見出し画像

ウォルマートが米国のTikTok買収についてマイクロソフトと協議中と発表

『戦略をアップデートする』は、競争戦略コンサルタントとしてGAFA×BATH等の米中メガテック企業をはじめ国内外トップ企業の動向をフォローしている田中道昭が、日々行っているこれら企業へのリサーチの中から、その内容をnoteでシェアするものです。

今日の『戦略をアップデートする』は、ウォルマートによる動画投稿アプリ「TikTok」の買収協議についてです。

ウォルマートは、2020年8月27日、ニューズルームに「Walmart Statement Regarding Discussions with Microsoft About TikTok(TikTokに関するマイクロソフトとのディスカッションについてのステートメント)」と題する記事をアップしました。

記事によれば、ウォルマートは、マイクロソフトとのパートナーシップの元でのTikTokとの関係強化は、TikTokが持つ強みをウォルマートのオムニチャネル、サードパーティマーケットプレース、広告といった事業に活用できるとともに、米国のTikTokユーザーの期待に応え、政府当局の懸念も払拭するとしています。記事には「買収」などの用語は使われていませんが、その文脈からは、ウォルマートがマイクロソフトと協力して、米国におけるTikTokサービスの取得の意向であることがわかります。

世界最大のスーパーマーケットチェーン ウォルマートは、アマゾンが猛追してくる中、EC環境の構築に加えて「ストアピックアップ&デリバリー」「インホーム・デリバリー(自宅冷蔵庫までの食品配達)」「EC購入したものの翌日配達」、さらにはウォルマートを中心としたエコシステムの構築によって、カスタマーエクスペリエンス向上や顧客との関係強化を進めています。このデジタルトランスフォーメーションのポイントは、ウォルマートの最大の強みである店舗設備のデジタルシフト「EC×店舗」(動画参照)。

ウォルマートはデジタルトランスフォーメーション推進にあたってマイクロソフトと戦略提携をしていますが(2018年7月16日付けマイクロソフトPR参照)、TikTokの強みを加味することで、それを強力にスピードアップすることを目論んでいると考えられます。

ウォルマートの2020年度におけるEC売上高は280億ドルで全売上高の5%程度を占める一方、すでに全設備投資におけるEC関連投資は5割以上となっています。

マイクロソフトは米国TikTokの買収協議を継続していた中(2020年8月2日付けマイクロソフトのコーポレートブログ参照)、8月14日に出された大統領令(大統領報道官室資料)では、TikTokサービスを提供するバイトダンスに対して90日以内に米国事業を売却すること、米国ユーザーから取得したデータすべてを削除することが命じられています。TikTokサービスを巡っては、こうした安全保障などに絡む政治的背景の存在や、他企業による買収検討の報道もあります。注視を続けたいと思います。

田中道昭

PS.  ウォルマートのデジタルシフト戦略の要諦について、NTTグループのオウンドメディア「Bizコンパス」で解説しています。よろしければ、同記事もご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?