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「ビジネスモデル、一度作ると長生きさせようとする」問題 ~新規事業伴走メンタリングの現場⑥~

メルセネール・大道寺です。
前回に引き続き今回も新規事業検討で必ず検討する「ビジネスモデル」がテーマです。その中でも「モデルを一度作るとそれが長生きさせようとする」問題を取り上げようと思います。

ケース 地方創生系サービスのビジネスモデル

前回に引き続き、地方創生系サービスの検討をした際のお話です。
ビジネスモデルキャンバスを活用して検証を進め、幹部の方々からの宿題にも答えながら、ようやくビジネスモデルが形を成してきました。その際のメンタリングMTGでの対話です。

検討チーム:
「いろいろありましたが、ようやくビジネスモデルキャンバスが形になってきました。ここまで長かった・・・」

私:
「お疲れさまです。このキャンバスをじっくり作りこみ、検証して形にするのは非常に大変ですよね。ようやくスタート地点のビジネスモデルができましたね。」

検討チーム:
「最初はCS(=カスタマー)として〇〇の特徴を持つ地場企業をターゲットに攻めます。初期なのでCH(=チャネル)は直販で自ら提案を持ち込んでいくのが良いかと思います。」

私:
「ふむふむ・・・、そうですね、それがいいでしょうね。」

検討チーム:
「続いて、他の項目では・・・(以下略)」

私:
「ストーリーは成立していますし、部分的に検証も済んでいるので、このまま進めていくのが良いのではないでしょうか。」

検討チーム:
「はい、ではチームで総力を挙げて実現します!」

私:
「・・・このモデルはいつまでに実現されるのでしょうか?あと、このモデルが実現された後はどうするのですか?」

検討チーム:
「・・・。今回考えたモデルを実現し、それによって収益を得る想定です。その先のことは特に何も。。。」

『ビジネスモデルキャンバス』を活用したビジネスモデルの検討は有効ですが、いくつか弱点があります。そのうちの1つが時間軸に対応していないという点です。


「ビジネスモデル、一度作ると長生きさせようとする」問題

ビジネスモデルキャンバス=「写真」

ビジネスモデルは考えて検証するだけでも非常に労力がかかります。一生懸命考えて、検証しに行くとダメ出しされて、修正して、再びダメ出しされて・・・を繰り返し、各所の合意も取り付けながら形になっていきます。モデルを構築していく過程で、新しい気付きを得たり、顧客からの応援も頂けたりして充実感を得られる活動でもあります。

でも、やはり大変な活動です。多くの方がこの大変な期間を乗り越えた結果、産みの苦しみを経た結果、構築したモデルに愛着がわき、これが正しく、また長らえるモデルであると信じたくなってしまいます。

ただ、ビジネスモデルキャンバスを活用して作り上げたビジネスモデルは、ある一瞬を切り取った『写真』でしかありません

皆さんも自ら手を動かして有名なサービスのモデルを学びのために書いてみたり、「ビジネスモデルキャンバスを用いて〇〇を整理してみた」的なまとめをご覧になったことがあると思います。

しかし、その記載されたモデルの多くは、成功しているある一定期間のビジネスモデルでしかありません。立ち上げ初日・初月からそのモデルを実現できているケースはほぼ無いでしょう。例えばキーアクティビティ(KA)に「顧客データとAIを駆使した個別最適な自動提案の仕組み」と考えたとしても、立ち上げ当初から実現することは難しいと思われます。実際は、「裏側であたかも自動化されているように人力で対応する」ということがあったりします。

ちなみにこちらの漫画にそのような下り・描写がありますが、「実際はそんなもんだよね~」と思いながら読んでました。


仕組みができてから立ち上げるということは選択肢にありますが、時間を始めとするリソースが限定的な組織では難しいでしょう。

『成功したタイミング』のビジネスモデルと『立ち上げたばかり』のビジネスモデルは異なるということを認識しておくことが重要です。


ビジネスモデルを繋げて考えておく

では、どのように対策すればよいでしょうか?
私はメンタリングの中で、

  1. 目指すビジネスモデルを段階的に書き分ける

  2. 何をキッカケに見直すことになるかチェックポイントを設計する

ことをおススメしています。

1.目指すビジネスモデルを段階的に書き分ける
まずは立ち上げ初日から一定期間がどのようなモデルなのか、軌道に乗り始めたモデル、市場に浸透している状態のモデル・・・と段階を分けて書き分けることが効果的です。

ビジネスモデルが時間軸で繋がるイメージ

もちろん新規事業は思い通りには進みませんのでモデルは変化する前提です。時間軸が先に行くほどブレ幅が大きいので考え詰める必要は無いのですが、実はこの事前設計ができているかどうかは大きな差を生みます。

「競合よりも市場に浸透させるためには、最初にこの手を打っておくことが重要」など、戦略的に構想できるようになります。私がコンサルティング、メンタリングさせて頂いた新規事業のほとんどが、この中期モデルの繋がりを描けていません。中長期でモデルの繋がりを描きながら、目の前のビジネスモデルの実現に向けて邁進することになります。

2.何をキッカケに見直すことになるかチェックポイントを設計する
「ビジネスモデルはどのタイミングで見直すべきなのか?」というご質問をちょくちょく頂きます。そして多くの場合が、

  • 年度計画のタイミングで見直し

  • 中期経営計画策定のタイミングで見直し

  • 幹部の指示があった際に見直し

など、内部で規定されたルールや意図を理解できていない指示に基づくものになっています。

しかし、『ビジネスモデル』は内部で規定されたルールに影響を受けるものでしょうか?

1年経過したのでビジネスモデルが変化する、ということにはなりませんよね。ビジネスモデルは外部環境と内部環境の影響を受けて変化する可能性があるものです。その前提で、自社のモデルに合わせて見直し開始チェックポイントを設計しておくとよいでしょう。

汎用的な視点としては3Cの視点が扱いやすいです。
3Cとは、

  • Customer:市場/顧客

  • Competitor:競合

  • Company:自社

の3つの頭文字を取った視点です。

顧客が変わればモデルは変わる、競合が変わればモデルは変わる、自社が変わればモデルは変わる、という3つのチェックポイントはシンプルで分かりやすいと思います。

まずはこの視点を活用いただきつつ、ご自身が考えるモデルにフィットするチェックポイントを設けられるとよいですね。

3C視点での見直し

※フレームワークを知りたい!という方はこちら
こちらを基点に基本的なフレームワークを対話形式で整理しています


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