恐怖の法則を発見「社会実験ドキュメント サビ抜きで。おばけ抜きの、おばけ屋敷。」

何気なく見た番組だけれども、すごく面白かった。前回のサビ抜きは「ダメ出し」だった（参考：【感想】Eテレ 社会実験ドキュメント「サビ抜きで。」ダメ出し抜きのニッポン人）。社会に不可欠だと思われているものを「抜いてみる」という発想の社会実験ドキュメントだ。

今回は、おばけ屋敷からおばけを抜いてみたらどうなるか？というテーマ。おばけがいなければ、おばけ屋敷の価値？もなくなるはずだが、どういう意味なのか。頭の中に「？？？」を浮かべながら視聴したが、なるほど、そういうことかと膝を打った。おすすめの番組だ。

社会実験ドキュメント　サビ抜きで。 ～おばけ抜きの、おばけ屋敷。～ −NHKオンデマンド

おばけ抜きの方が怖い

被験者には実験の主旨を知らせず、おばけのいないおばけ屋敷を歩いてもらう。心拍数と顔表面のサーモグラフィーで恐怖を客観的に判断する。被験者は、おばけが出てこないことが分からないので、いつ出てくるかとビクビクしながらおばけ屋敷を歩き続ける。そのうちに心拍数がどんどん高くなり、平均70くらいの心拍数が120を超える被験者も続出した。

おばけが出てくる普通のおばけ屋敷では、心拍数は上がったり下がったり、ジェットコースターのように動く。緊張が高まると、そのタイミングでおばけが出てきて「ぎゃ～～～！」と叫び声をあげて緊張が緩和される。しかし、いつまでもおばけが出てこないと、緊張しっぱなしで怖さがどんどん増してくるのだ。

人にダメージを与える怖さ

おばけプロヂューサーの五味弘文氏によると「おばけは答えだ」とのこと。おばけ屋敷に入ると異様な雰囲気や音楽、不気味な気配などに緊張するが、おばけが登場すると、驚くと同時に「だから怖かったのか！」という答えが出るのでスッキリする。おばけが出てこないおばけ屋敷は、いつまでも答えが与えられないので、いつまでも怖さが解消されないのだ。

小籔千豊が絶妙な例えで説明していた。「おばけが出てこないおばけ屋敷は、ジェットコースターで上まで上がっていく時の気分が延々と続くようなもの。そして上についたところで終わる。」おばけが出てこないおばけ屋敷には嫌な怖さがあるのだが、後味は悪い。おばけが出てくると怖いけれど、出てこないともっと怖いのだ。

ジワジワ来るストレスが一番体にもメンタルにも悪い。人生には山あり谷ありが必要なのだ。新型コロナで、この1年あまりずっとジワジワした恐怖・ストレスを味わっている人が多いだろう。人間にとっては、これが一番いやなストレスだ。

想像力恐怖屋敷

おばけ抜きのおばけ屋敷実験から、怖いのはおばけそのものではなく、人間の脳の問題であることが分かったので、想像力を刺激して恐怖を与える新しいアトラクションを作った実験をしてみることにした。名付けて「想像力恐怖屋敷」だ。

被験者には、実験の主旨を伝えず不気味な屋敷に入らせる。入口には、自己責任でこの実験に臨むという免責証書が置かれており、実態不明の液体を決して肌に触れずに運ぶようにという指示がある。何を運んでいるか分からない被験者は、液体を持ってブルブルと震え上がってしまうのだ。

被験者は、ただ暗い通路を水を持って歩いただけなのだが「これは怖い液体かもしれない」という想像力が恐怖をかきたてるのだ。人を本当に怖がらせるには、おばけは必要ない。おばけ抜き・想像力恐怖、どちらも被験者の心拍数は高い水準で維持され、顔の表面の温度はぐっと下がった。まさに恐怖で青ざめるってやつだ。

モンスター映画でも実態が分からない時が一番怖い。何が出てくるんだろう・・とピリピリしている時の恐怖が極限だ。出てきてしまえばエイリアンだって恐れるに足らずだ。実際に見えてしまえば、人は慣れてくる。新型コロナだって感染する危険な局面やウイルスの性質は、かなり分かってきている。だから事実をベースにちゃんと目を開けば怖いものはなくなるだろう。（最近の変異種は動きが分からないから、ちょっと怖いかな）

恐怖のメカニズム

人がなぜ恐怖を感じるか、そのメカニズムは分かってきている。ホッとさせるセロトニンが出やすい人は恐怖を感じにくい。しかし、日本人の8割がセロトニンが出にくい不安遺伝子（Ｓ型）を持っているのだという。日本人は世界的に見ても、不安や恐れを抱きやすい国民性だ。だから私が不安症でも、それは別に珍しいことじゃないのだ。

残念ながら、これは体質なので治らない。恐怖の感情とはうまく付き合わなければならない。とはいえ、恐怖も悪いことばかりではないはず。

恐怖を感じるのは、脳のなかの扁桃体が活発に活動するからだ。扁桃体は感情全般をつかさどる。扁桃体を除去したサルは恐怖を感じなくなるが、喜びの感情も失ってしまう。っていうことは、恐怖が強いということは、喜びの感情も強いということだ。怖がりであることはメリットにもなるわけだ。

それにしても、おばけ屋敷から、おばけを抜くというのはすごいアイデアだ。私はおばけ屋敷なんか絶対に入らない（怖いから）けど、人が怖がっている場面はかなり笑えた。なんでなんだろう。

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