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現実的な夢見物語。ポール・オースター『ミスター・ヴァーティゴ』

「私と一緒に来たら、空を飛べるようにしてやるぞ」
「空を飛べる人間なんているわけねえだろ、おっさん」と俺は言った。「それって鳥がやることだぜ。で、俺はどう考えても鳥じゃねえ」


おとぎ話のようでいて、ヒリヒリしていて、悲しく懐かしいような読後感の作品です、『ミスター・ヴァーティゴ』。

図書館で借りた本なんだけど、購入して家に欲しい。


ポール・オースターの作品はいくつか読んでいるけど、どの物語も会話の妙ってものを感じさせんですよね。

冒頭に引用したところもそうだし、随所に使えそうな、気の利いた台詞が出てくるから楽しいのですよ。

「俺のプライベートな部分を中傷しないでほしいね。他人には取るに足りないように見えても、本人はいちおう誇りに思ってましてね」とか

「世の中そういうふうにできちゃいないのよ。プッシーには愛が必要なのよ。撫でてもらって、食べさせてもらわなきゃいけないのよ、動物とおんなじように」とか。


どこか退廃的で、すごくリズムに乗っていて、ポール・オースターの書く文章は、いつも暗い路地を淡々と流れている汚水みたいだ。


この『ミスター・ヴァーティゴ』に関して言えば、主人公が貧しい白人の男の子だ、っていうところが新鮮だったかな。教養もなく素行も悪い。そういう子どもが、興行師と共にアメリカを渡っていく。


どう勧めていいのかわからないけど、ダークで現実的なおとぎ話って感じです。

そういうの好きな人は是非。
オースター人気だから、どこの本屋や図書館にもあるんじゃないかな。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。