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【戦略解説】目標である営業利益率10%をどのように実現するの?|メンバーズのIR note

前回から「中期的な成長に向けた戦略(中期戦略)」を解説するnoteの連載を始めました。初回は、当社の目指す姿に触れつつ、中期戦略を発表するに至った経緯についてご説明しました。

2回目である今回は、具体的な「採用戦略」および「サービス戦略」について深掘りします。

2024年3月期(前期)に大幅に低下した収益性をいかに回復し、中期的な目標である営業利益率10%をどのように実現するのか。課題を整理しつつ、戦略を筋道立ててご説明しました。ぜひ、最後までご覧ください。

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収益性悪化の本質的な課題を解きほぐす


具体的な戦略をご説明する前に「収益性悪化の本質的な課題」について、少し詳しく述べたいと思います。

「運用」×「新卒モデル」の成功体験への過信があった

前回のnoteで、収益性悪化の要因を以下のようにご説明しました。

❝収益性悪化の要因は、成長ペース以上に人員を拡充したことですが、その本質的な課題は、「運用」というポジショニングおよび新卒採用先行モデルの成功体験への過信と、グループ1万名目標に向けた過度な採用先行投資などの売上成長を重視した成長戦略にあったと捉えています。❞

Web運用部門では数名から数十名、中には百名規模のデジタルクリエイターをクライアント専任チームとして編成しサービスを提供しており、チームに新卒を配属し、現場経験を積ませながら人材育成(OJT)をしていました。

Web運用は手間のかかる低付加価値な領域と捉えられていましたが、当社では運用こそが価値創出の肝であると捉え、付加価値の高いサービスモデルを作り、「運用」という事業ポジションを確立してまいりました。

これによりクライアントとの取引規模を徐々に拡大し、より多くの新卒クリエイターを現場で稼働させる好循環により、大規模な新卒採用と利益成長を両立することができました。

「VISION2030」では、この成功パターンを専門カンパニー(※)においても適用し、1万名体制に向けた大規模な新卒採用を継続できると仮説を立て戦略を推進したものの、専門カンパニーでは独立してクライアントの開拓をしていたことで大口の顧客基盤を拡大しきれず、結果として新卒1・2年目のデジタルクリエイターの稼働率が低下し、収益性悪化の一因となりました。

(※)高付加価値で先進的な技術領域に特化した社内専門組織。収益をあげながらR&D(新サービスの開発)をすることに加え、次世代経営人材の育成も目的としている。

サービス戦略にも問題点が

加えて、Web運用部門を比較的成長率が低い領域と位置づけ、高成長領域である専門カンパニーに投資を集中したサービス戦略にも問題があったと捉えています。

この戦略により、Web運用部門から専門カンパニーへの人材の異動が加速し、Web運用部門は想定以上に成長率が低下してしまいました。

とはいえWeb運用部門では、これまで中長期的に関係を築きチームモデルを提供してきたクライアントが100社以上あり、このクライアントに対するサービスをより進化・高付加価値化させることにより、事業としてはまだまだ成長力は高いと捉えることができます。これを解消するために、後半で述べる事業再編を実施しました。

なお、成長率が低下した背景には、テクノロジーの進化によるサービスのコモディティ化(一般化)などの外部要因も挙げられます。

外部環境の変化は当社にとってはネガティブに見えますが、中長期的には新たなDX投資が進み、ビジネスチャンスが広がると捉えており、生成AIなど新しいテクノロジーの活用やサービス開発を進めています。

いかに営業利益率10%に回復させるか


2027年3月期を目標に収益性を回復させ、高成長事業を確立するための中期戦略の軸は3つあります。今回は、そのうち2つについてご説明します。

信念を持ち、取り組み続けた採用戦略を抜本的に見直す

1つ目は、「採用戦略」についてです。

これまで当社は、デジタル人材が不足している社会に対して、新卒採用/育成によりデジタル人材を輩出するという信念を持って、1万名体制に向けて新卒採用数を大幅に拡大してまいりました。

その結果、デジタルクリエイター数は2024年3月末時点で2,482名となり、2021年3月末からの3年間で1.9倍と大幅に拡充しました。

しかし前期の収益性悪化を踏まえ、当面は新卒および中途採用を抑制し、収益性の回復を最優先します。

具体的には、新卒採用は付加価値売上高(※)成長率に応じて抑制し、来期は100名〜200名程度に抑制する予定です(2024年4月は411名入社)。

(※)売上収益から外注費等を除いた社内リソースによる売上を示す独自指標。成長率は特に言及がなければ付加価値売上高成長率を指す。

中途採用についても適正化し、グループ全体のデジタルクリエイターの稼働率向上に最注力してまいります

新卒採用数をもっと減らすべき、あるいはゼロにすべきというご指摘もありますが、将来的には成長率を引き上げ、再び採用ペースを拡大することを見据え、成長のために必要となる水準で採用は継続してまいります。

付加価値売上高を15%成長させる前提のもと、採用抑制により来期2026年3月期には営業利益率5%に、再来期2027年3月期には同10%に回復させることは十分可能であると考えています。

成長率15%は本当に実現できるのか?

戦略の2つ目は「サービス戦略(事業再編)」についてです。

当社ではこれまでWeb制作やデジタルマーケティングの運用を支援するWeb運用部門と、様々な専門分野でデジタルテクノロジーを活用し、サービスを開発・提供する専門カンパニーを運営していました(どちらも人材を提供する労働集約型ビジネス)。

専門カンパニーの数が多く、多様な事業を展開していることから、グループとしてのサービスラインナップや強みがわかりにくく、幅広いサービスを展開していても、クライアントにあまり認知されていませんでした。

そこで、クライアントのDXへのニーズに合わせ、事業を「制作/UIUX」「デジタルマーケティング」「デジタルサービス開発」「データ活用支援」の4領域に分類し、各領域に関連する本部および専門カンパニーを配置する体制に再編しました。

4領域に分類する前までは、Web運用部門と専門カンパニーとそれぞれ独立した組織として目標があり、各営業担当が自部門以外の社内リソースを把握できていない、自部門のクライアントに他部門のセールスを行うインセンティブが働いておらず、メンバーズグループとしてサービス提供ができていないといった問題がありました。

事業再編により、4領域ごとにWeb運用部門の主力クライアントに対し、専門カンパニーのサービスを提供することで、クライアントへのサービスをより幅広く進化させ、クライアント一社あたりの取引規模の拡大を図ります。

「デジタルサービス開発」においては、前期下期より試験的に上記体制で進めていたところ、クライアントに対し新たなサービスの提供が進み一社あたりの取引規模が拡大するなど、徐々に成果が出始めています。

グループ全体として本格的に成果が見えてくるのは、今期下期~来期と想定していますが、引き続きこちらに注力し成長率を引き上げてまいります。

事業跨ぎのクロスセルも推進

さらに、積年の課題であった「事業を跨いだクロスセル(サービスの横展開)」について、クライアントごとにトップセールス担当を配置し、強く推進してまいります。

トップセールス担当は、クライアントの取引規模拡大を目標とし、クライアントへの提案を通じて課題をヒアリングし、これまで顕在化していなかった需要の発掘や他部門への展開を通じて規模拡大を狙います。

これらを通じて、付加価値売上高成長率15%を実現してまいります。

編集後記


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回は、20%以上の更なる成長率引き上げを目指して、中期戦略の3つ目の軸である「ポジショニング戦略」についてご説明します。

引き続きご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

(担当:中島)

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