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短いおはなし7

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#最近の学び

それは長くは続かないでしょう

それは長くは続かないでしょう

予報士がきつねに言った。
あなたのその喜びは
長くは続かないでしょう。
すぐにまたこころは曇り
誓いも約束も
憂鬱な雨に濡れるでしょう。
そして
その曇りも憂鬱な雨も
長くは続かないでしょう。
あなたはしぶとく生きるでしょう。
あなたは無闇に生きるでしょう。
その森を黄金色に燃やしながら。

チーム子ぐま

チーム子ぐま

ぼくはひとりぼっち?
子ぐまが訊いた。
クマが答えた。
きみは「チーム子ぐま」さ。
つらい日を共に越えてきたきみの身体、きみの服、うたと本、自転車、テーブルの花、思い出、お布団、部屋、傘、ストーブ。台所。1日の終わりにみんなにお疲れ様とありがとうを言う。悲しむ前に感謝を。おやすみ。

でも、そうゆうものだったから。

でも、そうゆうものだったから。

世界の果てのある国では
だれもが嵐の中の
長い道のりを歩いた。
道のりが長いのは
はじめから決まっていた。
雨風はつよく先行きは見えず
言葉も出ぬほど疲れた。
でもそうゆうものだったから
ひとびとは歩き続けた。
時に、あまいとうもろこしで
なにかつくって食べながら

うまくいっているひとは、上手なひとではない。

クマが子ぐまに言った。

うまくいっているひとは
上手なひとではないよ。

自分の不得手なこと
自分に欠けていることが
わかっていて
注意深く対処するひとだよ。

秋の湖面のように
ひんやりと自分をみつめて
ひとつずつ対処してゆこう。

苦々しく負荷がかかっているのが常。

苦々しく負荷がかかっているのが常。

きつねは思った。
達成、達観、解脱というものは
ないのではないか。
それと今を比べると
つらくなるのではないか。
苦々しく負荷がかかっているのが
常なのではないか。
苦々しさを噛み締め
負荷を受け止めながら
すこしでもマシになれますように、
というくらいでやっていこう。

ものごとにはたいてい仕組みと手順がある。

ものごとにはたいてい仕組みと手順がある。

ねこが言った。
ものごとにはたいてい
仕組みと手順がある。

感情的になるときは
仕組みを誤解し
手順が違っているとき。

まあ、そんな余裕がないときが
多いのはわかるけど。
でもそれだけが進むための
鍵だとしたら。

止まっているときの悲しみや怒りはほんとうの悲しみや怒りではない。

止まっているときの悲しみや怒りはほんとうの悲しみや怒りではない。

クマが子ぐまに言った。

悲しみや怒りは
進んでいるときに
静かに根底にあるもので

止まっているときの
悲しみや怒りは
ほんとうの悲しみや怒りではなく
なにか別の怠惰なものだよ。

みんな悪いことも考える。

みんな悪いことも考える。

神様が子ぐまに言った。

どうしてこの世に
たくさん教会や
お祈りするところがあると思う?

やり直すためさ。
そして
踏みとどまるため。

みんな、なにかしら罪を背負って
なにかしら悪いことも考える。

みんなが
毎日やり直し
毎日踏みとどまっているんだ。

こころより信用できるもの。

こころより信用できるもの。

きつねはなんだか
すべてがつらくなってしまった。
すべてが悲しくなった。
素敵なものから逃げたくなるくらい。

でも、きつねはこころのことを
あまり信用していなかった。
元気に動く加湿器の方が信用できた。
きつねは加湿器やガスコンロや
明るい電球のことを考えながら
こころと身体を暖めた。

失っても、こころが忘れても、身体に残っている。

失っても、こころが忘れても、身体に残っている。

子ぐまが訊いた。
なにも残らない。
生きることは悲しいこと?

クマが答えた。
そうだね。
ただね、近しいひとが
花を飾っていたこと、旅先の朝の匂い。
美しいもの。
きみの身体に残っている。
それが、ふとした時に
仕草に、習慣に、言葉に出てしまう。
生きることは
悲しくて素敵なことさ。

悪い時に粛々と生きられたら、自分をほめてあげよう。

悪い時に粛々と生きられたら、自分をほめてあげよう。

悪いときに
粛々と生きられたら
自分をほめてあげよう。

いいときに
誰かを傷つけずに
粛々と生きられたら
自分をほめてあげよう。

いずれにせよ
ぽんこつなのに
今日まで生きてこれたから
自分をあたためながら
ほめてあげよう。

お正月という神話を信じてあげないといけない。

お正月という神話を信じてあげないといけない。

お料理とかおせちとか
たんたんとできる人間に
とうていなれない。
ただお正月とかクリスマスとかは
神話だから
信じてあげて火をくべないといけない。
神話のためなら
かんぴょうで昆布を
巻かないといけない。
本もうたも、そしておそらく
日々も自分も神話。
だから信じてあげないといけない。

祈りは誰のもの。

祈りは誰のもの。

羊の牧師が子ぐまに言った。

祈りは、清のものではなくて
濁が切実に必要とするもの。
だから安心して。
祈りはあなたのもの。

簡単に事態は良くならない。
簡単にあなたは変わらない。

けれど
今日も小声でよいことが
なにかあるはず。
今日もよくなろうと
こりずに取り組めるはず。

憂鬱のサイズを計る。

憂鬱のサイズを計る。

やる気がでない。
やらなきゃならない
ことが憂鬱。
どうすればいいの?
子ぐまが訊いた。
クマが答えた。

タイマーをかけるのさ。
たいがいそんなに
時間はかからない。

渋滞に入ると絶望するけど
解消まで5分と聞くと絶望しない。

ひとは憂鬱を盛っている。

憂鬱のサイズを計るのさ。