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住宅大手レナー社CEO:金利上昇や銀行の貸し渋りで住宅の供給が減っている

written by @mercurys_assets

経済指標からマクロ経済を見ることも重要であり、本ニュースレターでは経済指標を積極的に紹介していますが、個別企業の決算をウォッチする中で、マクロ状況が見えてくることもあります

今回は、米国住宅建設大手のレナー社が最新決算を発表したので、確認しておきたいと思います。今回の決算内容は2023年3月〜5月のものです。前回分は以下のニュースレターで紹介しています。

本noteは「Mercury's」で平日毎朝7:30に更新しているニュースレターの一部を転載したものです。(毎朝メールで受け取る

レナー社の決算は予想を上回った


レナー社の決算は、売上の前年比こそ住宅価格デフレの影響などを受けて減少しましたが、EPS・売上ともに予想を上回る好決算でした。

EPSは$2.94で、予想を$0.62上回りました。また、売上は$8.05Bで、予想を$796M上回りました。売上の前年比は-3.75%で微減でした。

売上が前年比で減少した主な理由は、納品単価の下落によるものです。昨年の2Qは平均単価が$505,166でしたが、今期は$449,000であり、約11%ほど下落しています。

前回のニュースレターで見た通り、4月分のケースシラー住宅価格指数は前年比-1.74%でした。ケースシラー住宅価格指数は中古住宅の指数なので、新築住宅を建設するレナー社と直接比較することはできませんが、レナー社の建てている新築住宅の価格が11%も下がっているというのは、少し興味深い点です。

ケースシラー住宅価格指数(2023年4月分まで)/ FRED

これは、住宅価格全体の下落というよりは、レナー社のコストカット努力などによって値下げをできているということだと思いますが、そうしたコストカットを可能にする技術などが出てきているなら、長期的にはインフレ緩和に寄与するかもしれません。

住宅の新規注文は過去数年と比べても強い


また、今回の決算で注目すべきポイントとしては、新規注文数が力強く回復している点でしょう。

レナー社の注文・納品状況推移(2023年Q2まで)/ Mercury's

例年、Q2は注文の受注が多いのですが、今年の新規注文数は17,885件で、これは昨年Q2の17,792件や2年前の17,157件を上回っています。つまり、アメリカの住宅需要は、過去数年と比べても強いということです。

この点は、中古住宅価格が再び値上がりを始めていることを示していた4月分のケースシラー住宅価格指数とも一致しています。引き続き、インフレや高金利環境の長期化を意識する必要があるでしょう。

金利上昇や銀行の貸し渋りで供給の方が減っている


さて、レナー社が順調に新規注文を伸ばせているのは、住宅への需要がある中で、供給が足りていないからだと、CEOのステュアート・ミラー氏はいいます。

ひとつに、すぐに住める家の供給が多い既存の住宅市場はある種の制約された状態にある。もうひとつに、金利の上昇を受けて、多くの建設業者が新規の建設を控えている。銀行関連の問題が新築住宅市場の生産力の一部を制限し、在庫を構築することを妨げているかもしれない。私たちは、その空白を埋める機会があると感じた。

これはアメリカの住宅価格インフレの非常に難しい状況を示しています。

住宅価格を下げようと思えば、FEDが政策金利を上げるのが一般的ですし、それが実際にいまアメリカで行われていることです。政策金利の上昇が住宅ローン金利に反映されれば、ローンの利払いが増えるので、需要が減るというわけです。

しかし、ここでレナー社CEOの発言から分かることは、金利の上昇によって、先行きの見通しが悪くなった転売業社や建設業者が、供給の方を先んじて絞っているということです。

中古住宅をリフォームして転売する業者や、新しい住宅を建設する業者などの活動が、ローン金利の上昇や銀行からの貸し渋りを受けて、鈍っている。その結果、住宅の需要ではなく、供給の方が減っているというのです。

結論:住宅インフレの解決は簡単ではない


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