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心中


わたし、あなたが居なくなったら死ぬの。

そうあなたに言ったら、「そんな悲しいこと言わないでよ」って、珍しく取り乱した。「もう二度とそんなこと言っちゃだめ、死ぬなんて言わないで、僕はどこにも行かないから」
「うん、じゃあ死なない!」彼を安心させるために、過度に明るく言い放った。

でも、彼はたぶんこの言葉の真意に気づいてない。わたしは、自殺するなんて言っていない。
もしも恋人がいっしょにいてくれなくなったら、ただただ、「死ぬ」のだ。
すうっと空気に消えていくように。“ひと”というレッテルが貼られただけの存在者となってしまう。きらきらにデコレーションされた“わたし”のレッテルは、洪水みたいな涙に溶かされてゆく。

貴方のそばに居る私がわたしだから、ほんとうのわたしはすっと消え失せてしまう。あなたに出会うまで、私はわたしに出会えなかった。

どうしても自分のことを可愛いと思えなかった私は、あなたと出会って初めて自分を心から可愛いと思えるようになった。あなたが沢山、かわいいかわいいって、言ってくれるから。

あなたに出会うまで、学問の面白さを芯まで知ることは出来なかった。あらゆる哲学を順を追って教えてくれて、知ることって楽しいな、と思うことが増えた。

それから、生活も洗練されたものとなった。日々を適当に消費して、どんどん不健康になっていって、洗い物や洗濯物や宿題が溜まりに溜まっていく生活はおしまいになった。きたない私 いらない私はどこかへ行った。(たまに、戻ってくるけれど。その時は仕方なく迎え入れてあげてる)

なにより、失うことが怖くなった。「気分としての不安」が芽生えた。ハイデガーは言った、すべての不安は死に通じていると。その通りだった。貴方を失うと、わたしは死ぬことになるのだった。でも、ハイデガーは、そういう不安にある時こそ、自己は本来的な自己になることができてるって言う。そうかもしれない、わたしは不安を抱くことで、なんだかいきいきとしている。

はっきり言って、わたしはあなたに依存している。ごめんね。あんまり依存されちゃうと、困る性格だろうに。
でも、あなただってわたしに依存しているの、知ってるよ。わたしの文章を見て、「あなたはこんなに綺麗な人生を生きてるんだね」って泣いてくれたよね。わたしと一緒ならちっぽけな人生も生きていいのかなって思ったんだよね。
それと、素でいられるの、敬語崩せるの、怒りを顕にできるの、甘えられるの、私の前だけだよね。子供の頃、親の前でもできなかった事たちだよね。

わたしからの片想い依存だと思っていたら、共依存なの。すきすき!だいすき!その事実も、あなたも。お互い死なないように、ずっと一緒にいようね。

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