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【インプット日誌】生存する意識、キューブリック

生存する意識――植物状態の患者と対話する

ついに読み終わった、大作。興奮する知的ノンフィクションだった。何よりも翻訳がよい。世界観に没頭できた。
タイトルにあるように、植物状態の患者に脳スキャンをして、患者に意識があることを突き止めた脳科学者の奮闘を描いたノンフィクションだ。脳スキャンの技術が発達するようになってから、脳の特定の部野の活性化を他者が見ることが可能になった。

ある問いかけに対して患者の脳が活性化していれば、それは意識がある証拠になる。著者は何度も検証を繰り返し、テニスをしていることを想像させるときに、安定した脳スキャンを見ることができることに注目する。それで、質問をしてYESだったら「頭の中でテニスをしてください」と患者に要請する。このシンプルな方法で、植物状態にあり、意識がないように思えたグレイゾーンの患者の15~20%の内部に意識があることを突き止めるのだ。

ついに一つの頂点に達したと思えたところで、次の課題、次の課題が表れて、著者らは「意識」とは何なのかという根源的な問いを抱き続けることになる。研究はいまだ継続中だが、人が生きているという当たり前のことの意味や、脳のなかにある「私」の存在など、いろいろ思いを巡らせるには絶好の本だった。心理学も、脳科学の知識なしには成り立たないなと改めて思った。かなり前から読みたかった本なので、読めて満足。

万能感とは何か―「自由な自分」を取りもどす心理学 和田 迪子

バリバリ交流分析の本だった。OKグラム、ストローク、ゲーム分析、人生脚本、エゴグラム、ドライバー、個々の事例と共にかなり細かく交流分析の実践を教えてくれる。交流分析の本はPACの図解があるものだけど、この本は文章のみ。一見固く感じるけれど、文章だけでも十分説明できるのは著者の筆力か。

この本で学んだのは、ストロークに関してだ。人は生まれつきストローク(他者とのふれあい)を求めるということだ。どんなストロークでも、ないよりはマシなので、得ようとする。他者との関わりの本質を考えさせられる。陰性のストロークは、迷惑行為を繰り返して炎上を狙うようなyoutuberの姿と重なった。注目されないよりはマシってか。

交流分析は、精神分析から分かれて始まったスタート地点があるから、やはり、すべての原因を幼少期に求める理論だ。人生脚本でさえ、幼いころに心に書かれてしまったものだと考える。この辺は、完全に腑に落ちるかどうかは微妙なのだけれど、それぞれの理論は、詳細な人間研究と深い洞察が反映されており、数ある心理理論の中でも学びごたえがあるものだと思われる。

自信がもてないあなたのための8つの認知行動療法レッスン 自尊心を高めるために。ひとりでできるワークブック 中島 美鈴

図書館で借りた本。書き込み式のワークになっており、8週間毎日、この本に書き込むことが必要だった。これは借りる本ではなく、買う本だw 読み飛ばすのではなく、しっかりワークに取り組んで初めて意味がある本。認知行動療法(CBT)の本もいくらか読んでみたいと思っている。

BS世界のドキュメンタリー「キューブリックが語るキューブリック」

コンテンツメーカーの自分語りはとても刺激的で面白い。キューブリックは自分の作品について語ることや、インタビューを嫌ったと言われているが、唯一、心を許したインタビュアーに残した肉声のインタビューをもとにドキュメンタリーが作られた。キューブリックの作品と共に、出演者の俳優などが、キューブリックのスタイルについてコメントしていく構成が興味深い。

キューブリックは完璧主義で、あるシーンを38テイク取りなおしたという役者のインタビューが出ている。「もう、これ以上できない」と語った役者に「その目に浮かんでいる恐怖がヒントになるかも」と答える。役者じゃないけど、キューブリックの作品には出たくないなと思った。

キューブリックはインタビュアーから「あなたの作品は見る人に絶望感を与えるが」と問われて、「この世界を善良なものだと思う人にとってはそうだろう」と答える。キューブリックの作品には、その根底に理性の下にある衝動、抑えられない暴力や性衝動が描かれる。彼はそれこそが人間の本質だという。

この後、私は、この点をしばらく考えた。確かに人間には醜い部分がたくさんあるが、それを映像化して訴える価値があるのだろうかと思った。NHKの「映像の世紀」も好きでよく見るのだが、第一次世界大戦、第二次世界大戦に巻き込まれていく当時の映像(ノンフィクション)は、人間の醜さ・すさまじさを明らかにしている。エンターテイメントでも、あえてその暗部をさらす必要があるのだろうか。

せめて、映画を見ている時だけは幸福感に浸りたいとか、笑って過ごしたいというのも悪くないのではないかと思ったんだけど、この辺は作り手が、世に何を問いたいのかというところと関係しているんだろうなぁ。もっと、いろいろな作り手たち(コンテンツメーカー)のドキュメンタリーを見てみたい。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq