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お茶好きが高じて自分でお茶を作ってみた話

お茶好きが高じて自分でお茶を作ってみた


お茶が好きだ。

元々煎茶を毎食後に飲む家だったおかげで、お茶は小さいころから身近にあったのだが、長ずるにつれて高いお茶の味を覚え、さらに中国茶の香り高さを覚え、いつのまにかずぶずぶと沼にはまっている。

いっとき、デトックスでノンカフェイン生活を続けた時にやめていたんだけれど、やっぱり物足りなくて結局お茶だけは戻ってきてしまった。

とはいえ、カフェイン断ちをし始めた数日間の激痛たる頭痛の日々は本当に地獄だったので、そういう性質のものだと思って大量に飲むのはやめた。
というか、さすがに一度リセットしたおかげで、身体が限界量を覚えたらしく、飲みまくっていると頭がくらくらしてくるようになったので、薬と毒は紙一重とは本当だなと思っている。

さて。
実は、昨年台湾茶の講習を受けた。
インターネット配信だったのだが、事前に茶葉が届けられ味を楽しみながら学ぶスタイルだった。その数種届けられた茶葉のなかに「うちの近くの林で取れた茶葉」が入っていて、「え?中国茶って日本でも作れるの?」と思ったのだ。

その時は、「緑茶もウーロン茶も紅茶も製法が違うだけでおなじ茶葉からできる」という程度の知識はあったけれど、詳しい製法など考えもしなかったし、中国茶の産地は霧がよく立つ高地だというから、その辺に作り方の妙があるのではないかと勝手に思っていた。


茶の木を救出


実は、我が家(というか母の実家)の畑には茶の木が二本立っている。
少なくとも祖父母の代から借りている畑で、母の記憶によれば昔私のひいおばあちゃんにあたる人が炒ってほうじ茶にしてたなんてことがあったらしい。そうなると、少なくとも樹齢40年ぐらいにはなるだろうか。

しかし祖父母も亡くなり、母やおばたちが細々と家庭菜園をするようになってからは見向きもされず打ち捨てられていて、蔦と熊笹にまみれていた。

どうも、放っておくといい感じに藪になるらしい。なかなか手ごわい。

まだ上の方に蔦が這っている。蔦に負けてるところは芽も出ていない



もしかしたら来年お茶が取れるかもしれないということで、そのうち1本を根っこに生えていた熊笹を刈って蔦を払ってやった。(もう一本はその時は我が家のものか分からなかったので触らなかった)

蔦も笹もたいへん元気なのでまた伸びてきていたけれど、何とか負けずに茶の木からも新芽が出てきた。


茶摘みをしてみることに


「夏も近づく八十八夜」というけれど、八十八夜は立春から数えて八十八日目のことを指す。今年は5月2日にあたるらしい。
その頃が茶摘みのベストシーズンらしいのだけれど、4月20日現在、新芽も出てたので摘むことにした。

たまたま数日前に土産で買った高知の釜炒り茶に「新芽から3枚だけ使った贅沢なお茶」という但し書きがついていたので、なるほどそういうものかと、くるりと丸まった新芽のしたの緑の茎を指でつまむと、簡単に折れた。


お茶の木の新芽。柔らかいところを指でつまむ。


あとから見たインターネットの動画でも、「爪を立てずに指で優しく」と書いてあったので、おそらく爪を立てなければ摘めないぐらいのはもうおいしくないんだろうなと勝手に思っている。

それにしても、くるりと巻いた新芽はまだ少し赤紫がかっていてやわらかく、透明感がある。羽化したての蝉に通じる透け感というのだろうか。

生まれたてのものの透明感は、生まれる前の世界とのつながりのようなものをかんじさせられて、とても愛おしい気持ちになる。

まあ、それも数日たつと立派な緑の葉っぱになるんだけれど。そして、そんな透明感いっぱいの芽を私たちは遠慮なく摘み取ってしまうんだけど。


いよいよお茶づくり


畑に野菜の苗を植えるのと並行したので、二日かけてビニール袋に2杯ほど採った。これは1日目のもの。

樹自体が好き放題伸びているからなのか、冬に落ちてるはずの実や殻みたいなものが落ちていなくて、新芽を採ってるとぱらぱらと落ちてくる。さらに蜘蛛の巣やらみのむしやらいろいろだ。なので、まずはごみを取り除いてざばざば洗った。

1日目は、その日のうちに処理して釜炒り緑茶にすることにした。

木にはミノムシとかいろいろいたのと、風が強くてごみも入ってるので、選別して洗浄した。



お茶の違いいろいろ

とりあえず、クックパッドで「お茶 自作」と検索すると、煎茶の作り方が出てくる。
前述したたまたまその前に飲んだお茶が「釜炒り茶」と書いてあったので、「釜炒り茶」で調べてみると、どうやら製法の差らしい。

そもそも、同じお茶の葉から緑茶もウーロン茶も紅茶もでき上がる。その差はなんなのかというと、「発酵」(正しくは酸化らしい)によるものだ。茶葉は摘んでからしばらくすると、内部の酵素の働きでカテキンが酸化する。それによって香りの出方が変わったりする。
働いているのは酵素なので、熱を加えるとその働きが抑えられる。

なので、緑茶は摘んだらすぐに熱を加えて酵素を死滅させる不発酵茶。
ウーロン茶はある程度放置してから熱を加える半発酵茶。さらに紅茶は完全に酸化させて色も香りも強くする発酵茶になる。

さらに、緑茶の場合、最初に蒸し器を使って蒸す。そうすると、その後に水分を絞ってねじっていく際に針状の茶葉になる。こういうのが煎茶で、蒸し器を使わずに鉄鍋などの釜でごく弱火で火を入れて炒っていくと、うねうねしたり勾玉状になったり、丸まった茶葉になる。こっちは釜炒り緑茶というそうだ。

釜はバーミキュラ―ライスポッド


蒸し器はない。
というわけで、釜炒りで行くことにした。

まあ、釜といっても使ったのはバーミキュラ―のライスポッドだ。
設定は「極弱火」。最初はyoutubeで軍手を使おうって言われてやってたけど、鍋肌を直に触ることはほぼないので、途中からは素手で十分だった。

最初にざっと火を通すために全体をかきまわす。
緑茶の場合は、水気が多いのでここでだいぶ湯気が出てしなしなしてくる。
一度火からおろして清潔な場所に置き、今度は水気を絞るように手でねじったりしぼったり転がしたりする。(この辺は必至だったので写真がない)

葉っぱに傷をつけることでお湯につけた時に成分が出やすくなるらしい。
使っていた軍手はこの段階でぐじゅぐじゅになったので、だいぶ水分が出ているらしい。

ある程度終わったら、今度はまた釜に戻して乾燥させていく。ただひたすら。熱を与えて、しかし焦がさないように、カリカリになるまで炒る。
もちろん腕が疲れるから、たまに火からおろして、広げて冷ましている間休憩する。そんな感じで、大体1時間ぐらいだろうか。結局35グラムの茶葉が出来上がった。

さて、2日目のほうは、使ってなかったすし桶を見つけたので、そちらに入れて2日置いた。本当は天日で数十分と、室内で1日程度らしいのだが、採った翌日が大雨で太陽が望めなかったのと、最近いろいろ飛んでるのでせっかく洗った茶葉を外に出すのははばかられて窓の隣に置いておいたためである。
ちなみに、発酵させるために置いておくことを、お茶の世界では萎凋いちょうというそうだ。

そういえば、ここ数年ずっとひいきにしているお茶屋さんが鹿児島県の霧島にあるのだが、そこのお茶の中に「Flavor霧 萎凋緑茶」というのがあって、これはどこか百合の花のような香りがする。もちろん大変おいしい。

今吉製茶ホームページ

(写真は今吉製茶さんのホームページからお借りしました)

閑話休題。
我が家の茶葉の話に戻る。


2日置いておくといい感じにしなびたので、あとは釜炒り緑茶と同じやり方だ。こっちの方はそもそも水分が少なくなっているおかげで、40分程度で終わった。

飲んでみると、台湾茶のような青みの強い香りが出ていて、大変満足。ちなみに、緑茶の方がしぶみと苦みを感じたので、酵素の発酵はまろやかにさせてくれるらしい。

中国の古木などは、発酵によってマスカットのような香りを出す木や、金木犀のような香りになる木もあるそうだ。もちろんそう言うのは希少でものすごくいい値がついてるので、とても飲めないのだけれど。

美味しいお茶になりました

難しいと思っていたけれど、簡単な手順でちゃんとお茶になったのはおどろきだった。

とはいえ、数時間かけてがんばってつくって出来上がったのは約70グラム。

それなりのお茶屋さんは100g1000円そこそこで売ってくれるんだから、大変な企業努力である。ほんとうにありがたいので、大事に飲みたいと思う。

参考にしたyoutubeも貼っとくね。


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