ガラスの壁

ガラスの壁をつくった
私はガラスごしに景色を見ている
向こう側からもこちらは見えるけど
ガラスは分厚く頑丈なものなので
向こう側にいる人の声は聞こえない
私の声も届かない
そのガラスの壁は
力の強弱に関係なく
微妙な位置をけとばすだけで
割れてしまう
どれほど頑丈なガラスでも
粉々に一瞬で壊れ
とがった欠片で
血を流し傷を残す
決して割れることのない
ガラスの微妙な確実な位置を
叩き壊すことのできる者が
存在する
欠片を集め何度も
新しいガラスの壁をつくりなおす
ガラスごしに私の瞳は
全てを見つめている
舞い降りてくる雪に手を差し出し
雪は指にあたり一瞬で消えてゆく
不確かなものは
手の中で真っ白な形にいずれなり
その頃には凍えきった指先に
現実と幻の境目の
感触だけが残っている

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