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個人開発に興味が湧かない

いきなりだが、私はITエンジニアである。

今でこそ仕事を休んでいるが、本業はITエンジニアなのである。

だから本来は、Webアプリケーションとかを作るのが仕事である。


ITエンジニアの大好きな言葉に「個人開発」がある。

これは、本来多くのITエンジニアが企業に属し、企業の提供するシステムを開発することが多いなかで、会社を離れ、個人としてシステムの開発を行うことを指す言葉である。

この言葉には、その経験により自身が成長することへの意気込みと、あわよくば一発当ててFIREしたいという願いが込められている。


さて、私はITエンジニアである。

ならば、私もその「個人開発」に手を出すべきではないか。

幾度も考えた。

皆もすなる個人開発といふものをしてみんとす。

気持ちだけは、「土佐日記」の紀貫之である。


しかし困ったことに、この「個人開発」を前に、タイトルの通り、私はどうにも食指が動かない。

「個人開発」において重視すべきことはいろいろある。

最初から完璧を目指さないとか、新しい技術要素を採用し過ぎないとか。

だがなにより大事なのは、そのシステムを自分が使いたいかどうかだ。

自分が使いたくないシステムを作ったところで、モチベーションが上がったり、ましてや収益が上がったりというのは考えづらいからだ。


私には、使ってみたい、あると便利だな、と思うシステムがほとんどない。

私は決して「アーリーアダプタ」ではなく、世に流行ると聞くアプリをインストールするのもだいぶ遅い。

私は、既存のものを使い続ける傾向がある。

文章を書くのにも結局、VSCodeのようなテキストエディタではなくMicrosoft Wordを使っている。

映画を観るのも、Netflixで観るより映画館で観る方が多い。

私は、生活レベルにおいて、わりと保守的な人間なのだ。


だから、なにも「作ろう」と思えない。

ITエンジニアとしての「成長」という言葉の煌めきに焦り、自分もなにかしなければ、と思いはするものの、結局この指が動くことはない。

あー、作りたいものかあ、ないなー。

べつに他の人が作っているものの再発明でも良いはずなのだ。

しかしそれすらも私は躊躇ってしまう。

Todoアプリ? メモ帳で十分にできるしなあ。

家計簿アプリ? うーん、興味ないなあ。

ニュースの収集? うーん、Feedlyでよくない?

そんな感じで、私はなにも作らない。


私はこのことを、我ながらとても残念に思っている。

それは、自分が成長しないこと、という立派なことについてではない。

自分が、なにかを作ることに興味が薄い人間だということに、だ。

じゃあなにに興味があるのかと訊ねられれば返答に困る。

しかし改めて考えてみても、なにかシステムを作ろう、自動化しようという工学的な興味よりも、世の人はなにを考えているのかなどという不毛な事柄に興味が集約されてしまう。


私は「個人開発」に興味が湧かない。

今日も、QiitaやZennの立派な記事を、指を咥えて眺めるだけだ。

「〇〇作ってみた!」

そんなTwitterの投稿を見て、震える。

私は私の、欲望の薄さに震える。

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