ものすごく割れてますね。この223話。

私は初見で読んだとき、ミコちゃんの置かれている状況があまりにもしんどすぎて腹が立ってしまった側の人間です。

どうして毎度この子が辛い思いをするんだよ!!!(伊井野ミコ過激派)

だから裏ヒロインなんだろうけどね。別にお話にケチをつけたいわけじゃないんです。ただ、この話を読んで行き場のない怒りを抱いてしまうのを否定しないで欲しい。

頭では理解できても心が納得できないんだ。

モノローグが入ったことが一度もないミコの心情は、読者からは誤解されがちな感じがします。当たり前ではありますが。それに読者だけでなく、作中でも周囲に誤解されやすい子なんだろうなと察せます。そんなミコの想いにはまたもスポットライトが当たらず、表に出ている"未熟な部分"ばかりをひたすら糾弾されていたことに腹が立ってしまいました。

かぐや様が会長にした説明、ちょっとこばちゃんの視点に寄りすぎじゃないですか?いやこばちゃんの話を聞いた後なんだからそりゃそうだけど。

でもでもでもでもミコちゃんにだって色々あるんですよ!!!それを慮らずに「前科持ち」「石上を支えられなかった」と言うのやめていただけませんか!!!

……と言いたくて、この"色々"の部分について語りたくて、ついこんなものを書き始めてしまいました。

いや、かぐやの言いたいことは分かるんだけどね。でも厳しすぎない!?次期生徒会長への期待をかけているのも、ミコの為に言っているのも、自分自身の反省から来る言葉なのも分かるけど……。ミコ、ただでさえ傷ついているだろうに、自己嫌悪で押しつぶされちゃうんじゃないかと思ってしまいます。

今回会長が「なるほどそういう感じか……」と状況を察した様子が描かれていたり、小野寺麗ちゃんも2人の仲違いに気づいた様子だったので、今後必ずミコへのフォローが入ると信じてはいます。あくまでかぐやは"汚れ役"として、ムチ担当に徹したのだろうと。

中学の頃の話も、こばちゃん視点の回想で終わりではなく、今後ミコ視点(おそらく石上視点も)が明かされるはずです。今はまだ、それを明かすには早すぎるということなのでしょう。……そうだよね?



さて、本題です。これまでスポットライトが当てられてきていないミコの心情について、私の推測をぶちまけていきたいと思います。

ミコのモノローグが開示されたことは一度もないので、完全なる推測です。正しいかどうかは今の段階では分かりません。


「お前には関係ないから」と拒絶された時の反応と、こばちゃんに「上っ面の友達」と言われた時の反応は全く同じでした。

ハイライトが無く、冷たいけれど捉えようによっては泣き出しそうにも見える表情。そして「ふーん」ときつい言葉で相手を突っぱねる。

私の事嫌いな人の立場なんて考えたくない」というのがミコの言い分です。

石上への当たりの強い態度も、おそらくこれが理由だと思います。

クリパに誘われた時の「(石上は)私がいると鬱陶しいと思ってるんでしょ」という言葉と、「思ってねぇよ」と返された時の反応から、ミコはずっと石上に嫌われていると思っていたと推測できます。

また、「つばめ先輩とのデートはどうだったの?」と聞いて「お前には関係ないだろ」と言われたときミコは激怒し、なかなか許そうとはしませんでした。その言葉はミコにとってかなりの地雷なのだろうと察せます。

ミコにとって拒絶される事は何より嫌で、怖いことなのかもしれません

ただでさえ、大したことがなくとも周囲に「嫌われている」と思い込んでしまう子であることは色々な場面で示唆されてきています。

友人の麗ちゃんと生徒会の先輩であるかぐやが二人きりで話していただけで「陰口言ってたんでしょ」と詰め寄ったり。生徒会でも「みんな私の事要らないと思っているんでしょ」というようなことを言っていました。

その一方で、石上に褒められて優しい態度をとったり、文化祭実行委員で自分の気持ちを理解して手伝ってくれた麗ちゃんにはすぐ懐いたり、"可愛い"と言われてナンパに応じようとしてしまったり。

自分に向けられる好意には飛びつきます。


ずっと一人だった、ネグレクトに近い家庭環境が原因と考えるのが自然でしょう。でもそれ以上に、中学の頃に同級生から無数の悪意を向けられていたことが大きな要因だと私は思っています。

ミコは中学時代、背中に紙を貼られたり机をひっくり返されたり、陰口を叩かれるどころではなくいじめに近いことをされていました。

石上の努力のおかげで、机をひっくり返されたとか紙を貼られたとか、された事には気づいていなかったかもしれません。でも、"周囲から向けられる悪意"は痛いほど感じていたと思います。

ああいうのって、本人が一番分かるんですよ。陰口とかも、自分のことを言われているって即座に分かります。だけど、"鈍いふりをする"のが自分のためなんです。

ミコは「私のことを嫌いな人の立場なんて考えたくない」と思うことで、"陰口を言う方が間違っているのだから自分は悪くない"と考えることで必死に自分の心を守ってきたんじゃないか、というのが私の見解です。

石上が前髪を伸ばしたように、ミコも心にシールドを張って、視野を狭くすることで自分を守ってきた。

そうじゃなきゃとっくに壊れていた

ミコにとって、自分を守ってくれるのはいつも「正義」だけだったのではないでしょうか。

正しくあれば、自分は大丈夫。何を言われたって正しいのは自分。陰口を言う、"間違った人たち"には負けない

そう思えるから。

「ママとパパは悪くない。世の中が悪い人ばっかだからパパとママは忙しくて、お家に帰ってこれないだけなの」というセリフを見ても、ミコは幼い頃からそういう価値観を持つ子だったように思えます。正しいのは両親で、悪いのは世の中のルールを守らない人たち。

そしていつも自分を守ってくれる「正義」なら、皆を笑顔にできると信じている。

実際に笑顔にしました。文化祭のキャンプファイヤーが実現したのは、ミコが風紀委員として「正しさ」を守ってきた行為が、大人たちに認められていたからです。


そしてそんなミコなりの正義は、間接的に石上のことも救いました

救いましたよ。少なくとも私の解釈の上では。これに関してミコに他者から咎められるような所は無いです。

ミコの行動の結果石上は高等部への進学を認められ、生徒会に入った。それに石上が応援団に入ったのだって、ミコの正義に影響を受けたからです。「怖くても戦える奴に、僕もなりたい」。自覚はなくとも、石上を変えたのはミコです。

"自分の事を嫌いな人の立場は考えない"性格、"拒絶されたら即相手を突き放す"習性。ミコのそういうところが違っていれば、他の方法で石上を救えたのかもしれません。あんな風に石上が自分の殻に閉じこもってしまうことはなかったのかもしれません。だけど、そしたらミコは、とうに心が壊れてしまっていただろうと思います。

そういう意味であの直談判は、ミコにできる最大限だったと思います。当時の彼女を、誰が責められるものか。

ただでさえ疎まれていたミコにとって、石上の肩を持つことにリスクがなかったのか?普通に考えて、1クラスメイトを救えるような状態にないですよ。精神的にも立場的にも。

それでも、ミコは積み重ねてきた「正しさ」、もとい教師からの信用や風紀委員長の立場という武器を手に戦ったんです。自分を拒んだ石上のために。

それに、ミコはどうして「石上は毎回課題を提出している」と知っていたのでしょうか。停学中ということは、課題を出すために度々通学して職員室に顔を出すくらいで、教室には行っていなかったのでは?たまたま校内にいた石上を見つけて声をかけるか、もしくは先生に聞いて確認するしか知る手段は無いように思えます。

石上を心配する気持ちが無ければ、知り得ないはずの情報です。

未熟だろうが、理想の形で石上を支えることはできていなかろうが、素敵な女の子ですよ。同じ境遇に立ったとき、同じことが出来る人がどれくらいいるというんですか。


確かに生徒会長になるには、石上のこともミコのことも救った白銀御行の後釜になる器としては、足りていない。

たとえ嫌われても、自分が傷つく事を恐れずに、相手の立場を考えられる。上に立つには、そういう視野の広さが求められるから。そうでないと救えないものも沢山あるから。

ミコは中学時代に自分を守るために作った殻を、未だに破れていません。それはこばちゃんへの対応から明らかです。ずっと変わっていないという意味で、幼いと言われてしまうのも仕方がないです。

石上が怖くても応援団に入り視野を広げたように、ミコも過去のトラウマを捨てて、成長すべき時が来ているんだと思います。

かなりの無理難題であることは百も承知。自分から一歩大人になってこばちゃんの心を救い、友情と恋愛の両方を手中に収めるような"一つ上手な人間"じゃないと"生徒会長"としては認めませんよ。変わりなさいとかぐやは言いたいのでしょう。

かぐやの白銀御行リスペクトの強さが伺えます。

ミコのことを相当評価しているという見方もできますね。生徒会長に推薦するために、本気でミコの成長を促しているようにとれます。一番可愛がっている後輩、石上へのスパルタ指導を彷彿とさせるというか。

で、でも……。スパルタが過ぎません……?四宮副会長〜〜〜〜

だから、だから私はあの時石上を支えられなかった。そう言いたいんでしょう……私のそういう所を、先輩とこばちゃんは咎めているんでしょ

という言葉から、ミコが親友に突き放されて傷つきながら、中学の頃の自分の未熟さを責めていたのは明白です。友人に「面倒な子」だとか陰口を言われて、怒るのは当然ですよ。でも、そこで自分のことも責める子なんです。

そうしたら傷口に塩を塗るように、夢だった"生徒会長"になるには貴方は足りていなさすぎる、だから石上を支えられなかったんだって追い詰めるような言葉を掛けられて。

ミコはいっぱいいっぱいになりながら、ずっと頑張ってきたのに。未熟な部分だって、折れずに頑張ってきた証拠なのに。

まだちっとも足りていない、頑張れと。傷ついているこのタイミングで言われるのか。

正論だけど、きつすぎる……。

最近間違った方向に進みそうな雰囲気があったミコを正してくれたのは嬉しい。それにミコが頑張る展開を見るのは楽しみです。

ミコは「怖くても戦える奴」なので、きっと乗り越えられると信じてる。

でもさぁ……。

う"〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

誰かミコちゃんの頭なでなでしてあげて!石上、麗ちゃん、会長……。


伊井野ミコが報われて欲しい。絶対に。

この子が報われないとか夢も希望もへったくれもないです。

後夜祭のときみたいな輝く笑顔をまた見たい。






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