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発達障害(ADHD)=「ワーキングメモリー障害」と理解すると対処法が見えてくる。

日々、ADHDのお勉強に励んでいるのだけれど、ADHDについて正確な知識が分かれば分かるほど、その症状にどう対処してよいか見えるようになってくる。

ADHDという言葉に出会ったのは、15年くらい前だけど、あの頃は「なんだ、そんなもん。そんなラベルを付ければ、誰でも障害じゃないか」というくらいの認識しかなかった。あの頃からちゃんと向き合っていれば、もっと生きやすかった気がする。

さて、ADHDとワーキングメモリーの関係はよく耳にするけれど、その関係を理解すると、どう対処してよいのかもわかる。ちょっと古い本だが、ADHDが発見された経緯や、脳科学から見たADHDの原因など、興味深く読んだ。

今日は、この本で学んだADHDはワーキングメモリーに障害があるという説(ワーキングメモリーだけでは説明がつかないので「説」)について紹介したい。

ワーキングメモリー(短期記憶)

厳密にいうと、違うみたいなんだけど、ワーキングメモリーというのは短期記憶のことだ。一時的に必要な情報を「とりあえず」覚えておく場所だ。直前まで見ていたことや、聞いていたこと、読んでいたものを覚えておくための場所と考えるとよいと思う。ワーキングメモリーは「普通」の人にも限界がある。だから、人は買い物リストを作ってスーパーに行くのだ。

違う部屋に何かを取りに来て、その部屋に入った瞬間に「何を取りに来たんだっけ」と思ってしまうようなことは誰にでもあるだろう。あれが、ワーキングメモリーから情報がこぼれ落ちてしまった時の状態だ。思い出せそうなのに、いくら悩んでも出てこないから、元の場所に戻るしかない。やるせない状態だろう。あの時の感覚が、日々起きているのがADHDの日常と考えると理解しやすいと思う。

いくつか、ワーキングメモリー障害として表れてくるADHDの典型的な症状を挙げてみたい。

症状1:話がかみあわない

ADHDは他の人の話を聞くのが苦手で、話し出すと一方的に話してしまう人が多い。注意が散ることも相まって、とにかく人の話を聞いていないように思われる(聞いていないんだけど)ことが多い。

以前、一緒に働いていた同僚のADHD女子は、すべて思いつきで話すような子だった。話題はクルクルと変わり、質問されて、それに答えた時には、もう全く聞いていないという感じだった。まあ、一般的には「無礼」な人に見えたよね。

しかし、これもワーキングメモリー障害と考えるとよく分かる。一般的に人は、相手の話すことをワーキングメモリーに一時的に記憶している。そして、同時に次に自分が話すことをワーキングメモリーに保管している。聞くことと、話す準備が同時にできているのは、ワーキングメモリーが機能しているからなのだ。

ワーキングメモリーに障害があると、話すか聞くか、どっちかしかできなくなることが分かるだろう。相手の話を聞いている時に、自分の考えが割り込んでくると、もう相手の話を頭の中に置いておけないのだ。ただ、マナーがないわけではない。何度教えられても、会話がかみ合わないのがADHDなのだ。

*私は、かなり社会性をトレーニングしてもらったADHDなので、聞いているフリはできるようになった。うん、うん、とうなづきながら、とにかく自分のコメントは抑える力を身に着けた。時々、相手から質問されると困るけど。

症状2:出しっぱなし・やりっぱなし

ワーキングメモリーは同時並行的に作業をするのに役立つ。家事を上手に行うにはワーキングメモリーがしっかり機能していることが必要だ。食事を作りながら、洗濯機を回す、というような時には「洗濯機を回している」ということを、覚えている必要がある。ワーキングメモリーが機能していると、何かをしながらでも、もう一方のことを「念頭においておける」のだという。

ADHDに、この能力が欠落していることは言うまでもない。ADHDは洗濯機を回してから、食事支度をすれば、すっかり洗濯機のことは忘れてしまうのだ。食事支度をしながらでも、ちょっとした事務作業などを思い出すと、今度はそっちに没頭してしまい、鍋の焦げた匂いがして食事支度中だったことを思い出すのだ。

そんなバカなと思うかもしれないが、ADHDと一緒に生活していると、よく分かるだろう。

結婚当初、妻は私が、あらゆるところに、物を出しっぱなしにしていることに驚いていた。脱いだら脱ぎっぱなし(服)、作業をしたら出しっぱなし(書類)、飲んだら飲みっぱなし(コップ)。何度言われても繰り返すのだ。ただ、私もわざとやっているわけではない。申し訳ないと思って、何度も片付けようとするのだが、気がついたら、違うことをやっているのだ。そして「出しっぱなしなんだけど!」と言われて、初めて、その存在を思い出すという有様なのだ。

ちなみに、妻は、脱ぎっぱなし対策のために、すべての部屋にカゴを用意してくれた。脱ぎっぱなしでもいいから、とにかく、そのカゴに入れてくださいというわけだ。これはすごいアイデアだと思ったよ。しかし、そのカゴにも入っていないことが多いので、逆鱗に触れるわけなんだよなぁ。

症状3:優先順位を決められない

ワーキングメモリーは、ABCDEという作業をこなす際には、Aをやりつつ、BCDEが残っているということを覚えている働きをする。残念なことに、ADHDは、Aをしている時には、BCDEの存在をすっかり忘れるのだ。BCDEが残っているのだから、Aを早く片付けよう!とは思わない。思わないというか、すっかり忘れているのだ。

まあ、ちょっとは覚えているんだけど、どうやって時間を割り振ったらよいかわからなくなるのだ。ADHDは、物事の順番を決めるのが苦手なのは、こういうところに原因があるのだ。

このように考えてみると、ADHDの症状は確かに脳のワーキングメモリーの機能に障害がある人が起こす症状と同じなのだ。もしそうだとしたら、ADHDはひとつの記憶障害として、対処していく必要があるのではないだろうか。

そこで、そもそも短期記憶はできないと割り切って、できること(対処法)を考えてみることにしよう。

対処法1:メモを取る

単純なことだが、短期記憶もできないのだからしょうがない。普通の人なら、頭の中で覚えておけることも、ADHDは消えてしまうから、逐一メモする。以前、同僚で事故にあってから短期記憶が消えてしまう障害が残った人がいた。その人は日常生活を営むために、とにかくマメにメモをとるようにしていた。ADHDも同じ努力が必要ではないか。

ちなみに、いくつかのタスクの順番を頭の中で組み立てるのが苦手な私も、メモを取り、紙の上に書きながら、整理するとちゃんと組み立てられるんだね。頭の中だけで作業をしようという無理をしないことだ。もう、覚えられない、もしくは、すぐに抜けてしまうんだから、どんな小さなこともメモし続けることだ。

対処法2:デジタルツールを使う

自分ではどうしても覚えていられないのだから、そんな時はツールに頼るとよい。タイマーやアラームを使えば、ちゃんと気づかせてもらえる。私は、Xiaomiのスマートウォッチを使っているので、何か忘れてはいけない時には、すぐにアラームをつけるようにしている。1個のタスクであれば、アラームが鳴ると思い出す。

先日もコインランドリーで洗濯物を回していたが、ちゃんと終了時刻にアラームが鳴るようにしておいた。普通の人なら、そんなことしなくても、だいたい終了時刻に思い出すものだが、ADHDをなめてもらっちゃ困る。他に別のことに熱中すると、半日放置するくらいは余裕でやってくれちゃうのだ。しかし、アラームが鳴ると、すぐに思い出させる。

ちなみに私は、定期的なアラーム、イベントアラーム機能を使って、サプリを飲むタイミングを指示させたり、就寝準備する時間など、決まった時間を思い起こさせてもらっているよ。もうほんと、これは手放せないツール。

対処法3:秘書を雇う

絶対安心なのは、あらゆるスケジュールを管理し、逐一、行動を指示してくれるパートナーを持つことだ。秘書ですね。

まあ、そういうパートナーがいればのことだが、私は結婚した相手が、非ADHDで、どちらかというとASD気味な妻なので、見事な相性で助けられている。手にしたすべての書類は妻が見事なまでに管理してくれているし、金銭も、スケジュールも完璧管理である。

あまりにも管理されすぎて、お財布にはいつも1000円ずつしか入れてもらえない・・(涙)。しかし、ADHDには、これくらいのほうがよいのだ。先日、町内会費を回収に来た時に妻がいなかったので、お金が探し出せなかった。それも悲しかったけど、ADHDのパートナーはそれくらいがいいのだ。私の場合は、結婚でADHDの症状の7割くらいが軽くなった体感がある。その分、妻は大変そうだけれども。

まあ、脳の障害の一つとして考えてもらうしかないなぁ。

まとめ

短期記憶の障害と考えると、それを補うためにできることは色々考えつくものだ。性格・個性のひとつとしか考えなければ「だらしないやつだ」「何度言わせれば分るんだ」と叱責の対象にしかならないだろう。自分でも自分のことが嫌になってしまうだろう。

もちろん、発達障害だと分かったところで、人生は変わらないのだけれど、それを受け止めて前に進むのと、ただただ普通に生きようと奮闘するのでは、大きな違いがあるような気がする。


綿樽剛の著書一覧

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq