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海外マーケティング成功のための「ブランドカルチャライズ」とは

今や中国は世界中の企業が成功を狙う14億人の巨大市場ですが、中国で事業の成功をおさめるのは決して簡単なことではないと思います。社会主義国として政治の影響がかなり強く、インターネットの規制も大きいことはもちろん、背景となる文化や消費者の行動も外国人がなかなか理解しづらい独特のものがあります。というか「変化が超速い」と言った方が良いかもしれません。

そんな中国市場のマーケティング事例を中心に紹介し、日本企業が海外マーケティングで成功するための道筋を示したのが「ブランドカルチャライズ」です。

ちなみに著書のお一人、川崎さんは同じ大学の大先輩。ということでここでは本書の内容に言及しつつ、自分なりに中国で3年以上マーケティングに携わって感じていることをまとめたいと思います。

ブランドカルチャライズとは何か

ブランドカルチャライズとは、本書では「進出先の国・地域の消費者の『知覚』に合わせてブランドの表現を調整すること」とされています。「それってローカライズでは?」と思いませんか?私は正直ちょっと思いました。

しかし、カルチャライズとローカライズの違いを本書ではわかりやすく説明しています。

一つの文章に例えると、日本語の文章をそのまま英語や中国語に翻訳して提供するのはローカライズであり、カルチャライズとはいえません。翻訳された文章を、その国の消費者が見て、本来伝えたいメッセージを感覚的に理解してくれるように調整されていれば、それは「カルチャライズ」の範疇と言えます。そのためには、その国や地域、ターゲットとなる消費者の文化背景を十分に理解し、適切に調整する必要があります。

日本で成功している商品をそのまま海外へもって行って売ることとは、大きく考え方が異なることがわかります。この「ブランドカルチャライズ」ではこの考え方を出発点とし、日本企業がどのようにブランド戦略を立てるべきなのか、ステップに分けてわかりやすく説明しています。

中国マーケティングの特殊さ

さて、本書で取り上げられている中国でのビジネスについて背景を知るために、現代の中国市場でのマーケティングについて簡単にご紹介します。(ここからは本書の直接な内容から少し離れます。)

中国の市場が他国と大きく違う点の一つが、「独自のプラットフォームの発達」です。

ご存知の通り中国は、政府のインターネット規制があるため、多くのグローバルプラットフォーム(Twitter、Facebook、LINE、Instagram、そしてAmazonなど)を使うことができません。その代わり、WeChat,微博,RED,Tmallといった中国独自のプラットフォームやECサイトが発達しています。

それほど中国のビジネスに詳しくない方だと、「それって海外のアプリのパクリでしょ」と思われている方も多いかもしれません。もしかしたらスタート時点ではパクリであったものが多いかもしれません。しかし、現在中国市場で覇権を握っている上記のようなプラットフォームは、むしろ海外のメガプラットフォームよりも多機能で洗練されている部分も少なくありません。

特にLINEのようなメッセージアプリWeChatは、そのアプリの中にメッセージ機能だけではなく
・モバイルペイメント機能(単純な支払いから割り勘機能なども)
・「ミニプログラム」と呼ばれるアプリ上のアプリ実装機能(EC機能含む)
・ビデオアカウントというアプリ上のショートムービー機能
・企業や個人がブログのような記事を発信できる公式アカウント機能

などなど、豊富な機能で今や中国に住む人々の「生活の基盤」となっています。

そして、このような独自のプラットフォームは、ただ単純にプラットフォームが異なるということだけではなく、必ず「消費者の行動」と密接に関係しています。なので、中国での消費者の行動をよく理解するためには、こういった独自のプラットフォームの使われ方や特徴の理解が欠かせないでしょう。

さらに厄介なことに(?)中国のテクノロジーの変化のスピードは凄まじいです。きっとネット上での情報収集だけでは、しっかりと理解し、変化についていくことは難しいと思います。本気で中国でビジネスを拡大したいという企業は、実際に日本人を現地に派遣したり、中国人と直にコミュニケーションを重ねたりすることで、理解を深めていくしかないのかもしれません。「ブランドカルチャライズ」はそれによって初めて実現されるのだと思います。

中国マーケティング必読書

さて、この記事を読んでくださっている方は何らかの形で海外ビジネスに興味がある/携わっている方が多いと思います。ということで最後に、海外ビジネス、特に中国マーケティングを学ぶ上で価値のある必読書をいくつかご紹介しして終わりにさせていただきます。

本書でも紹介されていた「異文化理解力」。中国に限らず、世界中の国々の文化背景の違いを理解できる、グローバルビジネスに関わる方なら必ず読んでおくべき超良書です。

中国人と日本人の行動背景にある根本点な考え方の違いに言及した「スッキリ中国論」。多くの日本人が感じているであろう「中国人はなぜこんな行動をとるの?」という疑問の答えがここに!

近年の中国ビジネスの凄まじい成長を考察した「アフターデジタル」では、その核心となる特徴を、「オンラインとオフラインの融合」としています。ビッグデータで成長している中国のビジネスについての理解が超深まります。「アフターデジタル2」もすでに出版されていますが、個人的には初版がおすすめ。

TikTokを生み出した企業バイトダンスでかつて働かれていたインフルエンサー「こうみく」さんの著書。アフターデジタルと同じく、現在の中国市場で覇権を握るオンラインプラットフォームの成長の理由がよくわかります。

以上、冒頭の「ブランドカルチャライズ」も含め、中国マーケティングを学ぶ必読書をご紹介しました!

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