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読了報告#5 『ミミズクと夜の王』

ふらっと寄った本屋でとてもいい本と出合えた。

書籍情報

タイトル:ミミズクと夜の王 完全版
著者:紅玉いずき
出版社:株式会社KADOKAWA

人の優しさ

 個人的にこの本のテーマはこれだと思う。

  物語としてはファンタジー。典型的な魔王と人との対立構図のもとにストーリーは展開されていく。イレギュラーとしては、主人公は騎士でも巫女でもない。みすぼらしく惨めな少女であること。ここではあえて仔細は伏せるが、この少女――ミミズクが主人公であることにこの本のカタルシスがある。

  他のファンタジー小説に見受けられるような派手な戦闘の描写などはなく、どことなく淡々とした、だけど瑞々しい文章で物語は流れていく。だからこそ、そこに登場人物たちの情感が色濃く乘っている。
  幼くも、人の社会から見捨てられたミミズク。その目を通して、人の愚かさ、儚さ、人間社会の息苦しさが描かれる。少女が必死に生きて、手に入れた幸せはかけがえのないものだろう。最後を読んだときには胸を突かれた。

  自分の周りの人を大切にしていこう。そんな風に思える、心温まるお話だったと思う。

あとがきを読んで

  あとがきは基本読まないのだが、ミミズクと夜の王に限ってはあとがきまで目を通した。本がとても気に入ったので、著者はどんなことを考えていたのか気になったのだ。興味本位で読んでみると、どうやら紅玉いづきさんは完全版を出すことに思うところがあったようだった。
  紅玉いづきさんの中では、物語自体は完成していて、そのままであってもいいという考えが大きかったようだ。新しい人の元に届けばということで、この完全版を出してくださったとのこと。
  この著者の決断があってこそ、私はこの素敵な物語に出会えた。本当にありがとうございます。

優しい気持ちになれる素敵な物語でした。

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