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鴨居と藤田と波山/笠間の旅

鴨井玲と藤田嗣治と板谷波山の作品を観るために、茨城県笠間市まで行ってきました。好きな人達の作品を続けて観ることができ、とても充実した旅になりました。

尋ねたのは、笠間日動美術館と茨城県立陶芸美術館です。


1.@笠間日動美術館

 1-1 鴨居玲のパレット

日動美術館の敷地には、「企画展示館」「フランス館」「日本館」という3つの建物があり、庭園には野外彫刻も展示されています。じっくり観るなら一日がかりになるほどの充実したコレクションを持つ美術館です。

さて、今回の目的、世界的にも珍しいというパレットコレクションは、日本館1階にあります。

おおかたのパレットには絵の具の配色だけでなく、その画家の好む主題が描かれています。花、裸婦、風景、人物などやパレットの指穴を利用してユーモアにあふれた絵を描くなどあきることがありません。パレットの配色に、画家の創作の秘密をうかがい知ることもできます。

公式サイトより抜粋

念願叶って観たパレットの数々。おもしろかったです!
部屋の3面の壁いっぱいにピカソ、ダリ、諏訪敦、増田セバスチャン等々、古今東西(?)の画家のパレットが展示されていて、それはそれは圧巻でした!(それでも展示されているのはコレクションの一部)
パレットの大きさ、使う絵の具の色や置き方の違い。画家が直接パレットに絵を描きこんでいるもの。それぞれに画家の強烈な個性が見えました。
持ち物には、持ち主の個性が出るものなんですねぇ。

とりわけ強烈な個性を放っていたのが、「鴨居玲のパレット」。
鴨居のパレットは壁にかけられておらず、ガラスケースに平置きされていました。おそらく、特別重いからかと。だって、大きなパレットの周りにうずたかく積まれた絵の具の量たるや…。そして、その中にササッと描かれた自画像の迫力。これが観たかった!

実は、パレットの部屋の存在を知ったのは、「私の芸術劇場」という番組(放送終了 再開希望)。その中で紹介されていた鴨居玲のパレットを観たのがきっかけで、すっかり鴨居の沼にハマってしまった私。これを観るために、笠間まで来てしまったのです。

私の芸術劇場公式サイト パレットの部屋を紹介しているページ↓

そして、予想外にうれしかったのは、企画展示館に「鴨居玲の部屋」がしつらえられていたことです! 収蔵作品と一緒に、鴨居の写真や生前愛用していたテーブルや椅子、直筆の手紙もあり、鴨居玲は作品だけでなく本人も部屋もダンディで、ますます沼に…。

勲章(1985)/鴨居 玲 (日動美術館パンフレットより抜粋しました)

彼の作品を見ると、「言い表せない何か」を感じるんです。喉の奥がつまるような感じ。観ているとつらくなるんだけれど、観ずにはいられない。

 1-2 没後50年 藤田嗣治展

2つ目の目的、企画展示室のメイン「藤田嗣治展」。
藤田の個展は初めてです。今回、5人の妻の絵を皮切りに、猫や子供の絵などの作品を一度にたくさん観ることができ、こちらも大満足でした。

フライヤー内側

藤田の油絵って本当に独特です。いわゆる「乳白色」と「細い線」で描かれた女性の裸体は、生々しさより神々しさを感じます。
波乱万丈の人生だったはずなのに、絵から嘆きとか辛さのようなものは感じなくて、むしろ穏やか。奥が深いなぁ。この絵を描くとき、藤田はどんなことを考えていたんだろう、そんなふうに思いながら鑑賞しました。

2.@茨木県立陶芸美術館

 2-1 板谷波山の自宅と作品

目的3つめ。
昨年、板谷波山展(泉屋博古館東京)に行って、大好きになった波山。
茨城県出身なので何かしらの作品が観られるだろう、とぬるい予想をして訪館しましたところ、美術館の外庭に窯と工房(どちらも再現)が!

 ※工房は、映画「HAZAN」のセットで作られたものだそうです。

(左)三方焚口倒焔式丸窯 (右)板谷波山 田端旧宅・工房(再現)

一気にテンションが上がります!

そしてもちろん展示もありました。
私の今回のお気に入りはこちら。左は波山の代名詞、ほ光彩磁器。右は最晩年のもので、本当に美しい佇まいの茶碗です。

左)ほ光彩磁葡萄紋様花瓶  右)氷華磁鎬茶碗

今回の展示は4~5点程度でしたが、こちらにはコレクションがかなりあるようなので、行くたびに違う作品が観られそうです。

 2-2 常設展「コレクション展Ⅱ・Ⅲ」

なかなかどうして見応えのある作品が並んでいました。

練上しょう裂茜手大壺「深山紅」/1981 松井康成

重要無形文化財「練上手(ねりあげで)」保持者(人間国宝)、松井康成の作品。松井は独自の技法をいくつも編み出した工芸界の巨匠なのだとか。何らかの陶芸展に行くと、ひとつは見かける気がします。
松井の陶器は、大きいサイズなのに繊細な模様、そして色がキレイで存在感がありますね。気は優しいけど力持ち、みたいな。違うか。

左)発彡文器/和太 守卑良(1997)  右)押点文鉢/須藤 訓史(2016)

近年の作品を2つ。左の器は紋様がカッコイイ。
右の器はひだの一枚一枚に、それぞれ異なる細密な模様が彫られています。

ヴェニス花瓶/藤田 喬平(1989,1996,1988)

ガラス工芸家の藤田喬平の作品も。写真はベネチアガラス。
撮り忘れてしまったけれど、色柄に金箔をまぜた「飾り箱」もありました。漆器の重箱のような、尾形光琳の燕子花図屏風を彷彿させる模様のガラスでした。

 2-3 陶芸の杜

美術館のある「笠間芸術の森公園」には、陶製オブジェが点在する「陶の杜」というのもありました。

発掘された古文書/九鬼 香織

こちらの本、陶器です。魔術師の森の書棚なのだそう。
雨風にさらされて朽ちている様子が、魔術の雰囲気たっぷりです。

goron-goron-goron/保科 晶子

こちらも陶器。何を表現しているかは、鑑賞者にゆだねられているよう。
私はキノコの襲来に見えました。発想が貧相でスイマセン。

芸術の森公園には大きな広場や陶芸体験ができる施設もあり、家族で行っても一日楽しめそうです。

4.笠間でおいしかったもの

左)できたて和栗モンブラン 右)笠間稲荷そば

⚫︎「道の駅かさま」のキッチンカーの「できたて和栗モンブラン」
笠間は栗の産地だそうで、和栗が使われたモンブランです。極細のマロンペーストを目の前でニューっと絞り出し、できたてを提供してくれます。ふわっふわっでおいしかった! 和栗だからかな?さっぱりした甘さで、たぶんもうひとつ食べられる。

⚫︎友部SAの「笠間稲荷そば」
笠間稲荷のイラストが入った油揚げが可愛かったので注文。正直、味は期待していなかったのですが、意外にもおいしかったです。←失礼
油揚げが、いなり寿司のように甘からく味付けされていたのがツボでした。

5.きょうのおみやげ

左)眠る猫(1929)  右)ボールの前で眠る猫(1929)

日動美術館で購入した藤田嗣治の絵はがき2枚。
左が大人の猫、右が子猫かな? ポーズが似ていて、1匹の猫の成長が描かれているようにも見えます。かわいい。
(今回、年末で時間がなく、模写なし)

6.展覧会情報

⚫︎藤田嗣治展 ※終了しました

⚫︎茨城県立陶芸美術館 コレクション展Ⅱ・Ⅲ



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