#こんな社会だったらいいな ~「空飛ぶ乗り物」編~

子どもの頃『チキ・チキ・バン・バン』という映画が好きだった。タイトルになっているのは、作品中の空飛ぶ車の名前だ。ミュージカル映画で、翼の生えた車が明るい音楽と共に舞い上がるシーンは、子どもにとってはワクワクする光景だったのを覚えている。

空を飛ぶことは、きっとずっと人類の夢だった。有名なアニメの「そーらを自由にー飛―びたーいなー」を持ち出すまでもなく、様々な作品の中に、空飛ぶ乗り物が描写されるのは、空中を自由に飛び回ることが、それだけ人の想像力を掻き立てるものだということでもある。

今までももちろん、飛行機やヘリコプターが開発されてきた。自動車会社は空飛ぶ車の開発に余念がない。

だけどそうではなく、もっと身体に即した、もっと自由に羽根が生えたように飛び回れる乗り物が開発される日は、果たして来るのだろうか。人間の体に翼が生える日はまずもって来ないだろうが、それに近いパフォーマンスを実現できる日は来るかもしれない。

もちろん、仮にそういう乗り物が誕生したとしても、課題や難点は多いだろう。そのことは容易に想像がつく。

「うるさいから住宅の上空を飛ぶな」とか「落下するリスクを考えろ」とか「上空からの投身自殺に使う人間が出て来たらどうするんだ」とか、いろいろな意見が予想される。そういった乗り物の免許を取るのは難しいだろうし、その取得が高額なものになることも考えられる。(いまだって自動車免許の取得にはそれなりの金額が必要だ)

だけど一方で、空を使っての移動が可能になれば、電車通勤のラッシュは今よりも緩和されるだろうし、車による渋滞も減ることと思う。歩行が困難な人の移動手段としても、画期的なものになるかもしれない。

既にカナダで「人が乗れるドローン」を開発した人がいるので、こういう議論もあながち夢物語ではないと言えるだろう。法規制は難しいものになるだろうが、人がその身体を風に晒しながら、空中を疾駆する日は、思ったより近いと感じている。

ただ、最終的になってほしいのは「移動手段が多様化し、ラッシュがない社会」だ。だから別に空を飛ばなくても、路面電車が各地で復活するのでもいい。交通機関への人の集中を分散させる方法が考えられ、実現されてほしい。

個人的な希望をひとつ書くとすれば、空を飛ぶスクーターが登場してほしい。片足で地面を蹴って道路を滑走した後、ふわっと舞い上がれるような。運がよければ、生きている間に街で見られる、かもしれない。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。