なぜ女性は燃え尽き症候群になりやすいのか
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なぜ女性は燃え尽き症候群になりやすいのか

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 本稿ではBBC Worklifeの「Why women are more burned out than men」という記事を紹介し、女性の燃え尽き症候群が増えたその背景と今後の課題について解説します。
 仕事や家事に一生懸命な人でも、慢性的なストレスで疲れ果てて急に気持ちが萎え、何に対しても無気力になることがあります。この現象は「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と呼ばれ、近年になって広く知られるようになりました。
 ここ2年ほど、社会はCOVID-19によって不安定化しています。そのため人々のストレスは高まり、燃え尽き症候群も増加しましたが、その多くは女性でした。原因は様々ですが、「社会構造とジェンダー規範の不平等さ」が大きな役割を果たしていると筆者は指摘しています。

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1. 燃え尽き症候群の例 

 記事では、ジアという女性の経歴が紹介されています。

 彼女はアメリカの名門であるアイビーリーグのビジネススクールを卒業し、マンハッタンを拠点としてコンサルタントとしてのキャリアを着々と築いていました。
 しかし現実は非情でした。特に2018年に母親になってからは、性別を理由に職場での昇進や昇給を見送られていると感じています。また、夫の出張が多くなり、彼女の育児の負担が大きくなりました。そのため、同僚や上司(大半が男性)からは、「仕事熱心ではない」という誤った評価を受けていたと言います。
 ここで追い打ちをかけるようにCOVID-19が発生し、2020年3月には保育園が閉鎖されました。彼女はなんとか仕事を続けようとしましたが、常に気が張り詰めてやる気がなくなり、職場での信頼も低下してしまいます。そして、2021年初頭にジアは燃え尽き症候群と診断されました。

2. 不平等な要求

 様々な理由から、女性、特に母親は、男性よりも多様な責任を日常的に負う傾向があります。ジアの例は、COVID-19が浮き彫りにし、悪化させた、不平等を象徴するものです。
 例えば、ほとんどの国では男性よりも女性の収入が低く、仕事上の理由で「ストレスを感じる」と答えた女性は74%で、男性では61%にとどまりました。また、働く母親は、働く父親よりも燃え尽き症候群が23%多く、米国ではパンデミック以降で235万人のワーキングマザーが燃え尽きの症状を自覚しています。
 女性が燃え尽きやすい具体的要因として、昇進の機会が少ないこと、家事や子供の世話に時間が費やされること、シングル率が高いこと、などが研究により明らかになっています。


3. パンデミックによる悪化

 このような不平等は以前から明らかでしたが、COVID-19によっていくつかの面で格差が顕著に悪化しました。家事・育児の負担を軽減していた社会的インフラ(学校・保育園・介護サービス等)の機能が低下したため、家庭と仕事の両立に追われていた多くの女性が、突然、家庭の責任を負うことになったのです。
 記事で紹介されているニューヨーク在住の女性は、大企業の役員として働いていましたが、2020年3月に学校が閉鎖されたことで、自宅教育と会社業務を両立しなければならなくなりました。プレッシャーから、不眠、不安、無気力などの症状に悩まされますが状況は改善せず、彼女は夫と相談し、8月に仕事を辞めて専業主婦になりました。
 このような例は枚挙にいとまがなく、2020年9月のアメリカの失業者は女性が86万人、男性は20万人でした。また、パンデミック発生から12週間で、25歳から44歳までの母親のうち4.8%がCOVID-19に関連する育児問題のために休職・退職しましたが、同じ年齢層の父親はほとんど休職していませんでした。


4. 失われるもの

 専門家は、職場の女性のメンタルヘルスが低下すると、将来の世代が積極的なキャリアプランを設定することができなくなるのではないか(特に家庭を持ちたい場合)と懸念しています。実際、アメリカの調査では、自分のキャリアについて「非常に野心的」と回答した女性の数がパンデミック後に大きく減少しました。
 また、新しい勤務形態が不平等を拡大させる可能性が指摘されています。パンデミック後は男性よりも女性のほうが在宅勤務をする傾向にありますが、在宅勤務をする人は、上司と顔を合わせる機会が多い人に比べて昇進する可能性が低いことが明らかになっています。この状況が女性にとって不利であることは明白です。
 現状では、女性の才能が労働市場から流出し、男女間の不平等がさらに拡大することは避けられません。


5. 今後の課題

 現状を打開するためには、古い職場の習慣がもはや現状に即していないことを組織が理解する必要があると、専門家は述べています。「公平性と機会の平等を促進するために、給与の平等、昇進の機会の平等に加えて、母親、父親、親ではない従業員など、誰もが自分の価値を感じ、家庭の事情に配慮しながら仕事の可能性を広げられるような透明性のある文化を作ることが必要です。」
 また、母親、特に役員や幹部を務める母親は、女性にとって非常に重要なロールモデルです。母親たちが現在おかれている状況は、全ての働く女性(特に新入社員)の行動に影響を与えます。そのため、組織はあらゆる社員のニーズに対応できることを証明する必要があります。
 これらは従業員のみで解決できる問題ではありません。専門家は、「管理職が正式なトレーニングを受け、目的に合った職場を作るために陣頭に立たねばならないと理解する必要がある。燃え尽き症候群のリスクを減らすには、これが決定的に重要だ。」と強調します。
 一方、冒頭で紹介したジアは、企業だけでなく家庭にも大きな変化が必要だと主張します。「固定的な性別役割分担に盲目的に従うことで生じる不均衡を理解するために、私たち全員に果たすべき役割があります。」「女性が主に育児をしたり仕事を辞めたりすることが理にかなっている場合もありますが、それにはどのような代償を伴うか理解する必要があります。」


6. まとめ

 今回は、女性の燃え尽き症候群とその背景について述べた記事を紹介しました。
 一進一退を繰り返しながらCOVID-19は徐々に制圧されており、労働環境も以前の状況に戻りつつあります。一度拡大した男女間格差がどこまで改善するかは、我々1人1人の行動にかかっていると言えるでしょう。燃え尽きた女性たちが、再び意欲的に過ごせる日が来ることを祈るばかりです。

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参考;Josie Cox, "Why women are more burned out than men", BBC Worklife, 2021年10月4日
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