見出し画像

年中喪中

失恋って相互関係だと思う。だからわたしは今日も振られました。事実としてはわたしがそれを言い渡したのだけれど、わたしが振られたかのようなきもちです。前にもそんな記憶があった気がします。相互関係だというのには、それが最後の共同作業であって、そのときの最適な解を導き出して、双方合意の上での結論、それがふたりの別れになった、というだけの話だから。

そうやって人生には数多の別れがあって、それが明日もある別れなのか否か。またね、とじゃあね、の違いはそこにもあるのかもしれない。
わたしは駅のホームで相手の姿が見えなくなるまで手を振る、けど、みんなそんなことないのかも。目の前にいるときだけは、わたしはその人のものです。だからその瞬間だけエネルギーを全力で注いでいるよ。誰かの求める誰かで在ります、わたしは。わたしはただ、北極星に向かっている。

別れが紐づける記憶。折り畳まっていたものたちが、芋蔓式にわたしを襲う。
ある日突然連絡のつかなくなった二つ歳上のお姉さん。きゅーとでロックな彼女から教えてもらったもののひとつにシーシャがある。わたしは今も尚彼女の幻影を追う。あるいは大学の同級生。病気で亡くなった報せを受けなければ、彼女はいつまでもわたしの中で生き続けていたのに。あるいは過去の恋人や恋人未満の淡い記憶。悪態を吐いてくれた人やフェードアウトはマシ。経年後、連絡がついてきらいに成れた人も同様。もう二度と会えないよ、そう言った人のことはこの先もずっとわたしの心の底に留まっているだろう。

最も綺麗な関係で在りたかった、何度も言葉選びを間違えて、互いを刺す。傷に、何の代わりにこぼれたかわからぬ潮水が染みる。
二度と会えない、それはわたしの中での死を意味する。消えてしまった、骨すら手元にはないけれど、わたしは君を弔う、参列者はいない、月明かりか街灯か、なんらかの光の差し込む部屋の隅で、星の温もりを感じます。どうか、どこかで光り続けている君のしあわせを願って。今宵挙げる君の密葬、わたしの拙いこころを赦してほしい。

この記事が参加している募集

#眠れない夜に

69,357件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?