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チェロ弾きのためのエッセイ〜兄弟〜


前回の続きです。



今日は9番。私の苦手とする、というか弦楽器奏者はみんな苦手(だと信じている)、重音の練習です。
ト音記号、親指、重音とかいう、苦の三重奏がなんとも調和しています。頑張ってみましょう。


「重音を練習する際は、必ず基準の音を作ること。つまり、二つの音を同時に出そうとするのではなく、別々に分けて弾く」先生に教えていただいた、重音の練習のコツです。

というわけで、まずは上の音だけを一つずつさらってみます。これだけでも十分ハイポジションの難しさがありますね。3段目くらいまでくるとキリがつくのでそこまで頑張って、これでようやく全体の1/4。
次は下の音。こちらも一つずつ。ちなみに、この楽譜は細かに指番号がふってあります。自然な指ではあるのですが、強度が高く指示通りに弾くとかなり練習になります。


ちなみに今回の曲は、3度と6度の重音がメインのようです。この二つの音程は、兄弟の様な関係性を感じます。3度のどちらかの音を転回させれば、6度の音程になります(逆も然り)。
6度の音程は特有の美しさを持っているそうです、するとその弟である3度も、美しさの秘訣を知っているかもしれないですね。

勝手に3度を弟にしてしまいましたが、もしお兄様であったら、3度さん、申し訳ありません。

また、この曲もパターンが見極められると少し楽に弾くことができる部分があります。例えば12小節目のpから16小節目の
デクレッシェンドの終わりまで。基礎練みを感じます。


ふと、「これだけ難しい譜面もさらさら弾けてしまう人がいるんだなあ…」と世界の広さ、自身の伸び代をしみじみ思います。そして自分がこれを平気で弾けるような日が来るのでしょうか…



以前もこんなことを思っていました。初心者の頃のことでした。


音楽経験こそあれど、弦楽器なんて全く未経験で始めたチェロ。2つ上の先輩が2人いましたが、1人の女性の先輩は中学から、もう1人の男性の先輩は3歳からチェロに触れていました。まるで赤ちゃんと高校生です。
その時も、先輩たちが合奏やパート練で弾いているのを横で見ていて、経験者は違うなあ、もっと前からやっていたらなあ、なんて思っていました。

自分がここまで弾けるようになるには単純計算であと10年以上は必要…その時私29歳です。


時が過ぎるのは早いもので、もう6年目になってしまいました。今は先輩たちは卒業してしまい、一緒に演奏できる機会も当分なくなってしまいました。
あの頃の先輩を越えるまでは行かずとも、少しは追いつくことができたのでしょうか?他の人に示しがつくレベルには達しているのでしょうか?実際に順位や演奏力(某漫画の戦闘力、的な)数字が出たらわかりやすくて楽なのかもしれないですね、なんだか嫌だけど。

環境を共有する人間がいると、どうしても比べることがチラついてしまいます。ですが、自分しかいない空間で練習していると、それはそれで寂しいですが自分の音をよく聞ける良い機会でもあります。
一人きりで部屋にこもってする練習も、自分と他人との境界を意識するために必要なのかも知れないですね。


とりあえず練習中に最近思ったことを書いてみたのですが、もしかしたらこれも、Popperと向き合ってみようと思った理由なのかもしれません。


とにかく、今日は弾けるようになったのは16小節目まで。まだまだ道のりは長いです。


本日の結果
親指がしんどい。

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