ショートショート 「スマホ」
「スマホ」
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「ひなこ〜。スマホばっかいじってないでそろそろ寝なさいよ〜。」
「はいはーい。わかってるよ〜。」
「いい加減にしないと取り上げるわよ!」
「いや、それだけはまじ無理。ちゃんと寝るよ〜おやすみ〜。」
口うるさい母親にはなりたくなかったが、
つい自分の子どもには一言言いたくなってしまう。
自分が子どもの頃はスマホなんてなかった。
今の子ども達にとって、スマホがどんな存在なのか、
スマホを使ってどんなことをしているのか、
親の私にはわからない。
今はスマホ一つで仕事もできる時代だと聞く。
それに、スマホ一つで事件に巻き込まれることもある。
昭和の古い考えかもしれないが、
”スマホの影響で我が子になにかあったら”
そんなことを考えてしまう。
「ひなこ、これちょっと教えてくれない?」
「あぁ、これはね...」
私もスマホを使っているが、お世辞にも使いこなせていない。
私が困るような操作は、娘に聞けば大抵のことは解決してくれた。
娘はスマホを手にしてからほとんどテレビも見ないし、本も読まない。
私からするとそんなに魅力的なものとは思えないんだけど。
雷で電気が止まったある日、私は大慌て。
「お母さん、そんなに慌てても仕方ないって。あと数時間で復旧するみたいよ。」
「そうなの?でも電気は止まってるし、ひなこもスマホの充電無くなったら慌てるでしょう?」
「大丈夫よ。あと2回分充電できる充電器もあるし。オンラインで友達と繋がってるから助けも呼べるわ。」
スマホを手に、娘はなに食わぬ顔で過ごしていた。
雷の次の日、我が家の電気は無事復旧し、私にとって日常が帰ってきた。
いつものようにテレビのニュースをつけた。
「昨日は全国的に雷雨が...」
「また、昨夜から続いている太陽嵐の影響で...」
「続いて、株と為替の値動きです...」
休日の娘だが、いつまで経っても部屋から出てこないので心配になって声をかけに行った。
「そろそろ起きたら?もうお昼よ?」
「うーん。」
その日、娘は活気がなく食事もほとんど摂らなかった。部屋からあまり出てこなかった。
「おそらく、娘さんはスマホ中毒ですね。」
心療内科の先生は言った。
「先日の太陽嵐の影響で、通信障害が発生しています。その影響でスマホを使えなくなり、メンタルヘルスのバランスが崩れてしまったものと思われます。全国的に若者を中心にこの症状がよく確認されているようです。」
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