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脳の可塑性に学ぶ「関心」の力【書評】脳地図を書き換える―大人も子どもも、脳は劇的に変わる 生田 哲

何に「関心」を示すのかというのは、その人の存在の根源に関わるものだ。人によって注意をひかれるものが違う。好き・嫌いもそうだね。近年の脳研究によって、このメカニズムが分かるようになってきた。そして、それは、自分の可能性・強みをいっそう進化させる方法も示している。

薬学者である生田氏の「脳科学」について論じた本が面白かった。脳の「可塑性」についての理解を深めたい方におすすめ。

脳を開く「関心」の力

脳はすべての情報を取り込んでいるわけではない。気づかないうちに、自分で、それを選択しているのだ。そして、何に関心を寄せるかで、脳は今でも作り変えられているのだ。

脳に入力される情報をすべて処理し記録すればいいと思うかもしれないが、脳が一定の時間に処理できる情報量には限界がある。このため、脳は情報を取捨選択しなければならない。その手段が関心なのである。だから、同時に脳内の同じ領域に入力された情報は、競争し、互いに抑制し合う。勝ったほうが脳に記録され、負けたほうは脳を素通りする。どちらが勝つのかを決めるのは、あなたの関心がどちらにあるかである。

関心は一種のフィルターの役割をしている。この世界に無数に存在するものの中で、何に対して、自分の脳を形作ることを許すのか。それを決めるカギは関心なのだ。

何に関心を向けるかを決めるのは、わたしたち自身である。この関心の方向によって、わたしたちがつぎの瞬間にどんな脳をもつかが決まってくる。わたしたちは、いまの自分の選択によって明日の脳を形づくっているのである。脳をよい方向に効果的に変えるには、関心をもちつづけ、習慣化するのがよい。習慣とは長期間続けて「関心」をもち、「シグナル」を受け入れるように振る舞うことである。

「関心」という「門」を通って、知識が脳に入ってくるのだ。本の中には文字が印刷されたインク部分も余白の空白部分も同時に存在するのだけれど、文字部分だけを読み取っていくというのは、文字に関心を持っているからにほかならない。毎日、雑多なものに触れ、見ているけれど、それを脳に読み込ませるかは、関心の度合いによって違うのだ。

猿を活用した実験の話。聴覚に注意を集中させた猿と、触覚に注意を集中させた猿では、脳のそれぞれの分野の拡大の仕方が違ったのだ。関心を持って、注意を払えば払うほど、その分野が強化され、より一層注意を払えるようになっていくということ。脳が大人になっても変化し続けることができるというのは素晴らしいことだ。

自分の関心に意識的になる

大人がある分野に関心を持っているとすれば、それは自らの選択によって、脳を形作ってきた証拠だ。そして、その能力は自分だけのものであるということを忘れないようにしたい。だから、自分のしたいことや、関心のあることを押し殺すべきではない。そうすれば、その人特有の脳の形作りが停滞することになるだろう。すべての人の脳が平均的な形になるより、その人の持つ特有の知性が発揮されたほうが、この世界にとっては有益だろう。

「 われわれには好んで求めるものとそうでないものがあるが、そうした個人の好き嫌いを軽視してはいけない。というのも、そうした好き嫌いの気持ちがわれわれのもって生まれた能力を最もよく示しているからだ」

脳の可塑性を学ぶと、自分の持つ関心に沿って、もっと脳を成長させたいと思うようになる。そして、同時に関心の無駄遣いも避けなければならないと感じる。マンガなり、ゲームなり、テレビなり、明確な意図があるわけではなくても、暇つぶしのようにして、時間と関心を注げば、それなりに脳は形作られていくことになる。

本当に、価値のあること(自分の根源的な関心)に絞って、脳を発達させていきたいものだ。

#脳科学 #生田哲 #脳の可塑性 #可塑性  

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq