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死を見つめ生を生きる「天使にリクエストを~人生最後の願い~」(主演:江口洋介)

大人の男の渋さが際立つ江口洋介が、すっかりやさぐれた探偵役で主演している。まさにハマリ役。過去に、マル暴の刑事で、最愛の息子を自分が関係する事件で死なせてしまった過去を持つ島田(江口洋介)が、失った月日を少しずつ回復させていくというストーリーだ。そこに、終活の要素を絡めて描く異色の作品だった。

毎回、登場する大物ゲストや、島田の助手の亜花里(上白石萌歌)、ドラマ後半でキーマンになる訪問看護師の寺本(志尊淳)とのコミカルな掛け合いも面白い。う~~ん、全5回は短い。キャスティングも、設定も、音楽もイイので、もっと長丁場でじっくりシリーズものとして楽しみたいと思った。

感想と共に、このドラマを通して学んだことをまとめておこう。ネタバレ必至なので、これから見る方はご遠慮いただければ。

出演 江口洋介 、上白石萌歌 、志尊淳 、板谷由夏 、倍賞美津子
作 大森寿美男

あらすじ(天使にリクエストを)

探偵・島田は、刑事だった時に発砲事件の流れ弾で息子を失い、妻と離婚することになった。島田のその後の人生は酒浸りになり、すっかりやさぐれてしまう。島田は何度も何度も、息子を失った瞬間を、妻を失った瞬間をフラッシュバックのように思い出すのだ。

そんな、島田の人生を変えるのは、資産家の女性、和子(倍賞美津子)からの一風変わった依頼だ。死期を間近にした友人の「最後の願い」をかなえてほしいというものだった。
後に、和子と島田は共に「サイレントエンジェル」という財団を作り、死期が迫る人の最後の願いをかなえようと奔走する。最初こそ気が進まなかった島田だが、人生の最後を迎えた人たちと向き合い続け、最後の願いをかなえようと必死になるにつれて、彼の人生は再び輝き出すことになる。

実在する「サイレントエンジェル」

和子(倍賞美津子)は、最初の依頼を見事に成功させた島田(江口洋介)を信頼し、1億円の通帳を託す。その資金を元手に、死期が迫った人の「最後の願い」をかなえる「サイレントエンジェル」という財団を作るのだ。いかにも、ドラマ的な設定なのだが、実は、サイレントエンジェルは実在する。

医療設備を整えた車と医療スタッフが、死期を迎えた方が最後に行ってみたいところに連れて行ってあげるというサービスだ。これは無料(ボランティア)で行われているというのだから驚きだ。

誰にでも、最後に見たい風景というものがあるはずだ。死期が迫るにつれて、誰にも会えず、どこにも出かけられず、ただ病棟にいるのは苦しい。あの風景をもう一度見ることができれば、悔いがないと感じられる原風景が誰にとってもあるかもしれない。

もちろん、ドラマでは、ただ行きたい場所に行くだけではなく、それぞれの最後の思いをかなえるところまでがセットになっている。特に見応えがあるのは、1話・2話にまたがる幹枝(梶芽衣子)の「最後の願い」。赤ちゃんの時に捨てた我が子に謝罪したいという願いをかなえるストーリーだ。ちなみに、その時の子供は、今ではやくざの親分になっており、島田は決死の覚悟でやくざの親分に面会を試みるのだ。迫力もあり、コミカルでもあり、一気にドラマへの期待を高める回だ。

まあ、ここまでは、普通のボランティアはやってくれないだろうけど。このドラマを見ていて、人が最後に持つ願いについて考えさせられることがあった。

「最後の願い」の共通項

見たい風景は、人それぞれだけれども、最後の最後にかなえたい願いは全員が「人」に関係したものだった。

幼いころに捨てた我が子に謝りたい。
自分の生きた証を確かめたい。
義理の息子と娘を復縁させたい。
陰ながら孫の夢をかなえたい。

人間は人間との関わりで生きていくものなのだ。最後に美味しいものを食べたいとか、絶景を見たいとか、そういう欲望は力がないのだ。以前書いた記事でも考えたことなんだけど、人は人との関係の中で「記憶」されたいと思っているし、そこに、自分が生きた価値を見出すものなのだろう。

もし、そうだとしたら、最後の願いと言わず、日々その価値観に沿って生きていくべきだろう。たくさん物を買うこととか、旅行することとか、お金を稼ぐこととか、出世することとか、実は全然重要ではないのかもしれない。むしろ、家族や友人との時間を、もっとも大切にすべきではないだろうか。時間の使い方は、自分がどう生きるのかという証だ。

メメントモリ

とはいえ、日常の生活の中では大切なことを優先して生きるのは簡単ではない。ドラマの最後で、島田(江口洋介)が語るセリフが深い。「人のためにと、人のことを一生懸命考えていたら、実は自分のためになっていた」。島田は、自分の過去から目を背けて生きてきたのだが、死に向かう人たちの「最後の願い」をかなえようと奔走するうちに、今、自分が本当に願っていることを自覚するようになったのだ。

自分のことは、自分が一番よく知っているって言うけど、実はそんなことはないんだよね。鏡を見なければ、自分の姿は見えないのだ。

そして、同時に、命(生)ってのも、死を見つめて初めて分かるという面がある。日々、生きていることは当然のように思うけれど、死が身近になった時に、人は普通の日常がどれほど愛おしくて尊いものかに気づくようになる。終活って、実際には、今をどのように生きるのかを考えるってことなんだね。

メメントモリ、メメントモリ、モリモリのドラマだった。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq