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産業カウンセラー養成講座 3日目

産業カウンセラー養成講座の3日目の講義がありました。
2日目から1ヶ月間以上空くという変則スケジュール。

とはいえ1回の講義は、昼休みを含めて1日8時間の長丁場。
体力的にもかなりきついのでインターバルがあるのは助かります。

本日の講義内容

1.チェックイン
2.カウンセリング実習① 〜前回学んだ技法に関する復習〜
3.カウンセリング実習② 〜傾聴技法「要約」〜
4.カウンセリング実習③ 〜傾聴技法「質問」〜
5.沈黙や多弁について考える
6.幼少期で一番記憶にある思い出について
7.カウンセリング実習④ 〜これまで学んだ傾聴技法全てを使ってみる〜
8.チェックアウト&振り返り

1.チェックイン

講義が始まると、まず最初にチェックイン。
講義に集中して臨むため、今の気持ちを率直に吐き出す時間。
私は久々の講座参加への若干の緊張、不安を語りました。

受講生全員の顔を見渡せるので良い時間です。

2.カウンセリング実習① 〜前回学んだ技法に関する復習〜

続いて前回まで学んだ内容の振り返り。
ここまで習得した技法を使えるかをカウンセリング実習を通じて実践・確認します。

(1)傾聴における基本的態度

実習に入る前に、まずは中核三条件等の傾聴の基本的態度をおさらい。
技法はあくまでテクニック。基本的態度をより効果的に発揮するためのものです。

[中核三条件]
①自己一致
カウンセラーが自分を取り繕わず、素直なありのままの自分を出すこと
②無条件の肯定的配慮
クライアントに条件をつけず、ありのままを受け止めること。決して見下さず、評価もしない。
③共感的理解
カウンセラーの固定観念や価値観でなく、あたかもクライアントになったかのように共感し、その気持ちを的確に理解すること。

(2)これまで学んだ技法の実践
これまで学んだ「場面構成」「観察」「シンプルな受容」「伝え返し」「感情の反射」「感情の明確化」について復習した上でカウンセリング実習を行いました。

(2)実習を通じて感じる難しさ

テキストで学ぶのと、実践では全く違います。
以下に難しく感じるポイントをいくつか例示します。

①伝え返しや感情の反射
簡単に言えばクライアントの言葉のキーワードや感情を表す言葉をカウンセラーが相槌的に繰り返すことで、クライアントに理解しもらえているという感情を抱いてもらうための技法。

まず難しいのがタイミング。簡単そうに思えますが、適切なタイミングでキーワードを見出し、伝え返すというのは本当に難しい。
指導役からは多少変でもいいから積極的に行うことが重要、つぶやき的にボソッというだけでもいいとアドバイスがありましたが、それでも難しい。
普段の自分が如何に相手を見ずに相槌を打っているのか、もしくは相槌をしてすらいないのかを痛感します。

次いで難しいのが言葉選び。
例えばクライアントが自分を揶揄するような自虐的な言葉を使った時にどうするのか。
自分でいうのは良いけど、人に言われると気分が悪い言葉ってありますよね。ではカウンセラーは自虐言葉をそのまま伝え返してもいいのか。
しかし指導役曰く、その言葉を伝え返してもいいのかという考え自体がカウンセラーの価値観が入っていないかと言われ、ハッとしました。
とはいえケースバイケース。難しいことには変わりないです。

②感情の明確化
クライアントの話から言葉になっていない感情を見出し、言葉として明確化することでクライアントの内省を促すこと。
指導役からも簡単に使える技法ではないと言われており、実際伝え返し以上に難しいと感じます。

(例)
クライアント「上司からキャパを気にせず次々と仕事を振られ、フォローもない。しかもそれが納期までにできなかったり、品質が低いと他の社員の前で叱責をされるんです」
カウンセラー「上司のマネジメントに”理不尽さ”を感じていらっしゃるんですね」
クライアント「そうなんです!理不尽なんですよ!!」

このように言葉として明確化してあげることで、クライアントの内省を深まめるお手伝いをする。
多少違ったとしても「いや、理不尽とはちょっと違って。。。どちらかと言えば、できない自分に自己嫌悪を覚えるという感じでしょうか。。。」という感じで、やはり内省が深まります。

しかしその明確化が全くの的外れだったり、まだクライアントとして触れて欲しくない部分を悪戯に明確化してしまうようなことをすれば、信頼関係を損なったり、相手を傷つけてしまう。
そんなわけで、この技法を使うときは、とても難しく、怖いと感じます。
信頼関係が確立され、クライアントへの理解が深まるまでは悪戯に使わない方がいいという指導役の言葉も納得です。

指導役曰く、カウンセラーに最低限求められるのはクライアントに「ここは安全、安心な場」「『私は不安です』と言ってもいい場所」と思ってもらうこと。不用心に行えば相手を傷つけてしまう可能性もある技法だからこそ、これが怖いものだという感覚を持ちながら慎重に使う姿勢を忘れないように指導されました。
尚、そういったリスクを最低限にするためにも、感情の明確化ではクライアントが使っていた言葉をそのまま使うのが最も安全と言われました。

③全技法に共通して難しい点
全技法に共通して最も難しいと感じるのが「自分の価値観」を出さないという点です。相手の話を聴く中でどうしても自分の主観が顔を出してしまう時があります。
そうなると途端にクライアントの話への集中が途切れてしまいますし、受け答えもアドバイスめいたものなりがちです。

他には「言い回し」。
特にクライアントを評価したり、対等な関係でない言い回しになっていないかという点を難しく感じます。
評価の事例としては、「上司から理不尽な扱いを受けるなかでも、自分は素晴らしい仕事をしてきたんだ」という話があった場合。
「私もあなたは素晴らしい仕事をしていると思いますよ」と言えば評価。
「理不尽な中でも、ご自分では素晴らしいお仕事をされてきたと感じられているんですね」は評価ではない。
前者を繰り返すと、クライアントはカウンセラーに評価されるために話してしまう。

対等な関係については、例えば「なんでも気軽に話してもらえると嬉しいです」といった言い回しだと、クライアントはカウンセラーを喜ばせるために話すことになってしまう。

このあたりの塩梅が非常に難しいです。
正直ここまで言葉の1つ1つに気を遣って生きてきたことがないです。
実習の中でも言葉遣いの1つ1つを事細かに指導されます。
魂は細部に宿るという感じでしょうか。

指導役からは「カウンセラーの仕事の一つはクライアントに『自分の考えを他者にわかってもらえた』と思ってもらうこと」という言葉がありました。小さな言葉が人を傷つけたり、自分の意図したものと違う印象を抱かせてしまうこともある。
そのためにももっと言葉の1つ1つにまでこだわっていくことが必要だし、それは人として生きていく上でも重要なテーマだと感じています。

3.カウンセリング実習② 〜傾聴技法「要約」〜

「要約」とはクライアント自身もまとめられていない状況や感情を整理し、内省を助ける技法。実はこれが一番不安でした。
なぜなら私は記憶力に全く自信がないからです。
それを補うために普段は相当なメモ魔なのですが、カウンセリングではメモを取ることはNG。

これは相手が話してくれた内容を綺麗さっぱり忘れてしまう、もしくは全く的外れなことを言ってしまう可能性があるぞ。。。とドキドキしていました。

しかし複数回の実習を終えると、複数名の方から「要約がうまい」という評価をいただきました。
曰く、話の全てを1から10まで繰り返すのではなく、感情の動きのあった要点だけにフォーカスできているということ。

確かに、今回はメモができないため早々に全てを記憶することを諦め、とにかく集中し相手になりきって話を聞くことに徹しました。
その結果、細部は覚えられないまでもクライアントの感情の動きはしっかりと追えたように感じます。

ビジネスの現場だと聞き漏らしが致命的になることもあります。
しかし人と人との会話では必ずしもそうではないのかもしれない。
普段の人の話の聴き方も考え直すべきかもしれないと感じた次第です。

4.カウンセリング実習③ 〜傾聴技法「質問」〜

「質問」とはクライアントに”感情”に関する質問をすることで、内省を促していく技法。かなり難しい技法で、注意点はたくさんあります。

(1)感情に関する質問であること
まず質問は内省を促すためのもの。
よって質問内容は「感情」に関するものでなければいけない。
状況把握を事細かく行う事情聴取のようなものになってはいけない。

(2)クライアントのための質問であること
質問はクライアントの(内省を促す)ためにするもの。
カウンセラーが自分のために行うものではない。
この質問はクライアントのためになっているかを常に意識する必要がある。

そのためにも、クライアントが尋ねられたくないと思っているような内容、聞き方をしてはいけません。
内容という点では、十分な信頼関係が構築される前に触れられたくない質問もあります。
聞き方という点では、クローズドクエスチョンは尋問のように感じられてしまうし、オープンクエスチョンでも必要以上に繰り返せば(クライアント自身ではなく)カウンセラーが何かを解決しようとしているように感じられてしまう。

質問の多様や連続も厳禁。十分な信頼関係を構築してから、クライアントの感情に十分配慮しつつ、丁寧に1つ1つ問いかけ、1つ1つ丁寧に内省できるように促す。

もちろん質問を通じてカウンセラーが求めるような答えに誘導するようなこともあってはいけない。
質問の前段にあるのは、常にクライアントの感情を受容していること。
要約等でしっかりと受け止めたことを示してから質問をする「〜というお気持ちなんですね。それでは〜」という形が基本となるそうです。

5.沈黙や多弁について考える

(1)沈黙について

カウンセリングは通常1セッション50分。
これだけ長い話をしているとどうしても沈黙が生じます。
誰しも沈黙は怖いものですが、沈黙にも種類があり、それぞれアプローチが異なります。

だからこそカウンセラーは沈黙を怖がらず、「この沈黙はどんな沈黙か?」を判断し、適切な対応を行う必要があります。
沈黙もまたクライアントが発しているメッセージ。
だからこそ「沈黙を聴く」ことが必要になるということでした。

尚、沈黙や多弁の背景には病的な理由が存在することもあり、専門家へのリファーなどの対応も視野に入れる必要が生じる場合もあります。
そのため、産業カウンセラーには「診断」はできないものの、リファーの要否を判断するため知識は必要となります。

(2)沈黙の種類と対応

①自分の内面を見つめ、適切な言葉を探している場合
こういった状況ではクライアントの心の整理(内省)を待つことが基本姿勢となります。

②カウンセラーに自分や問題について語ることを躊躇っている場合
③カウンセラーへの不満や怒り等で、話すことを拒否している場合
これらの場合は、信頼関係の構築のため言葉かけなどを行っていくことで内省に移行する促しを行います。

④混乱や苦悩によって語ることができない場合
こういった場合は軽率な対応は危険。
クライアントにとって語ることによる負担が重すぎるようなら
「もう少し話しやすいところからでもいいですよ」
等の声がけを行い、一旦そらすといったアプローチも必要になってきます。

(3)多弁の種類と対応

沈黙と同じくクライアントの背景に何があるのかを考え、適切なアプローチが必要となります。

①話したい事柄や感情が充満していて発散したい場合
②憤懣やる方ない状況で、カウンセラーに気持ちを理解してもらいたい場合発散しきる・カウンセラーに理解してもらえたと感じられれば、多弁が治まり内省に入ることが多いようです。
まずはその段階に行けるよう、傾聴し共感を示すことが基本姿勢となります。

③混乱により興奮している場合
混乱の背景にあるものを洞察し、慎重に対応する必要が生じます。

6.幼少期で一番記憶にある思い出について

カウンセラーがクライアントに対するにあたっては、自己をしっかりと持っていることが求められます。
カウンセラーに求められるのは共感力。
自身の価値観に基づいてクライアントを理解する(したような気になる)ことはNGです。
そのためにもまずは「自分の価値観」の輪郭を正しく理解し、自分の価値観に基づき話を聞いていないかを判断できる目を養っておく必要があります。

またこのように自己理解を深める過程を経験しておくことは、クライアントを理解する際にも役立ちます。
当たり前ですが、誰でも急に大人になるわけではありません。
クライアントもカウンセラーも、ここに至るまで人生の経験を積み重ねてきて、今の自分がある。
今悩んでいることだけが、その人の全てではない。
今後クライアントの人生の積み重ねを理解をする際に、今の自分が作られていくまでの過程を整理しておくことは、カウンセラーにとって必要な作業であり、本養成講座でも定期的に課題とされることとなります。

今回はこのテーマについて事前に作文を作成し、それを作成する過程での自らへの気づきをクラス内でシェアしました。

ちなみに私は小学生時代にいじめにあった際、共感の姿勢を示してくれず、見下すような言葉をかけてきた担任のことを書きました。
長い人生の中で様々な経験をしましたが、あの担任の表情と言葉は今でも時折思い出します。

この経験は、人への対し方や理解の示し方といった面でポジティブな影響を私に残している一方、当時の担任のような態度をとる人を嫌悪し、関係継続の努力すら放棄してしまうようなネガティブな影響を与えていると感じ、作文としました。

自分の中でこういった傾向があるということを知れたのは大きな収穫だったと感じています。

7.カウンセリング実習④ 〜これまで学んだ傾聴技法全てを使ってみる〜

これまで学んだ傾聴技法を全て使ってカウンセリングの実習。
うまく行かない部分は多々ありましたが、指導役の方から
「メンタロウさんはクライアントを落ち着かせる能力に長けていますね」
と言われたことは素直に嬉しかったです。

前回言われた「お話がうまい」という言葉に加え、今回の「要約がうまい」「人を落ち着かせる」という言葉は、どれも自分が苦手と思っていたものばかり。思いも寄らない言葉でした。
その言葉を無条件に受け入れることはできずにいますが、これらの言葉をもらえたことは素直に嬉しく、自分にはそういった側面もあるということを受け入れて生きていきたいと感じています。

8.チェックアウト&振り返り

最後は全員が一言ずつコメントをしてチェックアウト。
合計8時間の長丁場。
終わった時には心も体もぐったりしていました。

改めて強く感じたのはカウンセリングの怖さ。
受講生同士の実習とはいえ、それぞれが語るエピソードは本当に悩んでいる内容ばかり。
そのため、伝え返しや感情の明確化、要約等の技法を使うにも
「ここまで踏み込んでいいのか」
「急ぎすぎではないのか」
「この言葉を使えば、クライアントを傷つけてしまうのではないのか」
などと常に細心の注意を払いながらカウンセリングをしています。

常に集中力を最大まで使うので、終わった後はぐったりしてしまいます。
現在は1セッション5〜7分程度の実習が多いですが、実際のカウンセリングは50分程度が一般的。
現状ではそれをやり切ることができる気はしません。

カウンセリングには体力と集中力、そして技法のような部分は無意識で使えるようになる繰り返しの鍛錬が必要と痛感しています。

次回までの課題は、自分がどのような人間かについて記す作文となります。自分がどんな人間か。どんな考え方や癖があるのか、そんなことを書く。これまたシンプルなようでパワーを使いそうな課題です。

この産業カウンセラー養成講座は、スキル・テクニックに関する学び以上に、自分の性格、言葉遣いや人との対し方の癖に気づきという点の学びが多い時間だと感じます。

過去に3年ほどビジネススクールに通った経験があり、そこでも志を明確化するため内省を深めるような授業はいくつもありました。
しかしそれとはまた違った、心の深い部分まで踏み込むような面白さがあります。

次回も疲れるでしょうが、せっかくの時間を楽しめるように臨んでいきたいと思います。

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