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食品添加物は気にしなくても良い?「食品添加物ほんとうの話 いちばん怖いのは「知らないこと」です」三輪操

食品添加物にも、それなりの関心があり、商品を買うときにはラベルを見てしまう。でも行き過ぎると、何も買えなくなる。そんな中、バランスをとるのにふさわしい一冊を発見。栄養学の本だけど、対談形式で分かりやすく、すらすら読める。

著者は東京農業大学の教授で栄養指導のプロ。食品添加物をかたくなに使用しない、存在意義を認めないという立場ではなく、バランスをとった考えをするように促している。食品添加物に関しては「推奨」の立場に近いようだ。

過去に「心配学」など書評したことがあるが、それに近いかな。感情論ではなくエビデンスで考えると、極端なアンチ食品添加物になることはないことが分かる(参考:食品添加物は気にする必要があるか?「心配学」に学ぶバランス感覚。

食品添加物は心配しなくてよい

添加物といっても、様々。傷んだものを口にして体を壊さないようにするための「保存料」や「防カビ剤」、食べ物を美味しく見せるための「着色料」や「香料」、料理にうまみを添えるための「うまみ調味料」、砂糖を使わずに甘みを感じさせる「甘味料」などなど。

結局のところ、これは消費者が求めており、望まれているからこそ、使われているという現実を忘れてはならない。

著者曰く「添加物がなければ現代の食生活は成り立たない」のも事実だ。消費者はイメージで物事を判断しがちで、正確な知識によって、自分で選択しているわけではないことが多い。どれくらいの量の添加物が入っていて、なぜ危険だと思っているか?ということには答えられない。

著者の基本スタンスは、食品添加物は心配しなくてよいというものだ。著者が教えている栄養士さんたちも、最初は食品添加物に過敏な人が多いが、現実を知るにつれてカップ麺も、お菓子も、市販のお弁当も普通に食べるようになるそうだ。

「添加物」が無ければ「安全」か?

なんでも「添加物」さえ使わなければ安全だと思い込んでしまう人もいるが、反証として、南米のペルーで91年にコレラが大流行した話がとりあげられている。コレラで「1年間に80万人が罹って7000人が死亡する事態」となった。その原因は水道水の汚染。

コレラが発生する前までは、ペルー政府は水道水に塩素を添加していた。塩素には病原菌を消毒する作用がある。その一方で、塩素は発がん性のある「トリハロメタン」を生み出すリスクもある。そこで、ペルー政府は「発がん性のあるトリハロメタンを水道水には使わない」と決定した。その結果として、起こったのが、コレラの大流行だった。

三輪氏はペルーの件から3つの教訓を引き出している。

1)リスクは常に科学的に分析する必要があること
2)極端に右や左に振れないこと
3)物事は全体を見る

実際に、東京都の水道は今でも塩素を添加しているが、水道水の中に含まれるトリハロメタンは生涯摂取しても健康に影響を与えないほどの量に保たれている。トリハロメタンという添加物のリスクと、病原菌により水が汚染されるリスクのどちらが深刻か?ということを考える必要がある。

もちろん、このペルーの話には諸説ある(ペルー政府の塩素添加中止は無かったという説もある)。添加物について考えるうえで興味深いヒントになる。添加物を恐れすぎるあまり、もっと大きなリスクを見逃してしまうこともあり得るということ。

食品に関しては、100%安全なものは無いため、あくまでもリスクの比較が大事だ。リスクの比較を突き詰めていくと、食べ方に関しては次のような指針を設けることができる。

偏って「食べ過ぎない」こと

食品添加物が問題になるのは「量」なのだといことが繰り返し書かれている。同じ食品を偏って食べなければ、多くの場合、添加物が問題になることはない。

「正確に「安全な食べ物を定義するのであれば、「健康に害を及ぼすものが健康に害を及ぼすほどの分量で、入っていないもの」といえます。繰り返しになりますが、カラダに害があるかどうかは「量」によるのです。・・量については1つのものだけを大量に食べないこと。これは食材にも食品にも食品添加物にも言えることです。いろんな味やいろんな食材、食品を少しずつ食べることでリスクを分散できます。」

食品添加物ほんとうの話―――いちばん怖いのは、「知らないこと」です Kindle版 あさ出版 三輪操 (著)

著者は、一例として「べったら漬け」をあげている。べったら漬けにはソルビン酸が入っている。ソルビン酸の摂取許容量は体重1キロあたり25mg。体重50キロの人であれば1250㎎までは許容量だ。

そこで、べったら漬けのソルビン酸を調べると1キロあたり650㎎だ。だとすると、体重50キロの人であれば、ソルビン酸の許容量でいえば2キロまでは、毎日、べったら漬けを食べても良いということになるね。しかし、普通に考えたら、毎日、2キロずつべったら漬けを食べる人がマレだ。っていうか食べられない。一度に食べる量はだいたい10gくらいではないかと言われている。

食品添加物云々よりも、偏食が問題であるということになる。偏った食事をすれば当然、栄養素も偏り、食品添加物も偏って摂ることになる。ほどほどのバランスが大切だ。

食品添加物ダメ・ゼッタイ的な本だと思って手に取ったので、ある意味、衝撃を受けた。食品添加物を推奨する側の意見も、真面目に聞けば、筋は通っている。三輪氏がいうように「100%安全な食品はない・・100%を求めると、何も食べるものがなくなってしまう。100%ではなくて、少しでも安全な食品を選ぼう」という視点が大事なのかもしれない。

健康に関しては、その考え方が、ひとつの真理であるように思える。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq