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地面師たちは残念なドラマだった※ネタバレあり

最近話題となっているドラマ、地面師たちを見たので感想を.

簡潔に言うと、めちゃくちゃ面白かった、でももったいないなあ、となる.豪華な俳優陣、金をかけたセット、地上波ではできない表現盛りだくさんで、この点では申し分ない作品だった.しかし、ツッコミどころが多いのが気になってしまった.

この作品は大きな話題となっていて、いいレビューはたくさんあるので、良かった点についてはわざわざ書くことはしない.あえて残念だった点について書いていきたい.以下、ネタバレを含むので注意されたし.



本作品の一番の問題点は、脚本のつめの甘さだ.それが全てと言ってもいいほど、他の面は完成度が高いにも関わらず、違和感が生じることが多すぎるのだ.

なぜか女性が下着の場面が多いとか、話の本筋とは関係ないことであれば、事情もわかるしいいのだが、大事な場面でツッコミどころ満載である.これは、実際の巨額詐欺事件を扱ったリアリティが大事な本作品では、致命的である.

例えば辻本(綾野剛)と後藤(ピエール瀧)が喫茶店で話をする場面.後藤がリーダーであるハリソン山中(豊川悦司)を警戒して距離を取るつもりであると告白をする、非常に重要なシーンなのだが、そんな大事な話をあのオープンなカフェでするわけないし、しかもそれを辰さんという刑事(リリー・フランキー)がたまたま席の後ろで聞いているなんて、不自然極まりない.それはないだろ、とツッコミたくなる.

また、辰さんが⚪︎んだ後、コンビを組んでいた若い刑事の倉持(池田エライザ)が真相に迫っていくのだが、辰さんには警戒して監視をつけていた(だからバレる前に始末できた)のに倉持には無警戒なのも不自然だ.一度逮捕された時に辰さんと面識があったのに対し、倉持は知らなかったという言い訳が百歩譲って成立するとしても、アジトの地下に来たことまで気が付かないのはおかしいだろう.

そしてその倉持は、辻本の家族の命日に、墓参りに来た辻本に出会って問い詰めるのだが、相手にされず帰ろうとする辻本の車に軽く引かれる.その際にGPSを辻本の車に装着することでアジトを見つけたり辻本の自宅にたどり着いたりするのだが、いやフツー辻本は警戒して車を変えるでしょ.ナンバーがバレているのだから.

また、これは全体に言えることなのだが、簡単に人を⚪︎しすぎである.記憶が曖昧なので間違っているかもしれないが、たしか原作では⚪︎したのは最初のなりすまし役をした年寄りだけだったように思う.あとは最後に、袂を分つ麗子(小池栄子)と後藤を始末することを匂わせて終わったように記憶している.それでも原作のハリソン山中の怖さはしっかり伝わってきた.

それに対しドラマでは、邪魔になった者や必要無くなった者をどんどん⚪︎していくことでハリソン山中のキャクターを際立たせようとしたのかもしれないが、あれだけ簡単に⚪︎したり脅したりできるのなら、最初から地主を脅せば簡単じゃないか、と思ってしまった.ホストにハマっているのを知った時点でそれをネタにすることもできるし、そもそも身寄りがない尼の住職なら誘拐することも、わけがないことだろう.さらっておいて石洋と契約をすれば良かっただけではないか.わざわざ手間暇かけて苦労して騙し取ろうとしている割に、困ったら消すことができてしまうのは、ご都合主義的である.

キリがないのでツッコミはここまでにしておくが、他にも大事なところで不自然な描写が多く、興醒めすることが多かった.

また、不自然というわけではないが、残念だった点もあげると、原作には登場しない倉持という刑事は、必要なかったと言わざるを得ない.ハリソン山中=豊川悦司を追い詰めるのは辰さん=リリー・フランキーの方が、大人のドラマとして絵になっていたとおもう.

辰さんは、仲介の不動産屋の前で張り込みしているところを誘拐されてしまうのだが、そのまま真相に迫っていく流れにして欲しかった.誘拐されてしまったのは、上司がハリソン山中に通じていた内通者だったからなのだが、その上司はセクハラをしていたり悪い奴で描かれる.が、上司はどうなったのか、全くわからない.この点でも描写が不十分な脚本と言わざるを得ない.

以上、残念に感じた点を代表手になものだけ取り上げた.

ただし、最初に書いたように、面白いドラマであるのは間違いない.豪華な俳優陣による質の高い演技が見れるし、地上波ではできない表現やストーリーがふんだんに盛り込まれた、スリリングなドラマである.

したがってこの作品は、ネットフリックスに入っていて時間がある人にはおすすめしてもいいドラマであるが、巷で話題になっているほどの作品ではない.特に脚本に問題があるので、あらかじめ原作を読んでいる人には、物足りなさを感じるかもしれない.

そういう前提で見れば、つまり期待値を上げずに見れば、思いのほか楽しめるドラマになるだろう.

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