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【感想】NHKスペシャル パンデミック 激動の世界 (3)「停滞か変革か 岐路に立つグローバル資本主義」

今はすごい時代だと思う。まさに100年に一度だ。コロナウイルスは世界を変える。間違いなく。どっちの方向に行くかは、今後を見なければわからない。NHKスペシャルの「パンデミック・激動の世界」はシリーズ化されたようだ。リアルタイムで、コロナ禍の中の世界がどこに向かっていくか、潮流を確かめるうえで役に立つと思う。

前回の放送は、日本のコロナ対応を振り返るものだった。(参考:【感想】NHKスペシャル パンデミック 激動の世界「ウイルス襲来 瀬戸際の132日」)。今回は、世界経済がどっちの方向に舵を切るかだ。

世界恐慌来たる

各国のGDPはがた落ちだ。日本は-28.1%・アメリカは-31.7%・ユーロ圏は-39.4%のマイナス成長だ。しかも、コロナ禍の出口は、まだ見えていない。ということは、ますますGDPが落ちることになる。冷戦終結後に、世界を市場としたグローバル資本主義が幅を利かせるようになり、各国が国を越えて経済活動を行ってきた。しかし、コロナ禍で、それが突然すべてストップすることになった。

グローバル資本主義のインフラとなってきた、航空機業界は悲惨だ。世界的に見ると、-9兆円の赤字だ。国際便がほとんど飛ばない状況の中では売上を作りたくても作れない。日本航空の場合、4月~6月だけを見ても937億円の赤字。稼働できない客室乗務員を配置転換して、別の仕事をあてがい、何とか雇用を守ろうとしているものの、この状況が続くと耐え切れない。順調に進んでも、航空機業界全体の需要が回復するのは、2024年のことだという。

一方、インドやタイなど、新興国の経済成長も鈍化している。鈍化というか、観光産業は、もはや息も絶え絶えの状況だ。タイの観光客をメインターゲットにした市場は8割閉店。仕事を失った人たちは、ウーバーイーツのような飲食業の配達員の職を取り合って大変なことになっている。日本も地区によっては、そうなんだけど、観光業で成り立っている国は壊滅的な被害を受けている。

まあ、こんなことは深堀しなくても、近所の商店を見れば誰でもわかることだ。大事なのは、世界経済の今後の行方、そして、突き詰めると、一個人がどうやって生きて行けるかってことだ。今回の特集では大まかにいうと二つの方向性が示された。

1:デジタル・トランスフォーメーション(DX)

この状況を打開する一つの方策は「デジタル・トランスフォーメーション」だ。「善と悪の経済学」などの著書があるチェコの経済学者トーマス・セドラチェクは、ここに世界経済が復活する今後の可能性を見ている。

インターネットやビックデータ(AI)などを使い、デジタルで仕事を進めていくということだ。(まあ、言われなくてもなっているけど・・と思った。)例えば、すべての会議は、オンライン上でテレビ会議システムを使って行われている。私の仕事もそうだ。

人と会わなくても、こんなに仕事が進むんだというのが分った。これまでの移動時間や経費が嘘のようだ。オンライン上で、ほとんどのことが済むんだと知ることができたのは、個人的にも、コロナ禍がもたらした啓発のひとつだったと思っている。デジタル・トランスフォーメーションを実践する日本企業がある。世界的なガラスメーカーの「AGC」だ。

世界44か国に拠点があるが、これまではスキルを持つ技術者を派遣し、品質を徹底させてきた。しかし、コロナ禍で技術者を派遣することが難しくなり、その分、オンラインシステムを用いた遠隔指導に力を入れている。

もちろん、現地に行って指導するように楽には行かないが、コロナ禍の中でも、ガラスの品質を落とさずに仕事ができている。この仕組みを、もっと精錬すれば、大幅なコストダウンも可能だろう。また、AIを活用して、経験値の高い社員のノウハウやスキルがたまっていく仕組みづくりも熱心に行っている。

デジタル・トランスフォーメーションとは、、、簡単に言うと、デジタル化・オンライン化を促進しようってこと。新内閣のデジタル庁創設も、そういう流れかな。

ただ、率直な感想から言えば、これって業種を選ぶよね。それこそ、存亡の危機にある、観光業界・飲食業界・航空業界には関係のない話だ。デジタル化の流れの中で「GAFA」の収益は加速しているが、新たな雇用には、あまり結びついていない現状がある。つまりは、デジタルの一人勝ち。富の集中が生じているだけだという指摘もある。

2:グリーン・ニューディール

もう一つの方向性が、ナオミ・クラインが言っていたグリーン・ニューディールだ。ナオミ・クラインはEUの政策に関わっているんだっけ。(参考:【感想】NHK-BS1スペシャル コロナ危機 未来の選択「ナオミ・クライン~新たな“ショックドクトリン”を警戒せよ」)。グリーン・ニューディールちは、太陽光発電や、風力発電など、再生可能エネルギーを軸にした事業に、国家が投資して、そこで雇用を作り出していくことだ。

すでにスペインでは、石炭の採掘・火力発電を廃止し、太陽光発電・風力発電に切り替える方向だ。大きな流れとしては、世界が「未来に投資」していくという意味で期待できる取り組みだ。しかし、この取り組みの主体は、あくまでも国家だろう。(参考:【感想】NHK-BS1スペシャル コロナ危機 未来の選択「マリアナ・マッツカート~国家は“最初の投資家”であれ」

閉鎖された火力発電所で働いていた作業員の言葉が印象的だった。「石炭がやがて使われなくなることはわかっている。それは誰でもわかることだ。大事なのは、ここで働きながら、暮らしていけるかどうか」ってことなんだ。この発電所は一時閉鎖され、4000人が解雇された。新しい発電所が作られた時には再雇用されるというのだが、従業員たちは一様に不安な表情を浮かべる。

私としても、グリーン・ニューディールが、世界を救う試みであることは分かる。しかし、今、経済的な危機を迎えているほとんどの人には、この大きな取り組みは、いったい自分に何のメリットがあるか分からないだろう。

感想まとめ

番組全体の感想としては、話が大きすぎて、ピンとこなかった。現実に、中小企業には雲をつかむような話ばかりだった。

ただ、富士通の役員が言っていたこと。「もう元には戻らないと思っている。だから、ポジティブにとらえて進まなければならない。」というコメントが真実だと感じた。今でも、「早く前のように戻れば」「いつになったら回復するのか」と言い続ける人が多いけど、もはや、時代はウィズコロナで進むしかない。前と同じには、なりようがない。

すでに時代の潮流が変わった。少なくとも、この1~2年は新しい方法を模索しながら行かないといけないのだ。

残念ながら、現実には、多くの業種がつぶれて消えていくだろう。この波は避けられないと見た。遠からず、ギリギリで耐え忍んでいる中小企業が連鎖倒産するだろう。時代の波には抗えない。ただ、会社と個人は違う。生きていれば、必ず波乗りができるはずだ。だから、この荒波のような時代に、何とか生き抜いていきたいと思うのみだ。命あっての物種。もうそればっかり思う、今日この頃だ。

#NHKスペシャル   #パンデミック激動の世界 (3) #グローバル資本主義 #コロナ禍

大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq