優しさなんてどんな形かも知らなかった

まるで山奥でひとりで
育ったみたいに
怒りたい時に怒り
喚きたい時に喚き
誰も寄せつけない瞳で
周りを睨みつけていた
今さら手を差し伸べられても
私にはどうすることも
できなかった
私は既に出来上がって
しまってたのだから
野生の動物も
時間と共に
人間の優しさに触れ
近づいて来るのに
私は全く近づこうとも
優しさに触れようとも
しなかった
たぶんできなかった
だって私は
人の裏側も見てきたから
人の悪(あく)だけ見てきたから
優しさなんて
どんな形かも知らなかったから
怖かった
また騙されるかもって
怖かった
また裏切られたら
もう生きていけないって
怖かった
この人に裏切られたら
もう死ぬしかないって
怯えていた

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