有給休暇を取りたい
会社員として働き始めて、それなりの時間が経った。
その間に、かつて苦手だったことが出来るようになったり、反対に苦手だなと思うことを新たに見つけたりした。
けれど、ずっと変わらず私の頭を悩ませている問題がある。
有給休暇が取れないのだ。
有給休暇。
雇用主から賃金が支払われる休暇日のことだ。有休などと略されて呼ばれることが多い。
それが、私はどうにも取れないのだ。
取ることが禁止されているわけではない。
よく話をする先輩など周囲の人はみな、適当にそれを消化している。
実際の取得率がどれほどなのか私は知らないし、他の会社と比べてどうなのかは分からないが、決して取得できない雰囲気ではない。
私が有休を取れないのは、単にそれが下手だからだ。
下手な理由を考えてみて一番に思い至るのは、私には仕事を「休もう」と思うことがほとんどない、ということだ。
私は仕事に情熱を捧げたいタイプではないし、毎日の仕事がワクワクすると公言してやまないような人間でもない。仕事を「したくないなあ」と思うこともしょっちゅうだ。
だが、明確に「あの日休もう」と思うことは滅多にない。
先述の通り、私の勤める会社は、有休を取れないわけではない。
しかし流石に、ある程度事前に取得する旨を上司に報告しなければならない、という暗黙のルールは存在している。
私の「したくない」は働いている「今この瞬間」に対しての感情だ。
だから、「あー、もうあの日休もう」と、未来のとある一日を想うまでに至らない。
「あの日」休んでまでやりたい何かもあるわけではない。
そして、特に有休を申請することなく、ずるずると働いてしまうのだ。
有休には、取得すると休みを長く出来る「コスパのいい」日が存在する。
たとえばゴールデンウィークの中日などがそうだ。
そういう日は多くの人が休みたがるし、会社としてもそういう日を「休暇取得推進日」としている。
しかしそういう日にも、私は有休を取得することができない。
私がカレンダーをあまり見ないからだ。
まったく見ないわけではない。
仕事をしているときは、予定表の確認ぐらいする。
しかし、それ以外の場面で、私はカレンダーをほとんど見ないのだ。
会社のスケジュールシステムを除いたら、未来を気にするのは翌日の天気予報が精一杯で、そのシステムも週表示が標準だから、翌週のことなんてほとんどなにも考えられない。
だから、そういう「コスパのいい」日に、私はいつも直前で気づく。
有休をとれない雰囲気でないとは言っても、全員が同じ日に休むのは流石に良しとされていない。
そして先述の通り、そういう日は多くの人が休みたがる。
私が気づいたときには、もう既に多くの人が休みを入れた後で、私はその度に有休の取得を諦めるのだ。
だから私は有休を上手に取れない。
使用できなかった有休は、有効期限が切れて消滅する。
そのときになってようやく後悔しても、それはあまりにも詮無いことだ。
告白できないまま、好きな人に恋人ができてしまったときみたいに。
悲しいかな。私には、それをただ「グッバイ」と見送ることしかできない。
【今回の一曲】
Eve/あの娘シークレット(2017年)
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