幸せをよぶ黒猫 ノアの話
真っ黒だからノアールから「ノア」と名付けた。
彼女はもともと、のら猫。
時々親の家に来ていた。
1歳になったころ、細い小さな体で子猫を3匹産んだ。
細い体が子猫に栄養摂られてますます痩せていたある日。
庭の草よけネットに、子猫が引っかかっていた。
可哀想に思い、助けてやろうとしていたら、この痩せた真っ黒の親猫が聞いたこともないような声で人間を威嚇して、子ネコを守ろうとした。
どこにそんなパワーがあったのだろうと思えるほどで、心底驚かされた。
なんとかネットを外し、事なきをえた。
黒猫の親はその後また妊娠することがあると思ったので、しばらくして捕まえて避妊手術をしたのだった。
メスなので、手術後はせめて1週間はケージで安静にさせてやりたい思いで、先住猫のロシアンブルー の猫(メル)がいたが、我が家で預かることになった。
病気もあるかもしれないから、個室にケージを設置。
布も被せて安心できるようにと住まわせ1週間経ったころ、また外でのら猫にさせるのがしのびなく、我が家で飼うことになった。
もうすでに2歳近かった為、メル(その時4歳)とは大喧嘩にはならなくても仲良いとも言えず、10年ほど経った今でも2匹寄り添って猫団子になることはない。
最初は逃げてばかり、テーブルに置いてた菓子パンをかじってたこともあり、いままでの生活の厳しさをまじまじと感じた。
我が家で赤ちゃんから育ったメルは、ノアに餌を横からとられても全く平気。
いつでも餌はあると思っている。
育ちの違いで、こんなに性格も変わるのだ。
いつも低姿勢で人間やメルの動きを気にしているノア。
それでも無理やり抱っこして、撫でられるのが気持ちいいことを覚えさせた。
愛情をたっぷり与えてやると、甘えていいのかなという目でこちらを見上げるようになってきたのは嬉しかった。
今でも逃げてばかりだけど、足元ですりすりしておねだりも出来るように!
ノア、あのままのらネコに戻っていたらどうなっていたのかな?
今ここにいて幸せと思ってくれてるかな?
彼女にとっては数奇な運命だったと思う。
我が家は幸せをよぶ黒猫が来たと思ってる。
今日も抱っこして欲しそうなのに逃げるノアを捕まえて、ぎゅーっと抱いてやるのだった。
何も心配しなくていいんだよと。
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