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吉屋信子『花物語』論

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吉屋信子『花物語』論―「スイートピー」からみる『花物語』の変遷―、という卒業論文のインターネッツ用加筆修正版です。
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吉屋信子『花物語』論―「スイートピー」からみる『花物語』の変遷―・まとめと追記

吉屋信子『花物語』論―「スイートピー」からみる『花物語』の変遷―・まとめと追記

 吉屋信子『花物語』について長々語ってきた(卒論だしそれはそう)が、この投稿でまとめを記し、参考文献を述べて終わりだ。

前編

後編

○まとめ
 綾子が「ピーさん」と呼ばれるようになったのは、学校の花壇でスイートピーを育てることになったからだが、それは様々な花の種が先に来た生徒たちに配られていき、最後に残ったスイートピーが、遅れて来た綾子の手に渡ることとなったからだ。つまりスイートピーは、少女

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吉屋信子『花物語』論―「スイートピー」からみる『花物語』の変遷―・後編

吉屋信子『花物語』論―「スイートピー」からみる『花物語』の変遷―・後編

 前回に引き続き、吉屋信子『花物語』について書いた卒論を掲載していく。こちらは後編だ。
 前編はこちら。

 こちらでも使用するので、改めて全52篇の分類表を載せておく。

 それでは続きをどうぞ。

○三章 「変化」する物語
・第一節 教化する「名も無き花」から神を裏切る「スイートピー」へ
 吉屋は幼い頃からキリスト教に接してきた。家のすぐ近くに教会があったこと、そこの牧師の姉妹と知り合ったこと

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吉屋信子『花物語』論―「スイートピー」からみる『花物語』の変遷―・前編

吉屋信子『花物語』論―「スイートピー」からみる『花物語』の変遷―・前編

『花物語』という小説がある。吉屋信子という明治時代の作家の連作短編で、俺はこの作品を「ユリイカ」の百合特集号で知った。
「百合」の源流は主に戦前の女学生たちが女子しかいない学び舎で結んだ「エス」という関係性である、とはよく言われることだが(俺調べ)、『花物語』はそういうものを扱った文学作品の代表作とされる(実際読んでみると女学生の話は半分くらいなのだが)。

 で、色々あって俺は『花物語』を題材に

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