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信頼は意識的に作り出せる?「元ドイツ情報局員が明かす 心に入り込む技術」 レオ・マルティン

闇組織に属する犯罪者に接近し、スパイ(情報提供者)に仕上げるドイツの情報局員の裏マニュアル。ティホフという一人の人物にどのように接近し、信頼を得て、寝返らせたかをストーリー仕立てで書いている。TIPSが日常で使えるとは思えなかったのだが、普段知らない諜報部員の生活や、犯罪者との接触の瞬間など、小説として(読めば)面白く一気に読了。

信頼は作り出せる!か?

著者は、他の情報局員とは違い、闇組織のメンバーとの「信頼関係」を作り上げ協力者(スパイ)に仕上げる特別な能力を持っていた。そのノウハウがこの本のベースになっている。

ただ、率直な感想を言えば「それは信頼なのか?」と感じるところが多かった。情報局員は、情報局(本部)の圧倒的な組織力で、ターゲットの情報を調べ上げ、弱みもついた上で「お前のことはすべて知っている。嘘もお見通しだぞ。従うか従わないかだ。」という態度をちらつかせる。追い詰められたターゲットは真っ青になる。うむ・・。これは「信頼関係」なのか?

寝返った犯罪者は、葛藤しながらも情報局員と協力しはじめるが、それは、著者を個人的に信頼しているからではなく、自分が属する闇組織よりも優位な情報局という組織に服したのではないかと思えた。圧倒的な組織力の違いを見せつけることで、恐れを抱かせて、服従させたのだ。もちろん、最終的には情報局は、スパイを闇組織から脱退させ正道に戻させる役割を果たす。そういう意味では正義かもしれないが・・・。

ビジネス書の枠組みで書いているのでしょうがないのかもしれないけれど、この内容は、ビジネスマンが使えるテクニックではない。探偵に依頼して、ひたすら相手の秘密を調べ上げて、一枚ずつカードを切るように追い詰めれば、たいていの人は協力するようになるかもしれないけど・・・心からの協力とは言えないだろう。恫喝されているんだから。

信頼関係は相手次第

もちろん、闇組織を壊滅させる目的で機能している国家の情報局という立場からの情報なのでしょうがないだろう。本気で犯罪者と信頼関係を築けないことはわかっている。もっとノーマルな方法で、自分の情報を開示し、まともに付き合おうとすれば、あっという間に組み伏せられてしまう。闇組織は甘くないのだ。もっとも、情報局員も、犯罪者とかなり密に接し、できる限り彼らの要求にも応えるので良心の責めを覚えたり、罪悪感を抱くぎりぎりの線での交渉が続くらしい。

思ったのは、あまりに特殊すぎる場面で有効なノウハウは普通の人の日常生活には使えないよねってこと。面白そうだったんだけど(いや、面白かったんだけど)率直なところ、首をひねってしまったよね。あ~面白かった。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq