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【RUN】母の歪みと鳥籠の狂気

『search/サーチ』にてその名を世界に轟かせたアニーシュ・チャガンティ監督の最新作『RUN』この作品は鑑賞する前から絶対に面白いと思ってましたが…大正解(無言の拍手)最高の映画でした…。

・ちなみに『search/サーチ』は行方不明になった娘を探す父の物語をPCの画面上で進行させるといった意欲作でこれまた面白い作品なのでオススメ。

概要


・未熟児だった為様々な後遺症に悩まされていた娘クロエ、そんな彼女を献身的に支える優しい母親ダイアン。しかし娘が大学への巣立ちの年齢になるに連れ、母親の異常な束縛行動が目立ち始める…。

・まあそんな感じの物語だと思ってたのよ、子離れ出来ない母親を過剰に描いたサイコスリラーなんだなーってさ。でも、実の所真相はもっと病質染みた異常な母親愛だった訳で…。 


↓以下ネタバレ感想



掻い摘んだ軽い感想

・序盤から母親が急に変な薬を勧めてくるので娘が変だなぁと勘繰り出します、我々観客も一緒になってどういう事なんだろうと其処から物語の中にグイグイと引き込まれていく。そういうテンポの良さを保ったまま最後まで物語が進み、尚且つ少しずつ秘密が紐解かれていくので、ずっと「構成良すぎ〜」ってなりながら飽きる事なく楽しめちゃう本作は正に傑作◎。  

・作中で家庭菜園しているトマトが何度か映るのだが、実が熟するという事=巣立ちとかの連想が出来ちゃうのも良いよね。それでいて赤い作物だから、色的に愛とかそういう風なニュアンスでも受け取れる。

・ちなみにトマトの花言葉は完成美で、トマトに似た同じナス科のほおづきの花言葉は偽りらしいです。(別にそれが何だって話ですが)

・話を戻しまして

・展開の起こりの見せ方も下半身がまともに動かせない主人公ならではの話運びになっており、閉じ込めれた家の中で不自由な身体を駆使して知恵と工夫を凝らして足掻くのが非常に見所となっています。

・何だか『何がジェーンに起こったか 』という往年の名作をふと思い出しちゃったりとかしちゃったり。

・そしてあーだこーだと母と娘の出し抜き合いが色々と続き、物語も佳境に迫って来るや否や母親の異常性は更にむくむくと高まり遂に真実が観客の目に晒される。

明かされる真実


・実はダイアンが産んだ未熟児は生命の維持が難しく産まれて間もなく死亡していた。彼女はその喪失を受け入れる事が出来ず、他者から赤ちゃんを奪い取るという選択を強行。そしてその子に娘に名付けるはずだったクロエの名を授けた。その上実子が生きていれば背負う定めであったろう障害の数々を毒を用いてデザインまでする始末。そう、最高で最愛の我が子の"再現"を彼女は17年間もの間隠し続けていたのだ。

・これはあまりにも歪み捻じ曲がった母親の愛情である。ダイアンは確かにクロエの母親であるが、クロエとして育てられた娘の人生は儚くも嘘に塗れた虚像だったという訳で…。

・ただまあツッコミ所もあるんですよ
母親が毒を小さい頃から盛っていて障害が出ていたのなら、病院の定期診断とかそういうので先天性の障害か毒によるものかとかバレるんじゃないの?そもそも常備薬の申請とかどうしてたの?かかりつけ医が頻繁に変えまくってるとか作中で明言されてるけど、それで何とかなる様な話なの?etc

・でもね、別にどうでも良いんですよそういう細かい事。だってこの映画面白いんだもん。ユニークなプロットの脚本を動かす為には現実的な要素を補填するアプローチなんか必要ねぇ。フィクションにはフィクションを輝かせる優先事項がある!!!!!ドン!!!!!!!

・まあ何というかサラ・ポールソン、最高にハマり役でしたよ。彼女演じるダイアンが作中で見せる母親顔と壊れた人間の表情の混在が怖くて凄く魅力的。

最高の終わり方

・オチも超パンチが効いていてさ、もう目眩しちゃうレベルよ。事件から7年後、獄中に居るダイアンをクロエがわざわざ訪ねてくるんだよ。それ見るとさ、ストックホルム症候群みたいな感じなのかなぁって、17年間も一応親子やってたから奇妙な愛情があったのかなって思ったのよ。するとどうよ、娘が口の中に隠していた例の薬をヌルッと出して「お母さんお薬の時間だよ」だってさ。

  優勝!優勝!優勝!優勝!優勝!優勝!

・そりゃそうだよね!?
だって赤子だった自分を誘拐しただけには飽き足らず、毒を持って健常者から障害者に無理矢理変えて庇護ってたんだよ?恨むわ、当然。私の人生なんだったの?この野郎ってなるわ、普通。
なぁ!????おい!!!愚かな人間!!!!

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