桃(しあわせ)の季節
スーパーに入るとすぐ目に飛び込んでくるのは、一面のピンク色。
ピンク、ピンク、ピンク・・・
桃の季節が来た。
果肉がとろりと甘くて、果汁までついつい飲み干したくなる、あの桃の季節が来たのだ。
桃と書いて、私はしあわせと読みたい。
生まれて初めて私が発した言葉は、「モモ」だった。らしい。そのくらいずっとずっと桃が大好きで、毎年心待ちにしている。
* * *
物心つく前から、私は桃の味を知っていた。今までで他人の50倍くらいは桃を食べてきたんじゃないだろうか。
完全に自分の力ではなくて身近に農家の親戚がいたからなのだが、おかげで今も桃の相場なんて知らない。
桃パフェの値段を見るとびっくりして頼めない。こんなに高いなら家に帰って桃食べるわ。贅沢で、幸せだ。(でも桃パフェはいつか食べてみたい)
そんな大好きな桃を、私は過去にいくつも腐らせてしまったことがある。
今年はいただいた桃をどうにか腐らせず、全ておいしく食べたい。そう思った私は、加工という手を知った。
とはいえ、桃の加工って、具体的に何になるんだろう。
ジャム、コンポート、ドライフルーツ、ゼリー、ジュース、アイス、ピンクカレー(!?)・・・
保存が利きそうなのはどれかしら・・・と色々調べていると、なんと加工用の桃なんてものを発見した。
どうやら訳あり桃やアウトレット桃が、加工用として売られているのね。
無知ゆえの驚き。そして誰しも最初から考えつくはずのことにここで気づく。
「あれ・・・生で食べてあんなにおいしい、美しい桃を加工に回すのはもたいないのでは・・・!?」
そしてここで再び気づく、誰しも最初から分かるようなことに。
「・・・毎年いただいてる桃、美しすぎるんじゃない・・・?」
知らないってあまりにも純粋で、恐ろしい。
もう足を向けて寝られない。たくさんお土産買って帰ろう。
* * *
まだ食べるにも少し早い桃ばかりなのだから、今から加工のことを考えたってしょうがないな。
いっぺんに熟れてどうにもならなくなったらコンポートとかやってみようかな。
そんなことを考えながら桃をつまむ、昼下がりの幸せ。
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