【感想】Eテレ 社会実験ドキュメント「サビ抜きで。」ダメ出し抜きのニッポン人
何でも「加えること」であふれている世界で、そこから色々なものを「差し引いて」いくことを考える、Eテレの「サビ抜きで。」の初回放送。本当に大切なことが何か見えてくるかも。今回は、様々な指導のから「ダメ出し」を抜いてみるという社会実験だ。教えてくれるのは、青山学院大学准教授の繁桝 江里さん。ダメ出しの研究者だ。
私が興味を惹かれたのは、最近、行動分析学で「強化」について学んでいるからだ。「好子」（好ましい刺激）を与えつつ行動をコントロールすると、その成果は長続きするが、「嫌子」（嫌な刺激）を与えて行動をコントロールしようとすると、逆効果になったり、反発を招いたりすることがある。（参考：ADHDの二次障害は反社会的行動と非行。発達障害は褒めて育てよう。）
なくてはならないものとみなされている、ダメ出しについてはどうなのだろうか？純粋な興味がある。
ダメ出しが有効な場合
番組では、2つの場面で、ダメ出しあり・ダメ出し無し・誉め言葉のいずれかが、どれだけ行動の成果に結びつくを実験した。ハードなトレーニングで指導するパーソナルトレーナー、キビシイ指導で丁稚を育て上げる注文家具の職人。どちらも、基本的には「ダメ出し」の嵐で学ぶ人を育てるタイプだ。そして、どちらの実験からも、ダメ出しには一定の効果があった。
被験者たちも、ダメ出しを受けると、励まされているように感じたり、背中を押されているように感じて頑張れる。何もフィードバックが無かったり、ただ褒められるだけだと成長しないのだ。しかし、この実験には、どちらも被験者たちの「意欲」が関係しているように感じた。つまり、ジムに通う人には、多少厳しくても痩せたいという意欲があるし、注文家具の会社に弟子入りした丁稚たちには、厳しくても一人前の家具職人になりたいという強い意欲がある。
そのような意欲のある人たちにとっては、何も指導されないよりも、厳しく指導されることが「好子」（ポジティブな刺激）になっていると感じられた。意欲がある人たちが、何も言われないというのは、逆に「嫌子」（ネガティブな刺激）になるだろうから。だから、意欲のある人にはダメ出ししたほうが喜ばれる。でも、意欲のない人にはダメ出しすると逆効果って感じじゃないかな。
効果的なダメ出しの秘訣
もちろん、一つのスキルとしてダメ出しをするためには、いくらかコツがある。パーソナルトレーナーと、キビシイ家具職人から１つずつダメ出しの秘訣を学び取った。
１：期間限定のダメ出し
パーソナルトレーナーは、トレーニングをしている期間だけ、集中的にダメ出しをする。それ以外の時間（プライベートなど）にはダメ出しをすることはない。期間が限定されているので、ダメ出しを受ける人は、そのダメ出しが個人攻撃ではないことを知ることができて、逆に感謝さえするだろう。
２：開示性のあるダメ出し
家具職人は、弟子入りさせる前に、訓練が厳しいことをあらかじめ伝えている。親には「夜逃げする人もいますが、それでもいいですか」と伝える。そういう覚悟で入ってきているわけだ。ダメ出しが前提になっている。いじめとか、パワハラとは、全く種類が違うものなのだ。いわば、ダメ出しを受けるために、ここにきていると分かっている人はダメ出しでつぶれたりしない。
ダメ出しは愛
以前、管理職になった時に、フィードバックの本を買ったのを思い出して、再読を始めた。部下を成長させるためには、ダメ出しが必要だからだ。褒めているだけでは、満足して、それ以上成長しなくなるの。耳の痛いことを伝えるには勇気がいる。誰だって、人に恨まれたり、嫌われたりしたくない。でも、言わないと見えていないところを改善することができない。
番組でも取り上げられていた「ジョハリの窓」。他人には見えていて、自分には見えていない箇所。人には必ず盲点がある。だからこそ、フィードバックをもらうと、そこを改善できるのだ。もし言ってもらえなかったら、その弱点はずっとついて回ることだろう。
私も、これまでダメ出しされて良かったと感じたことが何度もある（その時は腹立ったり、悲しかったりするけれど）。最近も「舌たらずだ」と言われたことをきっかけに、滑舌訓練を始めたが、言われないと気づかなかっただろう（なんとなく気づいているけど改善しようとはしない）。
ダメ出しは必要な時もあるよね！というのが、今回の伝えたいことだったのかな？そりゃあそうだよねという無難なところに着地した気がする。
大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です（出品一覧：https://amzn.to/3oOl8tq）