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恐怖症

わたしは半年ほど前に、精神科で嘔吐恐怖症という診断を受けました。

小学生くらいまでは、それほど嘔吐というものに対して特別な意識はありませんでした。しかし、2つ年の離れた妹や、病気の祖父がよく体調を崩して家や車の中で吐くことが多く、少しずつその様子に苦手意識を持ち始めていることは自覚していました。

高校生になり、私は人を助ける医療の仕事に憧れを持ちました。その時すでに、嘔吐というものに苦手・恐怖心を感じていたものの、なんとかなるだろう。それより病院で働くってかっこいい!という安直な考えのもと、歯科衛生士の学校に進みました。医師や看護師といった選択もありましたが、学力面、そして夜勤を伴うようなハードな仕事をできる自信がなかったため、歯科衛生士を選びました。

卒業後は2年間、歯科衛生士として大学病院で入院患者さんの口腔ケアを行っていました。街のクリニックではなく大学病院への就職を選択したのは、やはりまだ医療職というものに強い憧れを持っていたからです。しかし大学病院となると患者さんの状態も様々で、嘔吐の場面に遭遇することも頻繁にありました。

そのなかで徐々に、それを目の前にすると冷や汗が止まらなくなり、吐き気、震えが起こるようになりました。しかし自分は医療従事者であり、そのようなものに苦手意識があるようでは失格だ、と思い、上司や先輩にその苦手意識を伝えることができずに2年間耐えましたが、ついに適応障害となり体調を崩し、病気休職したものの復帰のめどが立たずに退職しました。

その後も精神科に通いながら半年かけて体調をなんとか整え、現在は医療の世界を離れ事務職をしています。

日常的に嘔吐というシーンに遭遇することはなくなったのですが、以前より過敏に反応するようになってしまいました。街で咳をしている人を見るだけでも、吐くのではないかと怖くなり、逃げてしまいます。
精神科の先生に相談したところ、恐怖症の治療は慣れることだ、と言われました。確かにその通りだと思います。理性では恐怖心を抑えることができないので、実際にその場に遭遇することで慣れるしかないのだと思います。

歯科衛生士という、人々のお口の健康をサポートする仕事にはやりがいを感じていたのですが、今は口を開けている人を診察することが怖く、復職は難しい状況が悔しいです。しかし、それは受け止めるしかないと思っています。

今、自身の嘔吐恐怖症で困っていることは、人を助けることができないことです。

先日、妹の体調が急に悪くなり、駅で嘔吐してしまいました。
そのとき私は恐怖心から、ビニール袋と水を買ってきてあげることしができませんでした。
寄り添って背中をさすることもできずただ少し離れて立ち尽くしていました。怖くて体が動かないのです。とても惨めで申し訳なく思いました。もしかしたら、妹を傷つけてしまったかもしれません。

また自分が嘔吐することにも恐怖心があり、妊娠による悪阻はもちろん、子育てをしっかりできるか不安で前向きに考えることができません。

わたしはどうすれば、嘔吐恐怖症を乗り越えられますでしょうか。
どうすれば、自分を受け入れられますでしょうか。

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これは、私があるカウンセラーに送った内容の一部。
嘔吐恐怖症以外にも、恐怖症って色々あると思う。
私はとにかく誰かが電車でせき込むだけでも体が硬直し、吐くのではないかと怖くなり、イヤホンを大音量でぶちこんで車両を変えるほどだ。

そんな私が最近やっと、自身の恐怖症に向き合えるようになった。
今思えば、性格のいろんな要素、人生の選択が影響していたと思う。
この恐怖症に向き合えるようになったまでに実践したことを記録として残しておきたい。

①信頼できる精神科医に相談
上述したように、仕事で体調を崩して精神科に通院していた。でも嘔吐恐怖症があることを打ち明けられたのは、通院して1年くらい経ってから。
勇気がなかった。かっこ悪いし情けないと思っていたから。
ここで先生に言われたことは
「恐怖症の治療は、少しずつその場から逃げない。逃げなくてもなんとかやり過ごせた体験を積み重ねるしかない」
たしかに納得した。でもすごく難しいことだなと思った。この時は、逆に絶望してしまった。
精神科の先生も喘息もちでパニックになると言っていたし、奥さんも嘔吐恐怖症と言っていた。意外と多いのかも?と思い始めた。
あとは知り合いの助産師さんも、自分が吐けないタイプの嘔吐恐怖症ということを聞いた。YouTubeでは仲里依紗さんも言っていたし、意外と多い??という気づき。でもここではまだ気づいただけ。でもこれが第一歩だと先生が言ってくれたことに救われた。

②自分の体調を整える
そもそもいつも体調が悪くて食欲がなく、ときに吐きそうだったので、食生活、運動、あとは鍼治療をした。結婚を機に田舎に引っ越したのもなんとなくよかった気がする。(騒音とかがマシになった)

③同世代の信頼できる人に相談
やはり同性の同世代の意見は親近感からかスッと入ってきた。何かに対する強い恐怖心を持っている人は意外と自分だけではないことを知る。(虫が苦手で耳鳴りがしたり、夜中の喘息発作が怖くて過呼吸に、など。)

④パートナーに打ち明ける
付き合って4年くらいで打ち明けられた。それまでは見栄を張っていたと思う。ああ、なんなら僕も無理だわって言われた。ちょっと安心。

⑤本を読む
とくにためになった本は、「からだの声を聞きなさい」という、リズ・ブルボーさんの本。恐怖症についての記載があった。
まとめてみたけど、スピリチュアルな解釈が難しくて、少し作者の意図と違うかもしれない。興味がある人は実際に読んでほしい。

・恐怖は現実には起きていないことを、自分のイメージで作ったもの。
(例:この人が吐いたらどうしよう)
・そのイメージのエネルギーが過剰に向かった結果、恐怖症が起きる。
・結婚、出産、葬式などライフイベントで悪化しがち。
(わたしも祖母の死別で確実に悪化したなあ)

で、どうすればよいかというと、
慣れるしかない(精神科の先生と同じこと言ってた。恐怖心は強すぎて、理性ではどうにも抑えられないから。咳しているけど結果吐かなかった。吐いたけど自分は死ななかった、みたいな、なんとかやり過ごす体験を積むしかないみたい。)
・自分は十分に知識や知恵を使ってなんとかしようとしているのだから、責めない。小さいな成功をほめてあげる

こんな感じです。
振り返れば私はずっと
苦手なことがあってはいけない、克服しなきゃいけない。
っていうスタンスで27年間生きてきたと思う。でも

・人はみんな苦手なものがある。
・たしかに克服出来たらgoodかもしれない、
 でも心が苦しくなってしまうほどの無理をする必要はない。
・自分のできること、得意として持って生まれたものを大切に。

が大事だなと気づいた。
私は「自分のよいところを見つける。認める。」スキルを勉強する機会がなかったんだと思うし、自分が選択しなかった結果だと思う。

今更だけど、27年たってしまったけど、、、

でも【恐怖症】があったからこそ、ある人の辛さを理解できると思うし、
どうしようもならない出来事を受け入れる強さも持てたと思う。
辛いけど、神様からのすばらしいプレゼントだとも思う。今は、この恐怖症を持って生きている自分が好きです。少し前は、こんなことを自分の手で書く日がくるなんて考えられなかった。


なんとか復職を考えたり、またなにか相応な資格を取らなきゃ!とか
やっぱり自分は無意味な存在だとか、いろいろ考えて追い詰めていた。

でも、ありのまま自分の大きさで、できることをやる。
そして、いろんな経験や思考で締め付けられているのであれば、
また子供の頃みたいに(こころ)で感じることを第一に行動してみる。
これが大切だなと思い始めました。

少し落ち着いたので記録です。
みなさま梅雨になりましたが、雨のしとしとを楽しみつつ
ご自愛くださいね。

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