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カニと鉛とハイチュウと(憂鬱な話)

憂鬱である。
どれくらい憂鬱かというと
旅行に出かけて朝起きてみたら
すごく雪が積もっていた・・・くらいの憂鬱さである。

今日の写真は9年前の3月、
富士山のふもとに合宿に言った翌朝の光景だ。
この雪の中、帰路につくのは本当に嫌だった。

話を戻そう。
今日は朝から憂鬱なのである。
なぜか。

歯医者にいかざるを得なくなったからだ。

ちなみに虫歯ではない。
親知らずでもない。

差し歯だ。

実は私は前歯が一本差し歯になっている。
これがちょいちょい欠ける。
なのでその度に歯医者にいかねばならない。

差し歯のメンテナンスだけなら良いのだが
なぜか歯医者さんって虫歯を見つけるじゃん?
それで治療が長くなる。あれがしんどい。

ちなみに私が通っている歯医者さんは
先生の腕が本当によい。
痛いと思ったことがない。すごいと思う。

あとは医者と言えばクラシック音楽のイメージだが
そこはずーっとJ-POP。

以前に通っていた時は、
毎回クライマックスの治療のときになると

「紅蓮華」がかかっていた。

去年は「KICK BACK」だった。

鬼滅の刃とチェンソーマンの曲を聴きながら
ドリルで削られるのはあまり心地よいものではない。

まあそれはよしとして。
今回また差し歯が少し欠けているのに気づいた。
仕方なく予約の電話をした。
年内難しいとのことで、来年になった。
少しほっとしたけど、先送りしただけなので
憂鬱な日々が更に続くのだな。
はあ、ほんとしんどい。

ところでだ。
なぜ差し歯なのか?ということなのだが
せっかくなので聞いてもらいたい。

話はもう30年ほど前にさかのぼる。
当時独身実家暮らしだったのだが、
ある日、仕事から戻ると食卓に鍋が置いてあった。
Withカセットコンロだ。

両親は不在だった。
何やら用があっていないとか言ってたな。
それでこの鍋を一人で食えということのようだった。

鍋の中にはなんと!
それはもう大層な松葉ガニの足が入っておった。

画像提供とりネットさん

そういえば義理の妹のお父さんが島根の出身で
そちらの親戚からいただいたとか言ってたな。
すごくごうせいなおすそわけだ。
義妹、ナイスだ。

それでまあカセットコンロに火をつけて
鍋を温め、一人で食べることにした。
メインはカニだ。松葉ガニだ。
ちなみに松葉ガニは、成長したタラバガニの
オスのことをいうらしい。

さて、うちのみちこ(母)は
結構大胆な料理をすることに定評がある。
この日もカニをそのまま鍋に入れてあった。
包丁で切れ目をいれるとか
そういった細工は一切ない。
さすがだ。

なのでカニの殻から身を取り出さねばならない。
こういう場合、どうするのか?

まあハサミや包丁で切れ目を入れて割るとか、
関節の部分からカニスプーン?でかき出すとか、
そういうのが作法であろう。

しかしこの日の私は違っていた。
ハサミも包丁もスプーンも
なんかめんどくさかったのだ。

元々手先はかなりあかん感じで
不器用極まりないので

なるべく刃物はつかいたくない

そういう心理が働いた。

ちなみにカニスプーンは
そんな上等なものがなかったし、
箸をつっこんでかき出すのもあれなので
もっとも原始的な方法を選択した。


そう。歯で噛んで割ろうとしたのだ。


結果どうなったか?
もうお気づきであろう。
そう、前歯の先が欠けたのである。

後悔先に立たずである。
もうね、自分の直感とか情動とかね
もう少し考えないとあかんかったと思います。
だが覆水盆に返らずだ。嘆いても仕方ない。

とりあえずこのときは少し欠けただけで終わった。
治療もそこを埋めるだけのことだった。
良かった。二度とカニの足は噛むまい。

だが私という人間は学習能力が低い。
悲劇はその数年後に起こった。

それは仲間たちと一緒に
ブラックバス釣りに行っていたときのことだ。
このときはゴムボートで仲間と一緒に
湖の上で釣りをしていた。

ブラックバスはルアーで釣る。ミミズではない。
ただこのときはミミズによくにたルアー、
いわゆるワームを使っていた。

ワームはゴムでできている。
なのでどちらかというと、水に浮いてしまう。
そのため、シンカーというおもりをつけて
水中に鎮めることがある。
この日はそのスタイルを取ることにした。

シンカーというとかっこいいが、
いわゆる「割ビシ」といって
昔からある釣り用のおもりだ。
こんなやつ。

画像提供Amazonさん

この割れ目に糸をはさんで、押しつぶすわけ。
材料は鉛。金属です。
なのでペンチでつぶすのがスタンダード。

でもそのとき、ペンチをだすのがめんどくさかった。
それに子どものころ、散々割ビシは使っている。
なのでこの日も同じことをした。

そう。歯で噛んで潰したのだ。
しかもこともあろうか前歯で。

案の定、前歯が欠けた。
実はカニのときに、治療をするために
欠けた部分を更に大きく削って治療をしてもらった。
なのでそれが根こそぎとれた。

つまりカニのときよりも大きく欠けた(泣)

仕方がない。再度治療となった。
しかし今回は想像以上に損傷がひどく

「根元だけ残して差し歯にするね」

ということになった。
つまりだ。歯の根元を残しておいて
そこに接着剤で差し歯が乗っかる形になった。

この日から差し歯との長い戦いが続いている。

差し歯は経つにつれ、取れやすくなっていく。
これは私が歯ぎしりをしたり、
固いものを無意識のうちに前歯で噛むので
だんだん接着面が弱くなるからだ。

フリスクがやばい。
あれをつい前歯で噛んでしまうことがあって
それで差し歯は取れる。

最終的にはこの子もダメになった。


画像提供森永製菓さん

ハイチュウだ。
こやつはやわらかいが粘着性が高い。
だから私の差し歯ごときは平気ではがしてしまう。
多分虫歯の詰め物とかもやられた人もいることだろう。
ハイチュウは歯医者の天敵である。

こんな感じであまりにも差し歯が取れるため
こんな事件も起こったことがある。


10年前の今ごろ、私は名古屋にいた。
自分のセミナーをやるためだ。
冒頭あいさつをしている最中に
口の中に違和感が生まれた。

しゃべっただけで差し歯がとれたのだ。
開始3分の悲劇だ。

ご覧のとおり、差し歯のないオッサンは
結構マヌケな感じだ。
しかもこれから丸一日、数十人の前で
ずーっとこの状態でしゃべらないといけない。

さあ、どうするか?
いや、今さら中止もないし、マスクをするわけにもいかない。
私はみんなに

「差し歯とれちゃいました。でもこのままで行きまーす!」

そう宣言し、笑顔+元気でその日を乗り切った。

実はこの時、すぐに自撮りをしてSNSにアップした。
この写真はそのときのものであるが、
コメント欄は大層賑やかになっておった。
ちょっとバズった感じだ。

こうして長い戦いが続く中、
先生もいろいろと工夫をしてくださっている。
おかげさまで「取れる」ということはなくなった。

ただ、これまた私が歯ぎしりや食いしばりをするせいで
だんだん差し歯が削れてしまうのだ。
その結果、なんかの拍子に欠けてしまう。

今回もその欠けた部分の治療だけだといいが、
もしかしたら差し歯作り直しもあり得るなあ。

そんな憂鬱な年末の朝でした。

追伸1
ズワイガニの足なら歯でいけるんだよな。ズワイガニなら。

追伸2
とにかく差し歯以外の治療がありませんように。