見出し画像

挽歌 -ぺいちゃんに捧ぐ-

今日、臨時通院の際に看護師さんから、
「あの黒い子、亡くなっちゃったんですよ。」
と言われた。

いつものように水槽の隣に腰掛けた
看護師さんは私が水槽を見る前に
ぺいちゃんの旅立ちを伝えてくれた。

予兆はあった。
先週、いつも元気に泳ぎ回って
藻や苔、泡を食むぺいちゃんが
私の隣の岩陰に佇んで
殆ど動くことなくじぃっとして
私をずっと見ていたから
だから、悲しい知らせをすんなりと
胸に受け入れられたのかもしれない

この病院に通い始めてもう半年を超えた
その時から独特で特徴的で
水槽の壁に張り付いてみたり
一生懸命に藻や苔を食んだり
泡をぱくぱくと頬張ったり
優雅に泳ぐ他の魚たちとは
少し違って見えて親近感があったんだ

ぺいちゃん、私は少し元気になったよ。
ぺいちゃん、こっち見ててくれたよね。
ぺいちゃん、最期が近いの分かってたのかな。
ぺいちゃん、君に会えて良かったよ。
ぺいちゃん、空の遥か彼方で楽しくね。
ぺいちゃん、何年先か分からないけれど、
ぺいちゃんと、いつかまた会えるよね。

どうか、向こうでも幸せにね、
ぺいちゃん。

2022年12月6日
名も無き扁平の魚
私が「ぺいちゃん」と勝手に呼んでいた
現世から常世へと旅立った
ひとつのいのちへと捧ぐ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?