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どついたるねん。

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きっと仕事のためにはならないでしょうが、暇つぶしにはなるかと思います。そんな、エッセイです。(2019/10/1〜2021/5/23)
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#飲み会

酒飲みでなくなった私は、私たちは

このあいだ、久方ぶりに外で酒を飲む機会があった。 仕事終わりに、「じゃあ一杯これ、行くか」と先輩がお猪口を呷るジェスチャーをし、なし崩し的に飲みに行くことになった。 都内は、なお緊急事態宣言が発令中だったが、まあ20時までと言って、そのまま私たちは居酒屋に入った。 飲み会自体は、無事に終わった――とは言い切れないところがあった。 私以外の参加者はみな酩酊状態で、私自身も足がふらついていた。 とりあえず、みな帰る電車も覚束ない中を、あなたは何番線です、あなたは何番線で

怒りの速度が足りない

私は、いつもすぐに怒ることができない。 「その発言はどうなのだろう?」 そう思う機会があったとしても、いつもそれは、その場ですぐに怒りに変わってくれない。 それが怒りに変わるのは、たいていその出来事が過ぎ去ってからのことだ。 そのことが、私はいつももどかしく思う。 ある飲み会でのことだ。 それは、ある事業部の主催するイベントを私たちの所属する部署が手伝ったことに対する慰労を趣旨として開催された。 その中で、その事業部に所属する女性社員が私の同期であることが話題に

「こいつ面白い」は信用ならない

「こいつ面白いんだよ」 飲み会などの場で、「笑わせてくれる」という意味でこの言葉を聞いたらば、少し歪な作り笑いを浮かべてしまう。 経験則から言って、そう紹介されたやつが面白いケースは極めて稀だからだ。 その原因に、私も一家言ないわけではない。 しかしその考察は省略し、今回は、私が実際に受けた「被害」について語ろうと思う。 話は、数年前に行われた、会社の同期の飲み会に遡る。 その飲み会は、会社近くの、安い居酒屋チェーンで行われた。 ビールを頼むものあり、ハイボール

お前も「可愛い」って思うんだな

新入社員研修の帰りに同期の何人かで飲みに行った。 会社の最寄り駅を通る路線にあるちょっとした大きな駅の近くにあった、海鮮系の居酒屋だった。 店に入るなり、私たちは入口付近の席を案内された。 めいめいが座って最初の飲み物を決めながら談笑していると、女性の店員がお通しを持ってきた。 小鉢を置き、「オーダー決まりましたらお呼びください」と言い残して去っていった。 お通しの入った小鉢を各人に配っていると、隣に座っていた藤沼に「なあ」と話しかけられた。 「なに?」と私が応じ

いきなり巨根説

新入社員研修が始まって少し経った頃、新入社員と人事の参加する飲み会が催された。 それは入社後初めて開かれる飲み会で、出席率はかなりのものだった。 参加者もそれなりの数だったから店を貸し切っての開催となった。 幹事を務めた男が、乾杯の音頭を取った。 「ここにいるみなさんで、うちを業界ナンバーワンにしましょう!」 などとそいつは言った。 人事の佐久間さんは、それを聞いて愉快そうに笑っていた。 飲み会が始まった。 最初のほうは平和な雰囲気だった。 みなまだあまり深

好みの異性のタイプを答えよ

「芸能人だと誰が好き?」 数ヶ月前、会社の飲み会で先輩の女性社員からそう訊かれた。 どう答えたものかに迷い、私はただ口ごもってしまった。 恋ならば、誰もがしたことがあるだろう。 ラブソングは100万人のために唄われるのだから。 恋バナが「鉄板」になるのも、どうやらそういう理由らしい。 「芸能人だと誰が好き?」 この質問も、カルチャーの話としての質問ではなかった。 「芸能人で言うと誰がタイプ?」「芸能人だと、誰と付き合いたい?」と同様に、すなわち好きな異性のタイ

飲み会での趣味の話どうすべきか問題

私は趣味が多いほうではない。 普段はその少ない趣味で充足できていると思っているから、そのことを不便だとか不満だとか感じることはない。 しかし、飲み会の場となると、途端にそうも言っていられなくなる。 知り合って日が浅い人もいる飲み会だと、「趣味は?」という質問をされるときがある。 そのとき答えられる趣味がなくていつも困るのだ。 少ないことはもとより、数少ない趣味のひとつである「読書」を迂闊に挙げてしまうと、「なに読むの?」と訊かれることを経験的に学んでいるからだ。